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歴史が教える「脱原発」の危うさ②―渡部昇一(上智大学名誉教授)byBLOGSより

2013-12-11 07:37:21 | (英氏)原発・エネルギー問題
 

歴史が教える「脱原発」の危うさ―渡部昇一(上智大学名誉教授)

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そうした事実を菅氏は無視して「脱原発」を打ち出した。不足する電力はメガソーラーで賄うともいうが、アメリカですら実現できていない太陽光発電を国土の狭い日本でどう行なうのか。山手線内の2倍の面積のメガソーラーを設置しても、浜岡原発1基分ほどの電力しか賄えないという。それも太陽が照っていればの話だ。しかもソーラーの下の大地は不毛の地となる。日本の土地がもったいなくないか。

日本の「脱原発」で喜んだのは誰か。ほかならぬ朝鮮半島の一国である韓国である。韓国は国策として原発の輸出を推進しているが、その裏には軽電機メーカーとしてのサムスンの行き詰まりが見え隠れする。軽電機は技術の転化が比較的容易で、今後、人件費の安い国がサムスンに代わって台頭してくる可能性が高い。一方で、重電機の技術転化は簡単ではない。日本は戦前から続く重電機の歴史をもっているが、重電機の最たるものが原発だ。日本が脱原発に向かえば、日本の学生は原発という進路がなくなり、研究者にも勢いが失われる。働いている人も将来が見えなくなり、事実、すでに東京電力の原発関係者の引き抜きが始まっているという。

しかし、日本が仮に脱原発を選択したとしても、現時点で代替エネルギーは火力しかない。他の電力は合わせても10%程度で、しかもそのうち9%は水力。風力など他のエネルギーは微々たるもので、ものになるまでに何十年かかるかわからない。日本海にはメタンハイドレートがあるともいわれるが、こちらも実用化までの見通しは不明だ。

火力発電の燃料は石油か天然ガス。いずれも日本にはあまりない資源だ。それらを日本は外国から買い続けなければならない。目下の基調は円高だが、もし大幅に為替が円安に振れれば、日本は恒常的に巨額の貿易赤字を出す国になりかねない。脱原発を宣言すれば、そこにつけ込み法外な金額を請求されないとも限らないだろう。そうしたことが5年続けば日本の産業はもう、立ち行かなくなる。工業だけではない。農業のハウスやトラックにしろ、石油がなければやっていけないからである。

先の大戦の原因もエネルギーだった


エネルギー問題が国家戦略においていかに重要か。そうした認識が菅氏にはまったくなかったといってよい。歴史を遡れば、先の大戦で日本が敗戦に至る原因も、すべてはエネルギーに拠る、といえるだろう。

そもそも産業革命はイギリス人が石炭の利用法を発見し、蒸気機関をつくったことに始まる。これによって鉄鋼業でも鉄が大量につくれるようになった。その象徴が黒船で、日本も明治以降は石炭の使い方を覚え、一方で石炭の輸出国ともなる。日露戦争以後は戦艦も日本でつくるようになり、石炭全盛の時代となるが、日露戦争からわずか10年後の第一次大戦によって、事情は一変する。

当時、第一次大戦を見に行った観戦武官は、戦争が石炭から石油の時代へと移り変わったことを知る。戦艦はもちろん、地上でも騎兵は消えて石油で動く戦車になり、さらに第一次大戦で登場する飛行機の燃料もすべて石油だ。これを知った当時の日本の軍人たちは、日本が戦争で勝てない国になった、と悟った。

陸軍と海軍でも、危機感には違いがあった。当時の陸軍は20個師団ほどしかなかった兵を4個師団も減らし、余った予算で機関銃部隊をつくっている。アメリカを仮想敵国としていない陸軍に石油問題がピンときていた節はなく、彼らは体制づくりに力を注いだ。これが統制派といわれるグループで、日本を総力戦のできる国家体制にしようと計画した。一方ではひたすら愛国心を鍛えよ、という精神論に左翼が結びついて皇道派や青年将校が生まれた。彼らによって2・26事件が起こり、統制派は黙って天下を取ったのである。その後、敗戦に至るまでの日本は、山本七平氏の言葉によると「陸軍に占領されたような国」になる。

一方の海軍は石油に敏感で、そこから軍縮会議にも賛成し、中近東の油田を握るイギリスや、カリフォルニアから石油が出るアメリカと妥協しようと考える。これが条約派である。ただし、石油よりも大砲の大きさばかりに関心を向ける艦隊派もいて、彼らは英米を敵に回して独伊と結ぶことを考える。マスコミが支持したのは「戦えば勝つ」と主張する艦隊派で、そこから日独伊による三国同盟が結ばれる。

