短歌と小説

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短歌と小説 4

2020-08-23 09:51:30 | 創作
朝起きて柔らかな空気で感じとる残暑が終わる秋の前日




日曜日の朝、いつもより数時間寝坊した。

営業職に就いている事から、毎朝4時半に起床している。休日の朝寝ていどは許してと思う。

起きてから気がついた。

殺人的な眩しさで照らしていた窓の光が、いつもより柔らかくなっていると。

心なしか、つけっぱなしのエアコンが冷たく感じる。

アァ、そうかと思った。

秋が来たのだ。


短歌と小説 3

2020-08-23 04:46:07 | 短歌
想い君目で追ってしまう何気ない仕草も僕には輝きに満ちて





文化祭の
「シンデレラ」
から、俺は森口馨から目が離せなくなった。

登校して鞄から教科書やノートを机に詰めている姿、他のクラスメートと談笑している姿、水泳部のマネージャーとして選手を支えている姿、馨のすべてが輝いて見える。

「お前、最近、俺を睨んでいない?」
ある日、馨に言われた。
つい目で追ってしまうのを、彼は
「睨まれている」
と、捉え方らしい。

「何かしたかな?」
不安そうな馨。
「意識している」
とは言えず、黙ってしまった。

どうしよう、と思っていたら、行動がさきに出てしまった。

気づいたら、馨の腕を掴んで、昇降口に走っていた。


短歌と小説 2

2020-08-22 13:03:16 | 創作
文化祭でシンデレラを見てときめいた演じているのは男と知りつつ





文化祭で、こってりと稽古が必要な演劇をやる羽目になってしまった。

もし、三年生なら
「受験があるから」 
と反対出来たかも知れないけれど、俺達はお気楽な一年生。
しかも
「演劇をやろう」
と言い出したのは、ほかでもない担任教諭。

演劇好きの鬼教師に逆らえず、演目は
「シンデレラ」
とまで決まってしまった。

「シンデレラは馨がやるよな」
担任教諭が当然のように言った。

担任教諭が指名した森口馨という奴は、小柄で女の子みたいな顔ををしている。

今は学ランを着ているので男子だと分かるが、私服の時は何度も女の子に間違われてナンパされて困ると、以前、話してくれた事がある。

本人も自覚しているので、馨がシンデレラで決定し、そのまま俺はシンデレラを苛めるねーちゃん役に決定した。

そして文化祭当日、馨のシンデレラは年頃の男子校生徒達を大いに刺激してくれた。

鬼担任に
「何処の学校から呼んだ女子生徒ですか?」
と訊いてくる教師もいたらしい。

みんなが馨を労う中、俺は少し複雑だった。

今まで
「女の子みたい」
と心のどこかで見くびっていた相手に俺は、特別な感情を抱いてしまったのを感じていたからだ。



短歌と小説1

2020-08-22 12:23:21 | 創作
生き生きとTix Toxで踊るのは三つ編み眼鏡の学級委員








私のクラスの学級委員は、典型的な
「真面目ちゃん」

校則で定められている通り、髪の色は黒く、三つ編みに結っている。

眼鏡をかけた優等生。

学級委員に選出されたのも、必然的なものだと言える。

「あの子、何が楽しくて人生を送っているの?」

私達は、よくマックの2階でそう話し合っていた。

そんなある日、仲間内でTix Toxをやろうという事になった。

目的は
「目立ちたいから」

「うまく行けば、芸能界デビュー出来るかも」
そう言いながら、画面を開いてビックリした。

三つ編み眼鏡の学級委員が、髪を下ろして眼鏡を外し、生き生き鳥の踊っている。

昨日今日ダンスを始めたんじゃないと、素人でも分かる。

確か、幼稚園の時からモダンバレエの勉強をしていると言っていた。

その技術が生きている。

彼女は相当人気があるみたいで
「ユリエさんのダンスは素敵」
「きっと、プロのダンサーになれるよ」
彼女を賛美するコメントばかりであった。

誰ともなく
「辞めよう」
となった。

目立ちたいだけの私達に対して、彼女は目標の為に頑張っている。

私達がTix Toxデビューするのは、世間に対して失礼だと判断したからだ。

何か目標がほしいと思った。