※ネタバレを含むため、自己責任で閲覧ください
MISIAに関わる全ての人たちで創り上げた、“大いなる希望”への旅立ち。
25周年の幕開けを祝す全国アリーナツアー〈Yakult presents 25th Anniversary MISIA THE GREAT HOPE〉が、10月21日(金)よりスタート。その口火を切る日本武道館での東京公演の初日に駆け付けた。おそらく前回のMISIAの日本武道館での公演は、2019年4月に行なわれた〈MISIA 平成武道館 LIFE IS GOING ON AND ON〉だと思うが、残念ながら同公演を観賞することはままならなかったため、日本武道館でMISIAを観るのは2014年の〈MISIA 星空のライヴ VII-15th Celebration- Hoshizora Symphony Orchestra〉以来になろうか。MISIAのライヴとしては、2020年のブルーノート東京公演〈MISIA SUMMER SOUL JAZZ 2020〉以来約2年ぶりの観賞となる。
個人的にMISIAのライヴは〈星空のライヴ〉や〈MISIA CANDLE NIGHT〉などのアコースティックやバラードを基軸としたものよりも、1999年から2017年までMISIAのライヴの根幹をなした〈THE TOUR OF MISIA〉のスタイルを嗜好していて、ロングランとなった〈星空のライヴ〉にはあまり足を向けなかった事情もあった。それゆえ、王道スタイルのアリーナツアーは、〈THE TOUR OF MISIA〉を継承した2018年の横浜アリーナでの20周年記念ツアー〈20th Anniversary THE SUPER TOUR OF MISIA Girls just wanna have fun〉ぶりとなろうか。それから5年という時を経て、節目となる25周年の嚆矢に立ち会った。本ブログでは、2005年からの記事をエントリーしているため、MISIAのライヴレヴューは(May J.がオープニングアクトに登場した)2007年の〈THE TOUR OF MISIA 2007 ASCENSION〉が初出となるが、それ以前の〈THE TOUR OF MISIA〉も観賞してきた。「つつみ込むように…」でデビューした翌年の1999年にMISIAの初のホール&アリーナツアーとしてスタートした〈THE TOUR OF MISIA〉からステージを重ねるごとに飛躍を続けてきたMISIAが、さまざまなエッセンスを蓄えながら表現してきたライヴパフォーマンスの集大成として、最初に行なったアリーナライヴの地、日本武道館に再び戻ってきたというのも感慨深いものがある。
デビュー25周年というのは、アーティストとして抜きん出て長いという訳ではないが、ただし、デビュー以来四半世紀にわたってトップランナーとして走り続け、いまや『紅白歌合戦』で2年連続で大トリを務める国民的な存在となっていることを考えると、あらためて辿ってきた歌手人生の偉大さに感服する。デビュー当初のR&B/ヒップホップ・スタイルからオーセンティックなスタイルへと移行してしまったものの、日本のR&B/ソウル・ミュージック・シーンや圧倒的なライヴパフォーマンスにおいて、“金が獲れる”女性シンガーとして、彼女を超える存在は、いまだ登場していないといっていいだろう。その“GREAT”な存在の四半世紀を祝す舞台は、彩りやキャストも豪華。ステージの左右上からは“25th MISIA THE GREAT HOPE”と書かれた大きなタペストリー風のペナントが掲げられていて、そのペナント同様に、ステージは一面真っ赤に染め上げられ、ステージ中央からは自動で段差が作れる昇降式の花道が延びている。2階席の南西からの観賞となったのだが、天井から吊るされた日本国旗と日の丸と同じ赤が敷かれたステージとの対比が、一層この“祝典”を華やかなものにしているようにも思えた。
開演前はMISIAのラジオ番組がBGMとして流れていたが、開演時刻から10分を過ぎたところでラジオ音源がぶった切られ、バンドメンバーが登場。会場に拍手が鳴り響くと、「Everything(Hex Hector's Club Mix)」のイントロが流れ出し、それぞれ色違いの蛍光色っぽいヘアカラーのドラァグクィーンが登場。ステージ中央に鎮座した翼を広げた幅15メートルほどの金色の鷲のオブジェ(角度的に最初は大きな“蒲焼”かと思ってしまった……苦笑)の背中にMISIAが登場すると、さらに拍手の波が高まっていく。また、さまざまな楽曲で次々とダンサーも登場。辻本知彦と菅原小春の男女ペアでMISIAと絡んだり、花道にて4、5列縦隊となったり、MISIAを囲んだりと、楽曲によってさまざまな場面で華を添えていく(ドラァグクィーンと合わせると、総勢24名くらいのパフォーマーがいただろうか)。
「LIFE IN HARMONY」になると、(スタッフの手動で)金色の鷲が花道へと移動し、武道館の中心で金色の鷲の背中に乗ったMISIAが歌うという構図に(この時にようやく“蒲焼”ではなく“鷲”に乗っていることが分かった…汗。おそらく1階席や2階席の正面からだと見やすい構図だっただろうが、アリーナからだと鷲を見上げる形になり、MISIAが見えていたかどうかは分からない)。