とはいえ石油がなければ、戦艦を動かすことはできない。そこで日本は石油が出るスマトラのパレンバンの占領を考える。そのためには、アメリカが出てくるのを防がなければならない。ならばハワイの真珠湾を叩こう、という発想が生まれたのだ。

いまにして思えば、あのとき山本五十六連合艦隊司令長官が機動部隊の南雲忠一司令官に「重油タンクだけ爆撃せよ」と命じていれば、戦局は大きく変わっただろう。戦後に出版されたアメリカのニミッツ太平洋艦隊司令長官の回顧録によると、ハワイの重油タンクと海軍工廠を爆撃されていれば、アメリカの船は半年間、太平洋で動けなかったという。その場合、1942年4月のドーリットル爆撃隊による東京空襲も、同年6月のミッドウェー海戦もなかっただろう。

ドーリットルによる東京空襲の前に、日本の機動部隊はインド洋海戦でイギリスの航空母艦ハーミスを沈め、その前にはイギリスの東洋艦隊を全滅させている。当時の日本の急降下爆撃の命中率は90%を超え、一方で日本船は1隻も沈まなかった。意気揚々で帰途に向かったところ、東京空襲の報を受け、そこから歯車が狂いだすのだ。

日本がハワイの重油タンクと海軍工廠を壊していれば、アメリカとの引き分けに持ち込むのが可能だったというアメリカ側の説もある。それほどエネルギーは重要で、そもそも日本が戦争を始めたのは、このままでは海軍の石油が7カ月くらいしか持たない、とわかったからである。それが毎日減っていく。半年後には軍艦を動かせないことがはっきりしているのに、アメリカは絶対に妥協しない、ということをハル・ノートで理解した。だからアメリカとの戦争に踏み切ったのだ。

問われる新総理の国家観と歴史観


先の大戦でアメリカに大敗した日本がその後復活するのは、中東地区で奇跡といえるほどの豊富な石油が出たからである。安い石油をエネルギーにして高度成長が訪れるが、1973年の第一次オイルショック、1979年の第二次オイルショックを経て、石油に依存したままでは危ない、と日本は気付き、原子力へと舵を切る。

現在、日本の原発技術は世界最先端だが、高速増殖炉「もんじゅ」までを視野に入れていたのは慧眼というべきだろう。「もんじゅ」が完成すれば、日本のエネルギー問題は500年、1000年単位で解決する。いまでも高速増殖炉の開発を続けているのは日本、ロシア、中国、インドぐらいで、今後も日本が開発を継続させれば、それだけで世界中の最高の原子力科学者が日本に集まってくる。そうした高速増殖炉を世界に輸出すれば、中国のように資源漁りをする必要もなくなる。ほんとうに地球に優しいクリーンエネルギーが生まれるのだ。

鳩山氏は首相になるやCO2の排出量を25%削減すると国際公約したが、これは原発の稼働を近い将来に50%にすることを前提としている。それをゼロにするなら排出量は25%削減どころか、増えるしかないだろう。

今回の総選挙で自民党は「原子力に依存しなくてもよい経済・社会構造の確立をめざす」「10年以内に持続可能な電源構成を確立する」と慎重な言い回しに終始したが、国家の雌雄を決するエネルギー問題に新政権はいかに対処するのか。問われているのは新しい総理の国家観、そして歴史観である。

それはとりもなおさず、エネルギーをどうするかにかかっているのだ。毎年、何兆円ものムダ金を燃料代に使って平気な人は、政治家の資格がないと断定してよいだろう。

■ 渡辺昇一(上智大学名誉教授):1930年、山形県生まれ。上智大学大学院修士課程修了後、独ミュンスター大学、英オックスフォード大学に留学。Dr.phil.、Dr.phil.h.c.(専攻は英語学)。第24回エッセイストクラブ賞、第1回正論大賞受賞。著書に、『知的生活の方法』(講談社現代新書)、『知的余生の方法』(新潮新書)ほか多数。
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7 コメント

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もんじゅ (はっちょ)
2013-12-11 09:53:10
結論は
現在のエネルギー問題は高速増殖炉の完成ですね。

