連勝も束の間。好相性の相手に3発被弾し、清水へ今季ホーム初勝利を献上。
14分 チアゴ・サンタナのゴールで清水先制
29分 内田宅哉が負傷交代
45+3分 ヴァウドのゴールで清水が追加点
49分 片山瑛一のゴールで清水が3得点目
清水は今季ホームで4分3敗、9試合勝利がなく、6試合で無得点ともがき苦しんでいる状態。FC東京とのJ1での対戦成績も11勝7分20敗と大きく負け越している。一方、FC東京も決して状態は良好ではないが、5連敗後は柏、G大阪に連勝してようやく状態を上げてきたと思われた。戦前はFC東京の攻撃を清水が如何に耐えるかという予想が少なくなかったが、蓋を開けてみれば清水が最後までハードワークを貫き、集中力を切らさずに3得点。そのうち2点はセットプレーでの得点と決して圧倒した感じではないが、シュートは14本(FC東京は5本)と推進力を途切れさせず。清水は今季初完封&ホーム初勝利で、ホームでは2008年以来13年ぶりにFC東京に勝利した。
ただ、序盤はFC東京ペース。安部に代わって東を先発起用し、高萩とのダブルボランチを形成する4-2-3-1の布陣で攻勢を強め、4分に内田が、9分に田川がそれぞれシュートを放つ。ともに清水GK・権田の正面で阻まれるが、支配率も6割強と得点の期待を抱かせる試合の入りだった。
清水はなかなか効果的な攻撃を作り出せなかったが、14分にFC東京陣内ゴール正面でパスを受けたエウシーニョが、FC東京のプレスのなかで強引にシュート。森重に当たったボールはFC東京GK・波多野が弾くも、こぼれ球にいち早く反応したチアゴ・サンタナが押し込んで、清水が先制した。
ワンチャンスをものにした清水だが、FC東京が攻撃を重ねていただけに、先制されるもその後3点を挙げて逆転勝利した昨季開幕戦のような展開を期待したFC東京サポーターも少なくなかっただろう。
だが、一つのアクシデントで試合は一変することになる。
25分に内田が中村慶太に倒されると、肩を押さえたまま倒れ込んだ内田は起き上がることが出来ず、29分に急遽中村拓海への交代を余儀なくされる。すると、特に中盤での攻防が激しくなり、消耗度の高い状況へ。激しいマッチアップが繰り返されるなかで、清水も次第に攻め手を重ね、5分が追加された前半のアディショナルタイムに、中村慶太の左CKからヴァウドが豪快なヘディングシュートを突き刺して、清水が3月21日の鹿島戦以来の複数得点を挙げる。
前半終了直前に追加点を奪われたFC東京は、まずは1点を返して流れを呼び戻すべく、後半開始と同時に高萩に代えて三田をピッチに送る。それまでの4-2-3-1の布陣を、田川とディエゴ・オリヴェイラの2トップによる4-4-2へと陣形を変えて、清水の4-4-2と相対する形に。だが、これが結果的に流れを断ち切るどころか、試合の流れを完全に渡してしまう悪手となってしまった。
それまでさまざまなスペースに顔を出しながらリンクマンとして奮闘してきた高萩を下げてしまったことで、ボールを動かせる軸を欠いてしまい、高く押し込みながらもシュートを決め切るまでにいかないと、中盤と最終ラインの間や背後のスペースを自由に使われ、後手となる状況に。清水は特に右サイドの片山、宮本、左SBの奥井がよく動き、前線のチアゴ・サンタナもボールを収める時間を作れるようになるなど、効果的な攻撃を演出。
47分に清水は中村慶太のFKからFC東京のクリアをエウシーニョがハーフボレー、そのこぼれ球に再びエウシーニョ、そのこぼれ球に鈴木唯人が立て続けにシュートして得点の匂いがし始めると、49分に中村慶太の右CKからエリア中央で片山がハーフバウンドをダイレクトで合わせて3得点目。片山は移籍後初ゴールとなった。
何とかしたいFC東京は、62分にアダイウトンを永井に、東を安部柊斗にスイッチして反撃を目論むも、時間が進むにつれて守備を固めてきた清水を打開出来ず。途中出場した中村拓海、三田はアクセントになりえず、アタッキングサードからスイッチを入れようとする時に精度を欠くパスミスをするなど、低調のまま。ディエゴ・オリヴェイラがボールを収めるためにボランチの位置まで下りてきてしまっては、前線の破壊力は半減。幾度もスプリントを掛け、シュート意識の高い田川を使いたかったが、組み立ては中村拓海と三田の右サイドに偏重し、田川へボールが繋がる回数も僅か。