冒頭の「Everything」からは「忘れない日々」「LIFE IN HARMONY」「THE GLORY DAY」を経て「INTO THE LIGHT」のハウス・リミックス・メドレーを出し惜しみなく披露。このハウス・リミックス・メドレーとR&Bやダンサブルな楽曲がMISIAライヴの最大の醍醐味だと個人的には考えているので(ハウス・メドレーはもっと長尺でもいいくらい)、25周年ツアーに組み込んできたことは良かった。ただ、序盤に配したからか、「INTO THE LIGHT」での紙テープの発破などはなし。このメドレーは後半や終盤に配したらより盛り上がりも加速すると思うのだが、リミックス使用曲がほぼ初期曲ということもあり、ステージの熱気を高める導火線的な役割として担われたのかもしれない。
ハウス・リミックス・メドレーが終わると、大林武司のキーボードと鈴木明男のサックスを軸としたジャジィなモードによる「アメージング・グレイス」のインスト・ヴァージョンを経て、「来るぞスリリング」「CASSA LATTE」と『MISIA SOUL JAZZ BEST 2020』にも収録されたジャズ・テイストのナンバーへ。ここではTomo Kanno(菅野知明)とFUYUのツインドラムや、弦一徹ストリングス、ホーンセクションが活躍。黒田卓也の〈SOUL JAZZ〉セッションとはまた違った、ゴージャスでエキサイティングなアレンジで楽しませてくれる。
中盤には、東京ディズニーシーに新たに登場するナイトタイムエンターテインメント「ビリーヴ!〜シー・オブ・ドリームス〜」とのコラボレーションとして、日本語版テーマとなった「君の願いが世界を輝かす」を。「ビリーヴ!〜シー・オブ・ドリームス〜」のイメージ(ティザー)映像を背景にバンドがインスト演奏した後に、MISIAが登場して「君の願いが世界を輝かす」を歌うという展開。美麗でホープフルなムードが会場を包み込むと、後半は「Everything」「逢いたくていま」「アイノカタチ」とバラード・モードへと移行。冒頭で「Everything」を披露したので、もうないかと思いきや、ここでオーセンティックな「Everything」を組み込んできた。「Everything」を2回セットリストに入れてきた記憶がないのだが、イントロが流れた瞬間に会場から拍手が生まれたことでも分かるように、MISIAの代表曲中の代表曲だから、25周年というアニヴァーサリーのステージにはオリジナルを歌っておきたい(聴かせたい)ということなのだろう。
25周年を俯瞰する上で、MISIAの新しい要素(=最近の楽曲)も組み込んでくるだろうと、昨年12月にリリースしたアルバム『HELLO LOVE』の楽曲を密かに楽しみにしていたのだが(「Welcome One」「Hello Love」「木洩陽の記憶」あたりとか)、同アルバムからは「Higher Love」を歌い上げたのみ。その代わりという訳ではないが、このツアー初日にリリースした、矢野顕子作詞・作曲の「希望のうた」とアンコールの1曲目にファイントゥデイ資生堂「TSUBAKI」のCMソングに起用された「おはようユニバース」のほやほやの新曲を加えて、25周年へスタートを切ったフレッシュなMISIAを見せてきた。「希望のうた」ではアウトロの身体に響かせるような突き上げる熱唱で、文字通り“希望”への想いを高らかに掲げてみせた。
「希望のうた」が終わるやいなや「オー!オオー!オオー!」のコーラスが始まり、ライヴ定番のタオル回し曲「MAWARE MAWARE」が始まり、ステージ上もさらに熱を帯び、ダンサーもバンドも跳ねていく。ただ、2階席だったからなのか、タオルを回している人はあまり見られないばかりか、スタンディングの人も僅か。年齢層も正直高く、体力的に座って観ることがデフォルトになっている人たちに囲まれていたようだ。武道館は2階席といっても、他のアリーナに比べれば、高さこそあれ直線距離はそれほどないから、比較的熱気を感じられる会場だと思うのだが……アリーナとの温度差を感じてしまった。演者同様、観客も25の年を重ねてきているから、仕方ないのかもしれない。終始盛り上がりたければ、アリーナ席を獲得することか(といっても、良席に当たることなどほぼないという現実が……)。
MISIAがクラップを促して笑顔で応えた「あなたにスマイル:)」を終えて、アンコールに入ったのだが、アンコールのクラップもかつてのように大きな音の波となって場内を響かせる訳でもなく、淡々と拍手をする程度で、ここでもアリーナとの温度差を感じてしまった。バラードに重心を寄せ、アコースティックやバラード中心のライヴを数多く展開してきたことで、そういった楽曲を好むファン層が増え、以前よりガッと盛り上がる成分が欠けているのでは、とまでは思わないが、25周年というアニヴァーサリーには少しばかりの寂しさも。年齢層もそうだが、ツアー初日の平日ということもあるのかもしれない……そんなことが脳裡を過ぎっていたが、メンバー登場後にステージに再度飛び出してきたMISIAが、開口一番「ありがとーう!フォォォ-ッ!フォォォ-ッ!最高~ッ!」から「25th Anniversary MISIA THE GREAT HOPE、最高のスタートとなりました~!」と叫ぶと、寸前までの“邪念”が消えてしまうのだから、自分も現金なものだ。
