アイドル密室達人事件

　うぐぅ!

諸君がこの挨拶に賛同するか、否か、それは知らない。

それはいずれ、歴史が判断してくれるだろう。

今は只、うめくのみである。

しかし、一部なりとも脚光を浴びている、時代の名言である事は確かだ。

後世、座右の銘となる日も来るだろう。

だがとにかく問題は今だ。

スポットライトの中に立つ人、それはスタア。

そして、特に若々しい者を指して、人はアイドルと呼ぶ。

アイドルの一言は甚大な影響力を持つ事は、疑い様も無い。

CD、ブロマイド、写真集なンてところはあまりに基本。

ジャニーズのドームイベント終了直後の後楽園周辺に出くわして見給え。

数万のジャニーズ・ファンの軍勢だ。

光栄もビックリ。

私はその真っ只中で、恐怖した。

ビッグサイトでなら毛筋程の恐れ、違和感も感じなかったというのに。

この軍勢が従う者こそアイドルだ。

アイドルとて、只、立っててアイドルでもあるまい。

食い物一ツとっても、その影響は計りしれまい。

美少女アイドルのお好きな食べ物が、

「カツ丼!」

ではマズいだろ。

メイン・ヒロインとして相応しくない。

フルーツとかがいいだろ。

「枇杷!」

ドツいたろか。

田舎のバァさンじゃあるまいし。

「お寿司!」

これは悪くない。

寿司は成功の証し、勝利の象徴、皿上の芸術。

更には、伝統と未来科学の結合、ハイテクの紡ぎ出す職人技。

諸君も想像してみて欲しい、寿司のある風景を。

朱塗りの大台の上に整然と並ぶ、やけに小ぶりでネタにヴァリエーションの少ない寿司の列。

隣の皿には飾り気の無いチーズケーキが、シュークリームが、メロンケーキが同様に連なる。

更に隣の冷蔵棚に無闇に盛られた豚・牛・鶏の各種食肉とデタラメな野菜達。

向かいのコーナーには業務用電気ガマ2器とカレー・ミソ汁・コーンスープ・うどん汁の各寸胴ナベが・・・。

すまない、間違った風景を想起させてしまった。

早急に忘れるように。

寿司に求められる動きは只一ツ、「回転」だ!

あとは何もしなくていい。

閉ざされた空間の中、ひたすら廻っていてくれればそれでいい。

アイドルは座るだけだ。

イヤ、誰であろうと、私でも諸君でも、座って皿を手にするのみ。

あーーーーーッ。

アーーーーーッ!

「メロンが無いッ!？」