アディショナルタイム突入前後にようやく安部柊斗が動くことで盛り返し始めるが、清水はしっかりとブロックを形成。FC東京はハーフコートでボールを回すものの、清水はシュート機会を与えず。終盤は疲労困憊の様子だった清水だが、ラストまで集中力を切らすことはなかった。
FC東京は対戦相手の自滅に助けられた部分も少なくなかった結果での連勝を勘違いした訳ではないだろうが、やはり味方同士で適切な距離を作れず、スペースを与えてしまうことで、後手に回ってしまった。その結果、ボランチの東への過大な負担となり、焦りを生んでパフォーマンスが悪化。後半は前でボールを散らせていた高萩が退いたことでより負担が増え、反応の鈍化に繋がった。安部柊斗に交代以降は若干その悪循環も解消されつつあったから、ボランチや中盤で適距離でコンパクトを保つことが肝要といえるが、90分通してそれを遂行出来ないと、本格的に復活と言えるまでにはまだ遠そうだ。
内田が好調だっただけに、中村拓海の出来がクローズアップされてしまうのは仕方ない。どうしても足元でボールをこねてパスを出すタイミングを逃して後方へ渡す場面が多いので見た目の印象は良くないが、一番は自分のストロングポイントを発揮出来ていないところ。攻め上がった際のクロスの精度に欠き、攻撃を完結させられないことで不用意な上下運動を繰り返す羽目になり、サイドで容易く相手選手の突破を許してしまう場面も。これも中村拓海個人というだけでなく、周囲との連係の問題が大きい。
そして、守備の際のポジショニングという意味ではGKの指示も不可欠。FC東京は今季複数失点はリーグ16試合中半分の8試合、そのうち3失点以上が5試合もある。単純にGKの差で勝敗が決する訳ではないが、波多野は11試合に先発し、7試合で複数失点、そのうち4試合で3失点を喰らっている。無失点は前節、前々節の2試合。かたや児玉は5試合に先発し、複数失点は4失点した川崎戦の1試合のみ。無失点も名古屋戦のスコアレスドロー1試合しかないが、川崎戦以外は1失点以下だ。波多野、児玉それぞれに長所と短所があり、失点数=GKの低パフォーマンスではないことはもちろん、相手が異なる上、単純比較は出来ないが、こういったデータを見ると、GKによるポジショニングの指示の影響も少しはあるのでは、と考察される数字ではある。
今後も連戦を含めて厳しい日程を乗り切るためには、誰が出場しようともチームとして同じようなパフォーマンスが出来るかが重要で、誰が良くて誰がダメだということではない。貪欲にゴールを奪うためにはどのように動くべきか、チーム全体で改めて身体に沁み込ませる作業を綿密に繰り返すことが必要だ。この2試合では良かった状態のプレイも少しずつ垣間見せていただけに、その芽を潰す“逆戻り”だけは避けたい。一つずつ課題を見据えながら、精度とシュートへの積極性を高め、90分間連係と集中を切らさないチームへの再構築を図らねばならない。
◇◇◇
【明治安田生命J1リーグ 第16節】
2021年5月26日(水)19:03試合開始 IAIスタジアム日本平
入場者数 4,919人
天候 曇 / 気温 19.3℃ / 湿度 63%
主審 谷本 涼 / 副審 堀越雅弘、竹田明弘
第4の審判員 吉田哲朗
VAR 清水勇人 / AVAR 野村 修
清 水 3(2-0 / 1-0)0 FC東京
得点:
(清)チアゴ・サンタナ(14分)、ヴァウド(45+3分)、片山瑛一(49分)
(東)
【FC東京】
≪スターティングメンバー≫
GK 13 波多野豪
DF 14 内田宅哉 → 中村拓海(29分)
DF 04 渡辺 剛
DF 03 森重真人
DF 06 小川諒也
MF 27 田川亨介
MF 21 青木拓矢
MF 10 東 慶悟 → 安部柊斗(62分)
MF 15 アダイウトン → 永井謙佑(62分)
MF 08 高萩洋次郎 → 三田啓貴(46分*)
FW 09 ディエゴ・オリヴェイラ
≪サブスティテューション≫
GK 01 児玉 剛
