チケットはプラチナ化、映画館での上映“ライブビューイング”のチケットも各映画館ソールドアウト続出。さらには、USTREAMでの生中継ネット配信が決定した宇多田ヒカルの休養前の最後のライヴ、“WILD LIFE”＠横浜アリーナのセット・リストを挙げておこうかと。
導入は宇宙船内にいる“くま”の映像から。地球に落下した“くま”が頭をとると……中には宇多田ヒカルが、という演出でステージへと展開する流れ。
オープニング曲「Goodbye Happiness」や序盤での（「おまえらっ! …心の準備はいいかッ」からの）「traveling」への流れもそこそこ予想出来たけど、本編ラストが「虹色バス」と予想出来た人はほとんど（誰も）思いつかなかったんじゃないかな。
会場には「Goodbye Happiness」のPVでも登場したパペット（人形）を持参した多くのオーディエンスがいたようだ。ステージは円形で、ストリングスも配されていた。
個人的には宇多田ヒカルはライヴがそれほど上手いアーティストだとは感じていないところがあり（それはステージ経験の少なさも影響していると思うけれど）、抜群の声量があるわけでもないこともあって（もちろん、その部分以外に彼女の魅力があるのだけれど）、高音で声がかすれたり（そのため原曲とは違ったフェイクをしたり）音程が不安定だったりする部分を映像としてハッキリ“観て”しまうと、もう一つの印象を受けなくもない。もう一つというのは、彼女を高いレヴェルでパフォーマンスが出来るアーティストだと思ってのことなのだが。そういう意味で、ネット配信という方法でライヴが観られることは画期的だけれども、ライヴは実際にその会場に出向いて“体感"することに大きな意義があるのではないか、と改めて感じた。特に宇多田ヒカルというアーティストは、表情や気持ちの揺らぎが感じられる声色、時に不安定とさえも感じられる表現力が最大の魅力であるから、それを最も実感出来るのは、やはり映像ではなく五感をフル稼働して得られる会場でのライヴなのだな、と。自分がライヴ会場へ行けないなら映画館へ……という気にはそれほどならなかったのは、こういった理由があったのかもしれない。
それにしても、本編ラストの「虹色バス」というのは驚いた。15歳から27歳の宇多田ヒカルの総決算ということからも、個人的には「光」か「First Love」ではないかと思っていたのだが。ただ、これは単に奇を衒ったというのではなくて、彼女なりの意味があってのことだろう。それを真摯に強い感情で焚きつけるのではなく、温かく微笑ましい雰囲気の「虹色バス」でメッセージすることが、彼女の類まれなる才能なのだと思う。
アンコールは、12月8日がジョン・レノンの命日ということもあってビートルズのナンバーを。「イマジン」というありきたりの選曲じゃないところがいい。季節的なこともあり、宇多田ヒカル的クリスマス・ナンバー「Can't Wait 'Til Christmas」を挟んで、ラストは「time will tell」。当時15歳でのデビュー・シングル「Automatic」のカップリングとしてリリースしたこの曲だが、“time will tell / 時間がたてばわかる / Cry / 明日へのずるい近道はないよ / きっと きっと きっと……”という詞を15歳で書き、何事もなく歌う彼女に対し、音楽シーンや一般リスナーがこぞって大きなインパクトを受けたのも、自明の理ともいえる。m-floが「Mirrorball Satelight 2012」で“Time will tell 光る唄だ / DJホリイ回す皿 / アルバム聴きなよマジヤバ”とリリックに組み込んでいるのも、その才能の凄さを感じてのことなんだろう。
一旦活動休止をする彼女だが、より表現力を増して、さらに大人の女性としての魅力を磨き上げて、再びステージに立つ日を楽しみにしたい。そして、その時には、実際にそれを“体感”出来る場所にいられることを望むばかりだ。
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＜SET LIST＞
00 INTRO～Kuma's Video～
01 Goodbye Happiness
02 traveling
03 Take 5
04 Prisoner of Love
05 Colors（Acoustic Strings Ver.)
06 Letters
07 Hymne a l'amour～愛のアンセム～
08 SAKURAドロップス
09 Eclipse（Interlude）
10 Passion
11 BLUE
12 Show Me Love（Not A Dream)
13 Stay Gold
14 ぼくはくま
15 Automatic
16 First Love
17 Flavor of Life
18 Beautiful World
19 光
20 虹色バス
≪ENCORE≫
21 Across the Universe (Original by The Beatles)
22 Can't Wait 'Til Christmas
23 Time Will Tell
