北京奥林匹克塔から見た 北京市の中軸(故宮=紫禁城方面 手前に鳥巣+水立方 )
「蒙古高原」「満州平原」「漢の中原」を繋ぐ北京市
// 「蒙古高原」は 大草原やゴビ砂漠が有名
// 北京五輪2022では 寒冷地「満州平原」出身の選手達が 大活躍しました
今回は 北京市の中軸を成す
「蒙古族」「満州族」「漢族」の御城を巡ってみましょう
北京市の中軸線上に位置する 故宮(紫禁城)や
北京五輪主会場 「水立方(北京国家遊泳中心)」「鳥巣(国家体育場)」
下の図は 上の地図に於ける 中軸線と
「蒙古族」「満州族」「漢族」等が残した
各時代の四つの城址(じょうし しろあと)の配置図
四つの城址:上から 大きい塊順に
「元の大都城址」
「明・清の北京城(色付部分)」
「金の中都城址」
「遼(辽)の南京城址」
さて ここで問題です
この北京市の四つの御城の 出来た順番は?
(解答例)
北京市の四つの御城の出来た順番は次の順番
1.十世紀- 「遼(辽)の南京城」
2.十二世紀- 「遼の諸族の中から自立した 金(女真族)の中都城(→元の南城)」
3.十三世紀- 「元(蒙古族)の中国領域の城 冬の御城 大都城」
// 大都城から 北京の北の果ての万里の長城を遥かに越えて
// 真北に 400km程(100里 徒歩100時間)行くと 元の夏の御城 上都城
4.「明(漢族)・清(女真族→満州族)の北京城(色付部分:今日の城壁)」
// 十五世紀- 内城(黄色部分)>皇城>紫禁城(故宮)>内廷
// 十六世紀- 外城(茶色部分)
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更に 中軸線の中心に行ってみましょう
下に挙げたのは 北京市の中軸線の中心
北京城中央の紫禁城(故宮:上の地図の赤い部分)の更に内奥にある
清の内廷の正門 乾清門(けんしんもん)の 扁額(へんがく:平らな額)です
さて問題です
扁額の左には 中国語(漢字)で 「乾清門(qián qīng mén)」と書かれています
右にも「乾清門」と書かれているのですが 何語で書かれているでしょう?
(解答例)
「乾清門(けんしんもん)」という文字の右側には
清の統治者である満州族の言語 満州語(維吾爾(ウイグル)文字)で
中国語(漢字)を音訳して 「kiyan cing men キヤン チン メン」 と書かれています
・緑色の羅馬字で振仮名を追記しておきました
・維吾爾(ウイグル)文字は 基本右から左に書く
セム系の国際文字アラム文字を 反時計回りに90度回転させたもの
つまり 左を上にして 右から左に読んでいきます
・羅馬字は左から右に読む文字なので
慣例に従って 羅馬字は右を上にして
維吾爾(ウイグル)文字と 対応させました
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さて今度は 中心から少し離れたところにある 有名な御寺に行ってみましょう
下に挙げたのは 北京城の右上に位置する 雍和宮(ようわきゅう)の 扁額
雍和宮は 清の雍正年間を統治した
第五代皇帝 雍正帝(ようせいてい)の居館であり
// 雍正は 漢語で yōng zhèng 雍は「雍(やわ)らぐ」の雍
// 満州語で hūwaliyasun 蒙古語で nayiraltu 西蔵語で yung ṭing (羅馬字翻字)
第六代皇帝 乾隆帝の誕生地でもあり
後に 乾隆帝の意向で 西蔵(チベット)仏教寺院となりました
雍和宮の扁額の 右から二番目には 中国語(漢字)で
「雍和宮(ようわきゅう yōng hé gōng)」と書かれています
さて問題です
扁額は その他の列にも「雍和宮(ようわきゅう)」と書かれているのですが
それぞれ何語で書かれているでしょう?
