今の安倍政権は 独裁状態。共謀罪 特定秘密保護法 安全保障法制 (小林よしのり氏)
自由奪われた羊にさせられるのは嫌 小林よしのりさん
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2017年4月21日22時4分
■問う「共謀罪」 漫画家・小林よしのりさん(63)
「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ組織的犯罪処罰法改正案が国会で議論されている。政府は「テロ対策に必要」との立場だが、捜査当局による乱用や「表現の自由」などの侵害を危惧する声もある。
オウム真理教からテロの標的とされたこともある漫画家の小林よしのりさんは、この法律をどう考えるか。
■テロを未然に防いで治安を守る。その正義の陰にあるものは何か
わしは1990年代、薬害エイズ問題に関わっていた。厚生省(当時)の前で学生らと集会をやると、公安警察があちこちで見張っていた。
被害にあった子どもたちが次々と亡くなるのに、厚生省は肝心な資料を出さない。行き詰まりを解決するため、マスコミや世間の注目を集める方法がないか悩んだ。そこで色や臭いがある無害なガスを厚生省でまいて驚かせようと計画し、仲間の学生と相談する様子を漫画にも描いた。
結局、事態が動きはじめたため実行せずにすんだが、「共謀罪」があれば威力業務妨害罪などに問われたかもしれない。もちろんわしは人を傷つけたりしないが、こうした正義のための表現行為まで摘んでしまわない社会の方がいい。
逆に、テロの標的になったこともある。オウム真理教を追及していたら、教団からVXガスで命を狙われた。警察に行ったけど何もしてくれない。身の安全を考えれば、共謀罪で信者への監視を強めてもらったほうが襲撃を防げていいということになる。
これらを天秤(てんびん)にかけたとき、わしとしては共謀罪を創設するのではなく、今の刑法にある予備罪をもっと活用して対処してほしいと思う。確かに、何をやるか分からん連中はきちんと調べてもらわないと困る。でも、テロを防ぐためだからといって自由を奪われた羊にさせられるのは嫌だ。
共謀罪の一番の問題は、権力によって恣意(しい)的な運用がなされることだ。犯罪をやろうと思っても最後の最後で踏みとどまることがある。それが計画だけで逮捕されるんだから、考えついたら即座に実行しないと損をするという変なことになってしまわないか。
世論調査を見ると、共謀罪に賛成する人がたくさんいる。「自分は一般人だ」「絶対にやましいことはしない」と思い込んでいるんだろう。安全が得られるなら監視された方がいいくらいの感覚じゃないか。共謀罪法案の内容を見ていないし、何も考えていない。基本的に日本人はお上に任せたい体質。わしはそんな国民にも腹を立てている。戦前だって政治家を無視する軍部を国民が支持した。その体質は何も変わっていない。
「戦前回帰」「きな臭い時代」と誰かが声を上げると、バカにする風潮になっている。左翼が長いことそんな言い方をしてきたもんだから、もはや信用されなくなった。どんな言い回しで国民に警戒心を抱かせればいいか、すごく難しい時代になってしまった。
共謀罪によって言論人が萎縮しようとするまいと、そもそも安倍政権批判の本が売れなくなっているのが現実。書くことはできても商売にならない。今の安倍政権はもう独裁状態。共謀罪だけでなく、特定秘密保護法や安全保障法制などもあわせて考えると、やっぱり権力の思うがままの方向にどんどん向かっているんだと言わざるを得ない。(聞き手・岩崎生之助)
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