オリンピックのトリビア

古代・近代オリンピック、パリ五輪2024等について

パリオリンピック2024 主競技場と選手村のある町サン・ドニへの道

2024-06-16 | オリンピック

開会式が開かれる パリ市の中心地
「シテ cité (スィテ → 英 city) : l'île de la cité 町の島(シテ島)」から
「殉教者の丘(モンマルトル)」経由で
閉会式が開かれる主競技場と 選手村のある
北郊の町「サン・ドニ(ドゥニ)」へは 10km強 (徒歩 約二時間半)


パリ五輪2024 2024年7月26日(金)-8月11日(日) 

パリ五輪2024の開催地区の概要

1.開会式の場所
セーヌ川 (大凡左側が下流) の中洲
パリ発祥の地である「町の島(l'île de la cité シテ(スィテ))」辺の 水上

2.閉会式の場所
saint-denis サン・ドニ郡 サン・ドニ市の主競技場
「フランス競技場(stade de france : フランスの (国立)競技場 στάδιον )」

3.「選手村 village olympique」の場所
サン・ドニ郡(arrondissement de saint-denis)の サン・ドニ市と 隣接二市

「選手村 village olympique」のある サン・ドニ市には

①主会場の「フランス競技場(stade de france)」と
「水泳場(centre aquatique)」が隣り合って立地しています

②映画監督 リュク ベッソン luc bessonが運営する
「cité du cinéma 映画の町」(旧サン・ドニ発電所) があって
オリンピック期間中は 「選手村の食堂」になります

③選手村近くの プレイエル交差点近くには
地下鉄駅「サン・ドニ プレイエル駅 gare saint-denis pleyel」が整備され
木の飾り付けで知られる日本の「建築家」も整備に参加しています


開会式が開かれる パリ市の中心地
シテ cité (スィテ → 英 city) : l'île de la cité 町の島(シテ島)」から
「殉教者の丘(モンマルトル)」経由で
閉会式が開かれ 主競技場と選手村のある
北郊の町「サン・ドニ」へは 10km強 (徒歩 約二時間半)
地図でそれぞれの場所を確認してみましょう



さてここで問題です
閉会式が開かれ 主競技場と選手村のある
北郊の町「サン・ドニ(ドゥニ)」の地名の由来は何でしょう?


解答例
初代のパリ司教 聖ドニ (2-3世紀 saint-denis)


初代のパリ司教で フランスの守護聖人の一人
聖ドニさんは こんな方です(国立中世美術館)



その他の画像も挙げておきます 1826の絵
シテ島「ノートルダム司教座聖堂」南側入口の彫像
モンマルトル(殉教者(=聖ドニ)の丘)の公園の彫像1 2
聖ドニ教会の外装の浮彫

// 因みに 食堂「デニーズ denny's」の「denny」は
// 聖人に因む名前「denis 仏ドゥニ < 羅 デニス = 希 διονύσιος」の愛称です
// 「デニーズ 」とは 「ドゥニ=ディオニュースィオスさんの食堂」を意味します



さてここでもう一つ問題です
聖ドニさん(ディオニュースィオスさん)が
自分の首を持っている理由は何でしょう


解答例
初代のパリ司教で フランスの守護聖人の一人でもある
聖ドニさん(ディオニュースィオスさん)が 自分の首を持っている理由は
定番の聖人伝『黄金伝説』等によると 以下の通りです


1.聖ドニは 2-3世紀に パリに派遣されて
パリの中心であり 発祥の地である
セーヌ川の中州「l'île de la cité 町(スィテ)の島」に住み 宣教
// 今日 この島には
// パリの司教座教会 一万人近くを収容可能な
// 「ノートルダム司教座聖堂 cathédrale notre-dame de paris」が所在
// ノートルダム司教座聖堂前の広場は パリからの距離を測るときの基準点
// cf. 東京からの距離を測る時の基準点 日本橋
// 2019に尖塔が焼け落ちて 五輪開催後の2024年12月に再公開予定


2.その宣教活動の故に
北方の郊外の町 モンマルトルで首をはねられ
// (仏語)mont martre ← (ラテン語)mons martyrum 殉教者(=聖ドニ)の丘
// ← mons mercurius メルクリウス(=ローマの 商人等の守護神)の丘


3.はねられた首を持ったまま
更に北方の郊外へ歩いた末に息絶えました
息絶えた場所には 後に
サン・ドニ (聖ドニ=聖ディオニュースィオス) 修道院と教会が建てられ
周辺一帯も サン・ドニと呼ばれるようになりました
ここは フランスの歴代の王様達の埋葬地としても知られています



---
(おまけ)
定番の聖人伝『黄金伝説』等では
// jacobus de voragine (1229-1298頃) 著 『legenda aurea』
// 「dē sānctīs dionȳsiō, rusticō et eleutheriō」
// 聖 dionysius, rusticus そして eleutherius について
// 聖ディオニュースィオスと 同行して一緒に処刑された二人についての 伝説


フランス パリ市の初代司教の 聖ドニ(ディオニュースィオス)さんは
// (仏)saint denis (羅)sānctus dionȳsius (希)ἅγιος διονύσιος

「聖書」の使徒言行録に登場する
ギリシアのアテネ市の ディオニュースィオスさんと 同一視されています
// διονύσιος ο αρεοπαγίτης
// アレイオス・パゴス(アレースの丘)のディオニュースィオス




アテネのアクロポリスの左上には「アレイオス・パゴス = アレースの丘」があり
// 丘の上にある古代の高等裁判所

アテネのアクロポリスの南斜面には
歩行者道「アレイオス・パゴスのディオニュースィオス」通りがあります
// οδός διονυσίου αρεοπαγίτου

この名前は 使徒言行録の
「アレイオス・パゴス = アレースの丘」の段で
使徒パウロの説教によってキリスト教を受け入れた最初のアテネ人
「アレイオス・パゴスのディオニュースィオス」に由来しています。


「ディオニュースィオス」通りには
ディオニュースィオスさんが依拠したと言われる
新プラトン派のプロクロス πρόκλος (412 - 485)さんの家があります

ディオニュースィオスさんの著作は
529年の アテーナイのプラトン派の学校「アカデーメイア」閉鎖命令前に書かれて
新プラトン派の思想をキリスト教の中で生き延びさせるものとなりました




紀元後一世紀 ギリシア語圏に広がる ユダヤ教系の新興宗教 「キリスト教」

(ギリシア語圏の教養を持つ人に向けて ギリシア語で書かれた『新約聖書』)


『新約聖書』使徒言行録 17章16節- 原文 では

「キリスト教」の伝道師 パウロさんは

「腐男子」達の本拠地 アテーナイ市の アレイオスパゴスの丘に 参上して

道端の 「知られざる神 αγνωστω θεω」 を

イエースースさんの示す神と 重ねあわせる手法で キリスト教をアピール

 ↓

この時キリスト教徒になったと書かれている

ディオニュースィオス(διονύσιος)さんは

後にキリスト教化されたアテーナイ市の 守護聖人の筆頭となり、

後世(六世紀頃)書かれた ディオニュースィオスさんの名を借りた著作は

「人間には知られざるもの」としての 「神」についての議論を展開しました

 ↓

「知られざる神」は ギリシア語圏から ペルシア語圏に。

更に その後生まれたイスラーム圏 (アラビア語 スペイン語圏)にも

ディオニュースィオスさんの著作は 九世紀に

希臘語ローマの首都コンスタンティノポリスから

フランス パリに献呈され そのラテン語版も作成されたことで

希臘語世界だけでなく ラテン語世界においても

大きな影響力を持つこととなりました




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