天下一夜祭達人事件

うぐぅですゥ!

・・・。

先天的に不自由そうな気配がしてくるが、バリアフリーだからしょうがない。

一息ついたら空腹を感じる事もあるだろう。

それが深夜の勤務終了後、ともなるとにわかに気の毒にもなってくる。

そして、諸君のうちには、ここでラーメンを食そうと考える者もいるかもしれない。

その時、「天下一品」または略して「天一」を選ぶ事もあるだろう。

諸君がどの都府県で食するかは知れないが、仮に帝都で食するのであれば、そこは池袋であってもいい。

夜の池袋西口は、ドラマの如くヤバさお得な2割増しだが、駅北面に位置する飲食歓楽街ロマンス通りは明るくにぎやかだ。

ロマンス通り、というネーミングが「時代」というか「あやしげ」というか、ハタで聞けばややひるむセンスだが、この区画はまだ組し易し。

西に劇場通り、北に常盤通りを一本渡ったら全周囲索敵を怠ってはいけない。

民家やマンションがあっても油断するな。

雑貨屋の隣にホテルがあって、その隣に民家があって、駐車場を隔ててキャバレーが、というようなわやくちゃな地区だ。

新宿歌舞伎町なら油断しない者でも、このグレーな町並みに惑わされてその軽卒さに相応しいバチが当たりかねない。

そう、ここはあくまでも「新宿・渋谷・池袋24時、今夜あなたは目撃者!カメラの前で何かが起きる!？」の舞台でもある。

登場人物になりたくなかったらジグザグに走れ。

敵の攻撃はダッシュでよけろ。

そうしておいて、みずき通りから池袋演芸場の前を入って西一番街と交わるカド。

そこに「天一」がある訳だ。

他府県の店舗であれば、或いは「ゆでタマゴ御好きなだけサービス」なンて事もありうるが、地代のせいか何なのか、とりあえずそういう事はない。

黙ってラーメンを食するしかない。

うまどろのこってりラーメンに対し、ツボは2ツ用意されている。

辛味味噌と辛味ニンニクだ。

他府県なら「ニンニクいれますか？」と尋ねるところを、まァ好きにしてくンな、ッて訳。

ここは、辛味味噌も辛味ニンニクもラーメンスープもコショウもラー油も入れてみるのも一興だろう。

味噌たっぷりの味噌和えメンがお好みなら、まァ、趣味の問題だ。

事によると、ライスの一ツも頼みたくなるかもしれないが、ここに新手が加わった。

明太子飯と高菜飯。

チェーン展開の店舗だけに、諸君もどこかの空の下で食したかもしれないが、野心的な挑戦らしい。

要するにライスの上にほぐしたカラシメンタイコが乗っている、高菜漬けが乗っているンだけど、先方は真剣だからそれはそれで良し。

諸君の中にももしかすると、あえてイヤな言い方をすれば、

「もう天一大好きニンゲンだからさァ、もう毎日でも平気だね」

という者もいるかもしれない。

常食とするのも良いだろう。

しかし、「アッ、体調やや崩れ気味、みたいな」というような時、このラーメンは必殺のバロメーターと化しはしないか。

薬効を信じ食してみれば、効能は2ツに1ツ。

治るかお腹壊すか。

ほとんど「ファイト!　一発!!」のドリンク剤相手の態度だが、印象として近いものがある。

私自身の事となれば、遺憾ながら胃腸が頑丈とも言いがたいので、分の悪い賭けとなりがちだが、疲労回復でドーピングを図るより食品でクイック・チャージの方がスポーツマンシップにのっとっている、と言える。

諸君等が挑むべきは、

バンダイ食品事業部のニュー・ホールド、

たれぱんだドリンクか？

課長島耕作ドリンクか？

それとも「天一」ラーメンなのか!？

ぜひ自らの胸に問い掛けて欲しい。