アイデアリズム idealism daydream

携帯と羅生門 その2 カウンセリングにて

-----羅生門-----

「葬式の準備の際にお財布を拾ったのです。たくさんお金が入っていました。ためらいはあったものの、駐車場の管理人さんへ届けました」
「それはとても良い事をされましたね」
「良い事なのかどうかは分かりません」
「えっ、良い事ではないのですか?」

「先生、羅生門っていうお話はご存知ですか?」
「何となく・・・」
「生きていく為の必要悪とか利己主義を描いた芥川龍之介の小説です」
「続けて」
「私は端から見ると善行をしたのカモ知れません。だけれど、だからと言ってソレが何になると言うのですか? 何にもならないと思います」
「それはどういう意味ですか?」

「私の年収くらいの金が落ちてて、みすみす持ち主に返してしまったのです。持ち主はとても有り難かったかも知れませんが、ただそれだけの話です。私の生活が変わる事はありませんし、自己満足さえもわきませんでした。
 そもそも私がうつ病になったのは、あまりにも利他主義過ぎるからカモ知れません。
 今の世の中、そんな事ばかりしていたら容易に食われるでしょう」

「では返さなければ良かったのですか?」
「その仮定は無いでしょう」
「それはなぜですか?」
「抗えないからです。人間としては失敗作なのかも知れませんね。もし神様がいるなら"人間の心を持つ神のあやつり人形"でしょう」
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