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なぜなら、実際に死んで生まれ変わりを果たした人間が「どこに生まれるかは選べない」と言っているからだ。
メシア──世界唯一のスケプティックハンター。インチキ霊能力者の嘘を暴く達人。
リネンちゃん──メシアの弟子。
メシア 江原啓之さんは「子供は親を選んで生まれてくる」と死ぬほど言ってるけど、これが世紀の大ボラである決定的な証拠があるんだ。
リネンちゃん ホントですか!?ぜひ教えてください!
メシア うん。私が史上最強の生まれ変わり例だと思っている《ジェームズくんの例》。
これに匹敵する強力な生まれ変わり例に《チャナイくんの例》というものがあるんだ。
リネンちゃん チャナイくんの例?
メシア うん。舞台は1960年代のタイ……。
小学校教師のブア・カイはタイのバン・カオ・プラ村で、妻のスアンと4人の子供たちと暮らしていた。
しかし、とある事情でタパン・ヒンという町に転勤することになる。
そして1962年1月23日、ブア・カイはいつものように自転車で学校に向かっていたのだが、教壇に立つことはなかった。
通勤中、背後から頭を撃たれて死亡してしまったんだ。享年36歳。
ちなみに弾丸は左後頭部から入り、左目の上から抜け出ていたそうだ。
リネンちゃん そうなんですか。
しかし、奥さんとお子さんを残して、36歳の若さで殺されてしまうなんて……。
メシア ブア・カイの死から8年後、ノン・ラ・コンという村でチャナイという3歳の少年が友達と遊んでいたとき、「俺は先生なんだぞ!」「前もそうだったんだからな!」といった言葉を口走るのを祖母が耳にしたんだ。
そんなチャナイは生まれつき、左の後頭部と左目の上に母斑があった。
ある日、チャナイが祖母にこう言ったんだ。
「妻のところへ連れてって。名前はスアンていうんだ。
子供たちのところへ連れてって!僕は《ブア・カイ》って呼ばれてたんだ。
鉄砲で撃たれて殺されたんだ。
お父さんの名前はキアン、お母さんの名前はヨン。
カオ・プラに住んでたんだ。ねえ、カオ・プラに連れてってよ」
そしてバン・カオ・プラ村へ……。
家に入ったチャナイは何人もの人たちの中から、たちまちのうちにブア・カイの両親を見つけ、「お父さん、お母さん」と声をかけたそうだ。
しかし、まだ半信半疑の母親は5、6の弾薬帯を持ってきてこう言ったんだ。
「どれがブア・カイのだったかわかる?もしちゃんと選ぶことができたら、息子の生まれ変わりだと認めてあげる」
チャナイはためらうことなく弾丸帯の1つを選んだ。
それはまさしくブア・カイの弾丸帯だったんだ。
その瞬間、母親の目に涙があふれた。
リネンちゃん ウソみたいなホントの話……。
メシア いや、話のオチはこれからなんだ。
ブア・カイの母親がチャナイにこうきいたんだ。
「どうして自分たちのところに生まれ変わってこなかったの?
どうしてそんな遠くに生まれてきちゃったの?」
するとチャナイは、なんとこう答えたんだよ。
「どこに生まれるかは選べないんだよ」
リネンちゃん えー!!と、ということは……。
メシア 私の言いたいことがわかったようだね。
そう。実際にマジでいっぺん死んで生まれ変わりを果たした人が「どこに生まれるかは選べない」と言っているんだ。
これで江原さんの「子供は親を選んで生まれてくる」という話が歴史に残る大ボラであることがわかってもらえたと思う。
リネンちゃん 江原さん、ご愁傷さまです……。
メシア ちなみに生まれつきあった2つの母斑という証拠もあり、ブア・カイの家族はチャナイが本当にブア・カイの生まれ変わりであることを確信したそうだ。
また、チャナイはほかの同年代の子供と比べて明らかに威厳があり、ブア・カイの甥たちに「掃除をしろ」と命じると、甥たちは素直に従ったらしい。