(解答例)
右から
満州語(維吾爾(ウイグル)文字) 「羅馬字翻字 hūwaliyasun hūwaliyaka gung」
// 清の統治者 満州族の言語 満州語 (維吾爾(ウイグル)文字)
中国語(漢字) 「雍和宮(ようわきゅう yōng hé gōng)」
// 明の統治者 漢族の言語 中国語(漢字)
西蔵語(西蔵(チベット)文字) 「དགའ་ལྡན་བྱིན་ཆགས་གླིང་ 」
「羅馬字翻字 dga'-ldan byin-chags-gling ガ ンデン・チンチャクリン」
// 西蔵(チベット)仏教の言語 西蔵語(西蔵文字) byiは「チ」と発音
蒙古語(維吾爾(ウイグル)文字)
「羅馬字翻字 nayiraltu nayiramdaxu süme」「発音 nairalt nairamduu suum」
// 元の統治者 蒙古族の言語 蒙古語(維吾爾(ウイグル)文字)
(解説)
// 維吾爾(ウイグル)文字は
基本右から左に書くセム系の国際文字アラム文字を
反時計回りに90度回転させたもの
維吾爾(ウイグル 今日の新疆維吾爾自治区辺(タリム盆地>タクラマカン砂漠))は
東西文化の交流路の一つ
今日では 同じセム系で右から左に書く
アラビア文字(イスラームの聖典の文字)を使用
西蔵(チベット)文字は
セム系のアラム文字の子供で基本左から右に書く
印度のブラーハミー文字(印度の仏教の聖典の文字)のチベット語対応版
満州語は 清の統治者の言語ですが
19世紀には衰退が進み、 今日 満州では その存続が危ぶまれています
蒙古語は
ソビエト連邦から独立した蒙古国の国語でもありますが、
中国の内蒙古自治区では中国語化(中国の植民地化)の圧力が有り、
露西亜の蒙古系の共和国(カルムイク共和国・ブリヤート共和国等)では
露語化(露西亜の植民地化)の圧力の元 母語としての存続が危ぶまれています
(若者の言語としての露語 高齢者の言語としての蒙古語)
満州語や蒙古語を表記する縦書の維吾爾文字は
今日 中国の内蒙古自治区等で使われていますが
露西亜の共和国や 蒙古国(元露西亜の共和国)では
露語化(露西亜の植民地化)の圧力もあって
聖書の文字である希臘文字(キリル文字)表記が浸透しています
西蔵仏教は 西蔵族 蒙古族 満州族に普及している仏教です
中国やソビエトの統治下で 多くの西蔵仏教寺院が 廃絶や国外移転をしましたが
ソビエト連邦崩壊後の蒙古系共和国(カルムイク共和国やブリヤート共和国)では
復活に向けた様々な試みがなされています
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(以下 補足)
補足1
北京市を中国地方の首都としたグービラーイー・ガーンのエピソードの例
「初めての狩りの後の
ヂ(チ)ーンキ(ギ)ーズ・ハーン( جینککیز خان )による指への塗脂」
// この時代 「ヂ」の字が「チ」の字を 「キ」の字が「ギ」の字を 兼ねていました
1224頃 画面中央に ヂ(チ)ーンキ(ギ)ーズ・ハーン( جینککیز خان )と
初めて狩りをした 小学校低学年程度の年齢の 二人の孫
後に中国地域を統治した グービラーイー・ガーン(罕)( قوبلاي قان ) と
後に波斯地域を統治した フーラークー・ハーン(汗)( هولاكو خان )
フーラークーのウルス(王朝) ( = イールハーン朝 ايلخانيان )の
宰相 رشیدالدین (rashīd al-dīn 1247頃-1318) 編集の
世界史資料『集史 جامع التواريخ jāmi al-tawārīkh (諸歴史集成)』
(波斯語 1310-1311頃成立 )の パリ写本(1300年代前半成立)から
この波斯(ペルシア)語史料は
波斯以外の各地の蒙古王朝や 後代の王朝でも共有されました
補足2
満州語・蒙古語の記述に用いられる維吾爾(ウイグル)文字の例
清の資料『満州実録(1781(乾隆46)年成立)』(満州語 漢語 蒙古語)冒頭の
満州人の誕生神話に見る 水と鳥
・緑色の羅馬字で振仮名を追記しておきました
・維吾爾(ウイグル)文字は 基本右から左に書く
セム系の国際文字アラム文字を 反時計回りに90度回転させたもの
つまり 左を上にして 右から左に読んでいきます
・羅馬字は左から右に読む文字なので
慣例に従って 羅馬字は右を上にして
維吾爾(ウイグル)文字と 対応させました
以下の絵の 左の枠内の 絵の題名欄は
上段が 満州語(維吾爾文字)
中段が 中国語(漢字)
下段が 蒙古語(維吾爾文字)
長白山
// 満州と朝鮮の間にある長白山と 湖と 立体的に流れる水
三仙女 布勒瑚里(bulhuri)湖に 浴す
// 右端 佛庫倫(fekulen フェクレン) の服の所に
// 鵲(カササギ)が飛んできていることに要注目
// 維吾爾文字は左の列から右の列へと読み進むので
// その対訳である漢字も同様の配列になっています
佛庫倫(fekulen フェクレン) 成孕(せいよう)し 未だ同昇を得ず
// 上空を飛んでいる鵲(カササギ)にも要注目
佛庫倫(fekulen フェクレン) 昇るに臨(のぞ)んで 子に嘱(たの)む
三姓 雍順(yong šon ヨンション)を奉り 主と為す
神鵲(しんじゃく かみカササギ) 樊察(fanca ファンチャ)を救う
// 樊察(fanca ファンチャ)の頭に鵲(カササギ)が飛んできていることに要注目
補足3
蒙古族・満州族にも浸透する 西蔵(チベット)仏教
14世紀 敦煌 莫高窟(ばっこうくつ)の石碑 の写し
「タリム盆地>タクラマカン砂漠(維吾爾(ウイグル)) 」
「蒙古高原>ゴビ砂漠(蒙古(モンゴル)) 」
「西蔵高原(西蔵(チベット))」を繋ぐ 敦煌(とんこう)市
蒙古は (更には満州も)
維吾爾から維吾爾文字を、
西蔵から西蔵仏教を取り入れました
刻まれているのは 近隣の六つの文字による
西蔵仏教の真言 「oṃ maṇi padme hūṃ」
(印度語では eやoは 常に長音(ē ō)で発音)
一行目 漢字で 莫高窟
二行目 印度文字で 「ॐ म णि प द्मे हूँ 」 (dmeが合字)
梵字が文字化けするので(↑)現代印度文字です ...