イントロに入った途端に「ゴメン、もう一回やっていい?」と茶目っ気たっぷりにMISIAがやり直しをリクエスト。大笑いしたMISIAに観客からも笑いが零れるなか、「おはようユニバース」からアンコールがスタート。唸るようなファンキーなフェイクを放ちながら、陽気で快活に展開する楽曲は、MISIAのキュートなキャラクターを発露するのに相応しい。そして、憂いと甘美を帯びたサックスが褐色のムードを導き出すと「陽のあたる場所」「つつみ込むように…」というR&BマナーのMISIAクラシックスへ。近年はデビュー当初ほどのR&B/ブラック・ミュージック・テイストは感じられないこともあるが、これらの初期曲の歌唱を耳にするにつれて、MISIAというシンガーに内包された“ソウル”に惹き込まれてしまうから不思議だ。「つつみ込むように…」では冒頭の突き抜けるようなホイッスルヴォイスだけでなく、ファンキーな煽りフェイクも混ぜたりしながら、スウィートな一面からソウルフルな風貌へと一気に表情を一変させていく。サビ終わりからは2段階、3段階と上昇するロングトーン、アウトロでは今ステージ最高音とも思えるホイッスルヴォイスを繰り出し、観客からの大きな喝采を浴びていた。圧倒的な歌唱力を肌で感じ、普段はならない身震いをしてしまうのは、MISIAくらいなものだ。
その突き抜けた訴求力と迫力の余韻に観客が酔っているなかで、「もう一曲歌ってもいいですか」と言って歌い始めたのは、『紅白歌合戦』での歌唱でも話題となった「明日へ」。MISIAが語った「みんなで歌い合える時間が平和の象徴、そんな時間が世界中で刻まれてほしい」「平和な世界を描き続け、希望を持ち続けることが力になると信じて歌い続けていく」という願いや想いと、本ツアータイトル〈GREAT HOPE〉のコンセプトに最も相応しい「明日へ」という楽曲をラストにして、25周年ツアーが無事に出航していった。
おそらくツアー初日ということで、今後は楽曲の入れ替えがあったり、演出の微調整も出てくるのだと思われるが、基本的には25周年記念ということもあり、MISIAの人気曲や定番曲を中心としたベスト・アルバム的な構成で、意外性やサプライズ的な要素はそれほどない。いわゆる集大成的なセットリストだ。とはいえ、20名超のダンサーが入り乱れ、ストリングス隊を含めた大所帯なバンドとともに展開されるステージは、見応え聴き応え十分であることには変わりはない。ツアーが進むにつれて、成熟度も高まっていくだろうから、ツアー後半あたりでは、より一体感が増したライヴが観られるのではないかと思う。ツアー〈MISIA THE GREAT HOPE〉は、11月の名古屋から、静岡、札幌、大阪、広島、宮城、横浜を経て、2023年2月の福岡まで9都市20公演で開催。来年2月の横浜アリーナ公演あたりで、再びその成熟度を体感しようと考えている。
◇◇◇
<SET LIST>
00 INTRODUCTION
~Remix Medley~
01 Everything(Hex Hector's Club Mix)
02 忘れない日々(HEX HECTOR'S CLUB MIX)
03 LIFE IN HARMONY(GOMI'S LOVE & HARMONY REMIX)
04 THE GLORY DAY(MALAWI ROCK'S REMIX)
05 INTO THE LIGHT(15th version)
06 Amazing Grace(Band Instrumental)
07 来るぞスリリング
08 CASSA LATTE
09 Higher Love
10 VIDEO and Band Instrumental(“Believe! Sea of Dreams” from Tokyo Disney Sea)
11 君の願いが世界を輝かす(Theme of “Believe! Sea of Dreams”)
12 Everything
13 逢いたくていま
14 アイノカタチ
15 希望のうた
16 MAWARE MAWARE
17 あなたにスマイル:)
≪ENCORE≫
18 おはようユニバース
19 陽のあたる場所
20 つつみ込むように…
21 明日へ
<MEMBER>
MISIA(vo)
吉田サトシ(g)
日野“JINO”賢二(b)
大林武司(key)
佐々木久美(org,cho)
菅野知明 / Tomo Kanno(ds,perc)
FUYU(ds,perc)
鈴木明男(sax,fl)
広瀬未来(tp)
池本茂貴(tb)
陸悠(sax)
弦一徹ストリングス(strings)
渡辺麿裕美(cho)
ギラ・ジルカ / Geila Zilkha(cho)
Drag Queen:
Hossy
MONDO
Rachel D'Amour
LIL'GRAND-BITCH
Dancers:
辻本知彦
菅原小春
TAKUYA
CanDoo
KAZANE
KEIN
and more...
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