春はセンバツから。出場校32校が紫紺の優勝旗に挑む。
3月18日より阪神甲子園球場にて開幕する第97回選抜高校野球大会の出場校が1月24日に発表され、一般選考29校、神宮大会枠1校、21世紀枠2校の計32校が決定。21世紀枠は東西からの枠はなくなり、全国から2校を選出する形。離島の壱岐(長崎)は大方の予想通り、もう1校は横浜清陵(神奈川)と公立校2校が選ばれた。ともに初出場となる。能登・石川地震の復興がなかなか進まないなか、小松工(石川)の予想も少なくなかったが、山城(京都)とともに補欠校に回った。
特にトピックとなったのは関東・東京地区と近畿地区か。関東・東京地区は6枠に加え、明治神宮大会で横浜(神奈川)が優勝し、神宮大会枠1が加えられ、7枠となっていた。明治神宮大会優勝の横浜をはじめ、秋季関東大会4強の残り3校、健大高崎(群馬)、千葉黎明(千葉)、浦和実(埼玉)と東京大会で優勝した二松学舎大附は順当に選出。残り2枠を関東大会8強組と東京大会準優勝の早稲田実とで争うことになった。
明治神宮大会では東京代表の二松学舎大附は2回戦で東洋大姫路(兵庫)に1-6で敗戦。その東洋大姫路に同大会準決勝で延長11回で横浜が3-1で勝利し、その後優勝を飾った。この点を考慮すると、関東勢を優位ととる向きもあるだろうが、選出を難しくしているのは、東京大会の決勝となった早稲田実と二松学舎大附が1点差の接戦だったこと。実力的にはほぼ変わらないだけに、差をつけることの方が難しい。
一方、関東大会では8強の東農大二(群馬)、つくば秀英(茨城)、山梨学院(山梨)、佐野日大(栃木)が対象。まず、準々決勝で健大高崎に3-10の7回コールドで敗れた佐野日大は脱落。横浜に0-2の接戦で敗れた東農大二、浦和実に0-2で敗れたつくば秀英、千葉黎明に2-5で敗れた山梨学院の3校が比較検討されたはずだ。
関東大会4強のうち、決勝に進んだ横浜、健大高崎と、優勝した横浜に準決勝で2-3と惜敗した浦和実はやや抜けているとして、着眼点の一つは準決勝で健大高崎に0-6で敗れた千葉黎明のブロック。そうなると千葉黎明に敗れた山梨学院は厳しそうだが、さらに難しくしているのは、関東大会1回戦にて山梨学院は東海大相模(神奈川)に延長10回6-5で勝利していること。東海大相模は秋季神奈川大会決勝で横浜に2-5とそれほど差はつかなかった。それを考えると、安易に山梨学院を外せないという判断となったか。
県での比較をしてみると、関東大会には、山梨からは山梨学院、帝京第三が出場。群馬からは健大高崎、東農大二、茨城からはつくば秀英、霞ケ浦がそれぞれ出場。このなかでは、健大高崎が準優勝、東農大二が横浜に惜敗という群馬勢が一歩リード。秋季茨城大会はつくば秀英が5-2で霞ケ浦を降したが、その霞ケ浦は関東大会1回戦で健大高崎に7回コールド0-9で敗戦したのが少なからず茨城の評価に影響を与えたかもしれない。
東京から早稲田実、関東から東農大二、つくば秀英、山梨学院から残り2枠を考えると、秋季東京大会優勝の二松学舎大附と差がない早稲田実を外してまで関東から2枠を選ぶというのはやや厳しい。直接的には関係ないとされるだろうが、21世紀枠で横浜清陵が選ばれているのを考えると、東京から1枠、関東から1枠は妥当な線ということになる。
最後の1枠となる神宮大会枠として、関東から選出するとなると、秋季群馬大会決勝でも1-5で敗れるも点差はそれほど離れていない東農大二を個人的には予想していた。だが、選考委員会によれば、山梨学院は、関東大会において一昨年まで3年連続で決勝進出と近年で群を抜く成績を残した上で、4年連続出場となる昨秋の関東大会では昨夏甲子園8強の東海大相模と延長10回で勝利したことが総合力の高さに繋がると評価。東農大二は東京の早稲田実との比較で、二松学舎大附に劣らない実力、昨夏甲子園で16強に進出した選手が多数いる経験値の高さを踏まえ、投手力、攻撃力、守備力を含めた総合力で早稲田実を選んだと説明。健大高崎にはやや劣るものの、関東大会準々決勝で横浜に惜敗した東農大二だったが、その横浜戦が無得点だったのに対し、山梨学院は同準々決勝で千葉黎明に敗れたことよりも、1回戦で東海大相模に勝利したことが大きなポイントとなったようだ。
