普天間から福島まで、代償の大きい日本の優柔不断=メア氏 (WSJより転載)
日本では、菅直人首相が「戦後最大の危機」と呼ぶ東日本大震災後の対応に追われ、それまで論争の的となっていた沖縄普天間米軍基地移転問題はここ数カ月下火になっている。同基地の移転問題は菅首相の前任者、鳩山前首相の失脚の大きな原因となった。
ケビン・メア氏 だが、基地問題は間もなく再燃するだろう。この夏、財政危機に直面している米政府は予算削減を断行するとみられ、普天間基地の移転問題が数週間のうちに解決されなければ、普天間基地移転予算が撤回されるかもしれない。そうなれば、地元住民がどんなに反対しても基地はおそらく現在の場所に残ることにだろう。
少なくともそれが、著書「決断できない日本」(現時点では日本語版のみ)の宣伝のため来日中の元米国外交官、ケビン・メア氏の見解だ。菅首相は数週間内に退任するとみられ、問題を早急に解決するには、大胆かつ熟練した後継者が必要だ。
メア氏自身、沖縄に関しては苦い経験がある。鳩山氏同様、メア氏も沖縄をめぐる論争によって国務省日本部長という職を失うことになった。メア氏は以前、沖縄人を侮辱したとして地元で抗議の嵐を呼び起こした。しかし今週来日した同氏は、同氏の発言とされるコメントは報道によって非常に歪曲されたものであるとの主張を繰り返した。
国務省に30年勤務した後、今ではワシントンのNMVコンサルティングに勤務する 同氏は、東アジアにおける地政学的パワーバランスを維持し、中国からの現実の脅威に対抗するために沖縄は重要な戦略拠点であると考えている。沖縄県の最西端は台湾からわずか約100キロの距離にあり、台湾海峡で有事となった場合、極めて重要となる。18日に外国人記者との会見を行った同氏は「沖縄は東京よりも平壌に近い距離にある」と注意を喚起した。
同氏はその著書で、普天間基地の移転問題が未解決のまま、米歳出削減のあおりを受けるリスクにさらされることになったのは日本政府の優柔不断が原因と述べて いる。同氏によれば、沖縄の政治家と中央の政治家は移転計画を前進させ、実行するかわりにまずコンセンサスを築く必要があり、それは日本政治を決定付ける特徴ともいえるが、計画実行の障害になっている。
メア氏は、あと数週間以内に日本側で移転日を具体的に決めなければ、普天間基地は在日米軍の75%を受け入れている沖縄にそのまま残るとみている。
メア氏はまた、東日本大震災後、日本の政治的決断力の欠如を直接体験したと語った。3月11日の翌週に米軍が行った救援のための「トモダチ作戦」 の調整官を務めた同氏は、震災対応において、中央政府の当初の優柔不断を痛感させられた。
「日本政府には、『自分の責任において決断する』と言える人が誰もいない」とメア氏は述べ、震災直後の5~6日間、政府では原子力発電所の危機は東電の問題という態度がみられ、「担当者は誰もいなかった」と指摘した。
記者:Cheng Herng Shinn