第三思春期のアラフォー主婦が言いたい事いうブログ

テーマは自分語り。仕事のストレスから、音楽話あれこれ。
テキトーに読みちらかしちゃってください。

うちにテレビが来た時の話①

2020-01-08 21:04:00 | 日記
ハタチの時、私は渋谷区民だった。

満員電車に1時間も2時間も乗り続ける事に本当に耐えられなくて(←要は田舎モン)、そのくせ恵比寿駅近くの学校に行くための定期代は1万円オーバー。
ある日、何で高い金出して毎日苦行みたいな通勤電車に耐えなならんのん?!ってブチ切れた私は、勢い余って東京都渋谷区、ど真ん中の道玄坂にあるマンションに引っ越したのである。

住所で言うと道玄坂2丁目。
ピンと来る方はいらっしゃるかもしれない。
道玄坂百間店界隈のラブホ街のど真ん中である。

それでも私は田舎モンのクセに、そこそこ大きくて華やかな繁華街で生まれ育ってたためか、酒臭い酔っ払いオヤジも、自分で好んで飲んだんだか、横でニヤついてる冴えない男に飲まされたんだかよくわかんない泥酔した女の子も、顔にはっきり『俺たち小心者!』って書いてあるチーマーくずれ集団を横目に毎日平凡に生活していた。

その場の空気に溶け込めるオーラみたいなものがあって、私は多分それを身に纏っていたのかもしれない。

1年半ほどオンナひとりで住んでいたけど、トラブルらしい事はほとんどなく、騒動と言えば、たまに私の部屋が同期の宴会場になって、取り外しが出来ない絨毯の上で、友達が酒をリバースすることくらいで、本当になんてことない、ただの日常を過ごしていた。

毎日学校をサボり、夜になったらバイトに出かけて、帰り道に駅前のTSUTAYAで文庫本を買い、タバコが吸えるファーストフード店でぷかぷかふかしながら一気に読む。

薄めの文庫本なら小一時間で読めるので、大体目を上げたら夜中の3時頃をまわっている。

そんな日を週に3.4回過ごしていた。

私の家にはテレビがなかった。
引越しする為の資金がテレビまで回らなかったのである。

元々テレビは好きでも嫌いでも何でもなかったから、無いなら無いでも気にならなかった。
それよりも本を読んで、真っ白なノートを広げ、自分にとって心地よい言葉だとか単語を、目的もなく思うまま、つらつら書き出していく事の方が好きだった。

耳障りがいい言葉。ダブルミーニングな言葉。内の自分に語りかける言葉。失恋した時の苦しい切ない言葉。逆に恋が始まった時のキラキラした言葉。

こうやって書いたノートは文字通り、のちに私が書いた歌詞の元になったものだけど、とにかくたくさん書いた。
書けば書くほど、自分以外の誰かになれる気がした。

言葉や、言葉にまつわる感情や意味をシャッフルすることが好きだった。

とにかく私は弱い。と書く。
とにかく私は強い。と書く。

今日の私はこっち。昨日の私はこっち。明日の私はこの中間かなー?
それともこの強さと弱さが歩み寄ったりするのかな重なったりするのかな。
ふたつがごちゃ混ぜになったらどうなるんだろう…ああ、それが人ってもんか。。なんて空想をたゆませたりするのが好きだった。

ふと空を見上げてみたりもした。
真っ直ぐ歩けないほど大混雑する渋谷のスクランブル交差点でも、ふと星が見えたりする。

おお。星の光ってなんだかんだ言って強いのね。
こんなに電飾でギラギラした街までよく届けたね偉いね。

もちろんじろじろ見られたくはないので、口には出さないけど、毎日毎日そんなことばかり考えていたように思う。

日光が苦手で、夜が好きだった。
ピカピカしたネオンは、そこにあるものをくっきりと浮かび立たせるようで、実はぐちゃぐちゃに混乱させて誤魔化してしまうように思う。

そんな誰でもない自分になりたくて、見つけてほしいけど絶対に見つけられたくない、相反するものを同時に抱えた私が、身を隠すのはぴったりの場所が渋谷だと思ってた。

そんな私の部屋についにテレビが来た。
明らかに私に気があるけど、年齢差がもの凄いのもあって、きちんと遠慮してくれる物好きな人がちょうど私の近くにいた。
あまりにも世間の話題についていけてない私を不憫に思ってくれたのか、テレビを買ってくれた。
下心は見えなかったが、何か見返りを求められても困るので、自分の身の丈を考えて14インチのビデオデッキが搭載されている一番小さなタイプをチョイスした。

早速持ち帰って電源を入れた。
久しぶりに見るテレビ。丁度流行りの番組が流れ出す。

テレビって何て楽しいんだろう!
テレビって何ていろいろ教えてくれるんだろう!
見なきゃ損だよ損!

とかまで思わせられちゃった私は洗脳とかかかりやすいタイプなんだろうか。
ずーっとテレビばかり見る時間が増えた。

配置は私のベッドの横。
壁のないタイプのシェルフに起き、角度を私側に向けて、いつでも見れるようにしていた。

そんなことを1ヶ月くらい続けた頃だろうか。
だんだんノートに書く言葉が出てこなくなった。

それだけじゃない。普段誰かと会話していても突然言葉が詰まるようになった。

あれ?
今何を思ったんだっけ?
何を思い浮かべたんだっけ?
どういう例え話をしようとしてたんだっけ?

どうやらひたすら受け身になって見ていたテレビに慣れすぎて思考能力が落ちていたみたいだった。

長くなってきたので、続きはまた今度。


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