DF 22 中村拓海
DF 32 ジョアン・オマリ
MF 18 品田愛斗
MF 31 安部柊斗
MF 07 三田啓貴
FW 11 永井謙佑
≪監督≫
長谷川健太
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【2021 明治安田生命J1リーグ FC東京 試合日程】
第01節 02月27日(土)14:00 △FC東京 1-1 浦 和(A・埼 玉)
第02節 03月06日(土)14:00 〇FC東京 3-2 C大阪(H・味スタ)
第03節 03月10日(水)19:00 ✕FC東京 2-3 神 戸(H・味スタ)
第04節 03月14日(日)15:00 △FC東京 1-1 大 分(A・昭和電ド)
第05節 03月17日(水)19:00 〇FC東京 3-2 湘 南(H・味スタ)
第06節 03月21日(日)13:00 〇FC東京 2-1 仙 台(H・味スタ)
第07節 04月03日(土)14:00 △FC東京 0-0 名古屋(A・豊田ス)
第08節 04月07日(水)19:00 〇FC東京 2-1 札 幌(H・味スタ)
第09節 04月11日(日)14:00 ✕FC東京 2-4 川 崎(H・味スタ)
第10節 04月17日(土)14:00 ✕FC東京 0-1 福 岡(A・ベススタ)
第11節 04月24日(土)14:00 ✕FC東京 1-2 鳥 栖(H・味スタ)
第12節 05月01日(土)14:00 ✕FC東京 0-3 横浜FM(H・味スタ)
第13節 05月09日(日)14:00 ✕FC東京 0-3 鹿 島(A・カシマ)
第14節 05月15日(土)16:00 〇FC東京 4-0 柏 (A・三協F柏)
第15節 05月22日(土)19:00 〇FC東京 1-0 G大阪(H・味スタ)
第16節 05月26日(水)19:00 ✕FC東京 0-3 清 水(A・アイスタ)
第17節 05月30日(日)14:00 FC東京 vs 広 島(H・味スタ)
第18節 06月19日(土)18:00 FC東京 vs 横浜FC(A・ニッパツ)
第19節 06月23日(水)19:00 FC東京 vs 徳 島(A・鳴門大塚)
第20節 06月27日(日)19:00 FC東京 vs 大 分(H・味スタ)
第22節 07月11日(日)19:00 FC東京 vs 湘 南(A・レモンS)
第21節 07月21日(水)19:00 FC東京 vs C大阪(A・ヨドコウ)
第23節 08月09日(月)19:00 FC東京 vs 鳥 栖(A・駅スタ)
第24節 08月14日(土)14:00 FC東京 vs 札 幌(A・札幌ド)
第25節 08月21日(土)19:00 FC東京 vs G大阪(A・パナスタ)
第26節 08月25日(水)19:00 FC東京 vs 仙 台(A・ユアスタ)
第27節 08月28日(土)19:00 FC東京 vs 神 戸(A・ノエスタ)
第28節 09月11(土)・12(日) FC東京 vs 柏 (H・味スタ)
第29節 09月18(土)・19(日)・20(月) FC東京 vs 横浜FC(H・味スタ)
第30節 09月25(土)・26(日) FC東京 vs 浦 和(H・味スタ)
第31節 10月02(土)・03(日) FC東京 vs 川 崎(A・等々力)
第32節 10月16(土)・17(日) FC東京 vs 名古屋(H・味スタ)
第33節 10月23(土)・24(日) FC東京 vs 鹿 島(H・味スタ)
第34節 11月03日(水) FC東京 vs 清 水(H・味スタ)
第35節 11月06(土)・07(日) FC東京 vs 横浜FM(A・日産ス)
第36節 11月20日(土) FC東京 vs 徳 島(H・味スタ)
第37節 11月27日(土) FC東京 vs 広 島(A・Eスタ)
第38節 12月04日(土) FC東京 vs 福 岡(H・味スタ)
※第28節~第38節の日程詳細は、8月中旬に発表予定
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