もう一つのトピックとなる近畿は、大阪が選外となったこと。選抜から大阪勢が選出されなかったのは、1927年(昭和2年)以来98年ぶりと、約1世紀ぶりの“珍事”になった。近畿6枠のうち、秋季近畿大会4強の東洋大姫路(兵庫)、智辯和歌山(和歌山)、天理(奈良)、市立和歌山(和歌山)は順当に選出され、残り2枠は同大会8強の滋賀短大付(滋賀)、大阪学院大高(大阪)、立命館宇治(京都)、滋賀学園(滋賀)を中心に検討。この時点で大阪勢は、秋季近畿大会1回戦で滋賀短大付に1-4で敗れた履正社、同1回戦で滋賀学園に2-3で敗れた大阪桐蔭は絶望的に。8強進出校のうち、市立和歌山に0-10の6回コールドを喰らった立命館宇治がまず脱落。残る3校、滋賀短大付、滋賀学園の滋賀勢と大阪学院大高を比較し、大阪学院大高は近畿大会優勝の東洋大姫路に0-4とそれほど点差が広がらずの敗戦だったが、滋賀短大付は天理に1-4、滋賀学園が智辯和歌山に2-7と得点を獲っているのに対し、大阪学院大高は無得点だったのが痛かったか。また、近畿大会へは(滋賀勢が県大会1、2位なのに対し)大阪3位として出場したことも実力として加味されたのかもしれない。
と考えると、大阪選出0は、甲子園で数々の優勝校を輩出し、長らく高校野球界をリードしてきた強豪校ひしめく地域だっただけに、インパクトは大きいのかもしれないが、今回の選考としては順当といえるのではないだろうか。個人的には近畿は、6府県で6枠をあてがわれ、出場校数を鑑みてもやや割り当て数が多いのではと思われる地域なので、そこで4強へ進出とならないと、大阪勢といえども厳しい。
また、初出場となったのは、21世紀枠の壱岐、横浜清陵の2校と、浦和実、千葉黎明、滋賀短大付、エナジックスポーツ(沖縄)の4校を合わせた6校。いずれも春夏通じて初の甲子園となる。特に注目となるのが、沖縄県勢最速の創部3年目で選抜初出場を勝ち取ったエナジックスポーツ。医療・健康機器の開発メーカー「エナジックグループ」を創業した大城博成会長が理事長を務め、“世界へ翔く、トップアスリートの育成”を理念として、2021年に通信制で開校。2024年から全日制も設置された。野球部は開校の翌年に創部。浦添商を率いて夏の甲子園で初出場し4強入り、2014年に美里工を率いて選抜初出場へ導いた神谷嘉宗監督のもと、機動力を活かすための“ノーサイン野球”で勝ち上がってきた。その旋風が選抜でも花開くか、期待したいところだ。
◇◇◇
【第97回選抜高校野球大会 出場校】
〈21世紀枠〉
壱 岐 (長 崎) 初出場
横浜清陵 (神奈川) 初出場
〈北海道〉
東海大札幌(北海道) 10年ぶり7回目
〈東 北〉
聖光学院 (福 島) 3年ぶり7回目
青森山田 (青 森) 2年連続4回目
花巻東 (岩 手) 3年ぶり5回目
〈関 東〉
横 浜 (神奈川) 6年ぶり17回目
健大高崎 (群 馬) 3年連続8回目
浦和実 (埼 玉) 初出場
千葉黎明 (千 葉) 初出場
山梨学院 (山 梨) 4年連続8回目
〈東 京〉
二松学舎大附(東 京) 2年ぶり8回目
早稲田実 (東 京) 8年ぶり22回目
〈東 海〉
大垣日大 (岐 阜) 2年ぶり6回目
常葉大菊川(静 岡) 2年ぶり6回目
至学館 (愛 知) 8年ぶり2回目
〈北信越〉
敦賀気比 (福 井) 5年連続12回目
日本航空石川(石 川) 2年連続4回目
〈近 畿〉
東洋大姫路(兵 庫) 3年ぶり9回目
智辯和歌山(和歌山) 2年ぶり16回目
市和歌山 (和歌山) 3年ぶり9回目
天 理 (奈 良) 3年ぶり27回目
滋賀学園 (滋 賀) 8年ぶり3回目
滋賀短大付(滋 賀) 初出場
〈中 国〉
広島商 (広 島) 3年ぶり23回目
米子松蔭 (鳥 取) 33年ぶり2回目
〈四 国〉
明徳義塾 (高 知) 4年ぶり21回目
高松商 (香 川) 2年ぶり29回目
〈九 州〉
沖縄尚学 (沖 縄) 2年ぶり8回目
エナジックスポーツ(沖 縄) 初出場
柳ケ浦 (大 分) 20年ぶり3回目
西日本短大付(福 岡) 38年ぶり2回目
◇◇◇
【補欠校】
〈21世紀枠〉
山 城 (京 都)
小松工 (石 川)
〈北海道〉
北 海 (北海道)
〈東 北〉
山形中央 (山 形)
仙台育英 (宮 城)
〈関 東〉
東農大二 (群 馬)
つくば秀英(茨 城)
〈東 京〉
淑 徳 (東 京)
帝 京 (東 京)
〈東 海〉
岐阜第一 (岐 阜)
中京大中京(愛 知)
〈北信越〉
小松工 (石 川)
福井工大福井(福 井)
〈近 畿〉
大阪学院大高(大 阪)
立命館宇治(京 都)
〈中 国〉
岡山学芸館(岡 山)
矢 上 (島 根)
〈四 国〉
新 田 (愛 媛)
鳴門渦潮 (徳 島)
〈九 州〉
鹿児島実 (鹿児島)
有 明 (熊 本)
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