地元福井では反原発の中嶌哲演(明通寺住職)が「文殊」という名前をとったのは仏教界に対する侮辱である、との発言がありました。

僧職であっても間違った活動をしていては困ります。

「もんじゅ」の事故はナトリウム漏れです。
原子炉は大丈夫です。

返信する
Unknown ()
2013-12-11 19:28:47
はっちょさん。

そのとおりです。

はやく、実現党を与党にしないといかんぜよ。
返信する
Unknown (泣き虫ウンモ)
2013-12-11 20:46:14
山の手線内の面積は、60~70平方K㎡ぐらいですか、というと8×8(Km)の土地が必要になるということです。
日本は、半分以上が山ということで山を削り平らにして、設置でもするつもりなのでしょうか。
まぁ、この2倍の面積だと11×11ですか、都市の3割とかあるいは街が無くなるような大きさではないですかね。
さらに、天候に左右されて、電力の供給が不安定になるということですから、いろんな意味で効率が悪いですし経済力が落ちますね。
それとも、火山を削り設置するつもりなのかな。
現実的ではありませんね。
返信する
Unknown ()
2013-12-11 22:56:33
まあ、ひとつの町とかあるいは、市が消えるかもですね。

ただこれも試算レベルですし、パネルの間隔も

広げないとだめなんで、もうすこし実際はいるかもです。

それに、仮に山手線代の広さが獲得できて、

敷き詰めたとして、パネルの上には埃がつもり、

発電効率が落ちれば、掃除しなけりゃいかんでしょうが、山手線の中のパネルを全部どうやって掃除するのか見ものです。

返信する
試験運転 (はっちょ)
2013-12-12 10:15:02
英さん

私の住んでいる所は「原発銀座」と言われているほど原子力発電所のメッカで
もんじゅを入れて計14機の原子炉が密集しています。

住民は普通に生活し、発電所から数百メートルの所で暮らしています。
原子力発電所内で仕事をしている人も多く、その人達は安全性に何の不安もなく仕事に励んでいます。

18年前もんじゅの試験運転中にマトリウムが配管の損傷により漏れてしまいました。
原子炉の発熱をより効果的に発電エネルギーに熱交換するのに、水を使っていたのですが
100度Cで沸騰してしまう問題を解決しようとして、金属でありながら流動性のあるナトリウムを利用しました。
事故の原因は配管の温度を監視するために取り付けてあった温度計センサーの取り付け溶接の不良で亀裂が入り破断してしまいました。
だからといって、高速増殖炉がダメとするのはおかしな話です。
実際、今でもすぐに実験運転をすることが出来る状態にはあります。

反原発の中嶌哲演は40年前から活動を続けています。
重要文化財の国宝めぐり観光で評判のお寺の住職ですが困ったことです。

北野光夫さんの応援をしていた頃がなつかしいです。
http://hsageo.blog84.fc2.com/blog-entry-960.html

http://yamanashi7.wordpress.com/2011/08/29/%e5%8e%9f%e7%99%ba%e7%ab%8b%e5%9c%b0%e5%b8%82%e7%94%ba%e6%9d%91%e3%81%ae%e6%9c%ac%e5%bd%93%e3%81%ae%e6%80%9d%e3%81%84/
返信する
試験運転 (はっちょ)
2013-12-12 10:15:16
英さん

私の住んでいる所は「原発銀座」と言われているほど原子力発電所のメッカで
もんじゅを入れて計14機の原子炉が密集しています。

住民は普通に生活し、発電所から数百メートルの所で暮らしています。
原子力発電所内で仕事をしている人も多く、その人達は安全性に何の不安もなく仕事に励んでいます。

18年前もんじゅの試験運転中にマトリウムが配管の損傷により漏れてしまいました。
原子炉の発熱をより効果的に発電エネルギーに熱交換するのに、水を使っていたのですが
100度Cで沸騰してしまう問題を解決しようとして、金属でありながら流動性のあるナトリウムを利用しました。
事故の原因は配管の温度を監視するために取り付けてあった温度計センサーの取り付け溶接の不良で亀裂が入り破断してしまいました。
だからといって、高速増殖炉がダメとするのはおかしな話です。
実際、今でもすぐに実験運転をすることが出来る状態にはあります。

反原発の中嶌哲演は40年前から活動を続けています。
重要文化財の国宝めぐり観光で評判のお寺の住職ですが困ったことです。

北野光夫さんの応援をしていた頃がなつかしいです。
http://hsageo.blog84.fc2.com/blog-entry-960.html

http://yamanashi7.wordpress.com/2011/08/29/%e5%8e%9f%e7%99%ba%e7%ab%8b%e5%9c%b0%e5%b8%82%e7%94%ba%e6%9d%91%e3%81%ae%e6%9c%ac%e5%bd%93%e3%81%ae%e6%80%9d%e3%81%84/
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Unknown ()
2013-12-12 14:21:16
はっちょさん。

がんばって一日も早く実現党を与党にするべく、

共にがんばりましょう。(*^^)v
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