三行目 西蔵文字で 「 ཨོཾ མ ཎི པད མེ ཧཱུྃ」 (padが合字)
向かって左の左側の枠内 維吾爾文字の縦書 (蒙古語 満州語)
(以下原文が文字化けするので 原文は画像参照)
向かって左の右側の枠内 蒙古語表記の為の 西蔵文字系のパスパ文字
// パスパ文字は 北京市を中国地方の首都とした
// 元のグービラーイー・ガーンが
// 西蔵(チベット)仏教僧パスパに作らせた文字
向かって右の左側の枠内 西蔵語表記の為の 漢字系の西夏文字
向かって右の右側の枠内 漢字で 「oṃ maṇi padme hūṃ」
「oṃ maṇi padme hūṃ」の文字は
北京市の雍和宮でも 印度文字(梵字)で 大きな文字で掲げられています
補足4 現代の蒙古音楽
西蔵仏教の盛んな蒙古系の共和国 露西亜左下(つまりウクライナ近く)に位置する
カルムイク共和国の 民謡の再創造者・電子音楽製作者・国際蒙古作曲家協会会長
アルカディ・マンジエフさん(1961-2022)の曲から
// 関連記事 チベット仏教の盛んなカルムイク共和国
// 上段に印度文字(梵字) 中段に西蔵文字 下段に蒙古の維吾爾文字で
// 「oṃ maṇi padme hūṃ」と書かれたmaṇi車を回す 音楽動画等
♪私のお気に入り♪ 歌詞(蒙古語)
♪時は変わる♪ 歌詞(蒙古語)
♪私の小さなエリスタ♪ 歌詞(露語)
♪私の小さなエリスタ♪ 歌唱例
♪私の親戚♪ 歌詞(蒙古語)
歌唱例
// 0:41-0:55 は
// カルムイク人全員の各地への強制移住(1943-1957)からの 帰還風景の再現
♪私のカルムイキヤ♪ 歌詞(露語)
// カルムイク共和国の各地域(ライオン)の御国自慢の歌
// エリスタ市の登場するパートでは ♪私の小さなエリスタ♪ を引用
// 5:14 希臘(キリル)文字表記の 西蔵仏教の真言
// 「ом мани падме хум (oṃ maṇi padme hūṃ)」
♪春の草原♪
カルムイク共和国+新疆維吾爾自治区+内蒙古自治区の 草原の歌 蒙古系の踊り
// 祖地である 新疆維吾爾自治区辺は 縦書維吾爾文字を使う蒙古人も多い
♪白月(=正月)♪
蒙古系のハブとなる都市を繋ぐ音楽企画 エリスタ市(露西亜国左下 カルムイク共和国首都)+ロストフ・ナ・ドヌ市(露西亜国左下 ロストフ州州都)+アストラハン市(露西亜国左下 アストラハン州州都)+モスクワ市(露西亜国首都)+ウラン・ウデ市(露西亜国 ブリヤート共和国首都 蒙古共和国に隣接)+フフホト市(中国 内蒙古自治区省都)+オルドス市(中国 内蒙古自治区)+北京市(中国首都)
(関連記事)
// #漢字 #仮名
// アジアのオリンピック開催地
// #生活言語 #学習語
// 生活言語の通じるオリンピック
// #モンゴル語 #ロシア語
// チベット仏教とカルムイク共和国
// #ウクライナ #ロシア
// 9-13世紀の キエフのроусь(ルーシ)の展開と 16世紀以降の モスクワの展開
// ソチの先住民の行方
// #中国民謡 #茉莉花
// アテネオリンピック2004閉会式で歌われた中国民謡 ♪茉莉花♪
// #鳥巣 #国家体育場
// 鳥の巣 北京のヘルツォーク & ド・ムーロン
// #北京2022
// 聖火点灯消灯時に子供達が歌っていた曲の名前は?
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