
好調神戸とアウェイでの対戦。神戸は鹿島から野沢と田代、G大阪から橋本と高木、さらには相馬、伊野波らが加入し、層・質ともにレヴェルアップした感がある。サッカースタイルも似ており、連戦で疲労が重なるなかで、どのようなパフォーマンスを見せるかが注目された。
FC東京は高橋と長谷川をボランチに配し、梶山をトップ下に、その左右に羽生と石川を置く布陣で難敵に立ち向かった。
前半32分、石川から梶山へ展開し梶山がタメた後にルーカスへ流すとルーカスがゴール前を横切るグラウンダーの高速クロスに逆サイドから来た石川が的確に合わせGK右の狭い場所をすり抜けるゴールで先制。さらに終了間際、権田からのフィードを渡邉が相手DFとの競り合いに勝ってドリブル前進、そのまま相手GKの股下を通り抜ける低い弾道のシュートが決まり2-0でFC東京がアウェイ戦に勝利した。
とはいえ、内容的にはボールを支配した時間帯もあったが、神戸が攻勢を続ける中でのカウンターでの薄氷の勝利という印象があるかもしれない。だが、スタッツを見てみると、コーナーキック数こそ神戸の8に対してFC東京は2しかないが、シュート数は同数の8、直接FKは神戸の17に対して18とほぼ互角だ。内容こそ神戸にセカンドボールを奪われる場面が多く、分厚い攻撃を受けたが、シュートは思ったほど打たせていない。
これを別の角度から考えてみると、ゴール前やエリアまでは主導権を握ってボールを支配しているのに、ゴールが奪えないというのは、神戸側から見れば、これまでの東京の試合や先日のACL・蔚山現代との引き分けとの試合で語られたものと似てはいないか。“勝負で勝って、試合に負けた”と結論付けるのは容易い。だが、内容が良くなくとも結果を残すということも大事だ。野球で言うならば、今日は球速や制球を含めて調子が良くないが、悪いながらも要所を抑え、勝利へ貢献する投手のように、悪いながらも最後の壁は破らせない勝負強さや粘りが活きた試合だったのではないか。
今季好調の石川の的確なゴールと終了間際の渡邉の競り合いの強さが生んだダメ押し弾という決定力が試合の優劣を決したのは確かだが、そこへ至るまでの最後にゴールを割らせない粘り強さと集中力が垣間見られた試合だったともいえる。
もちろん、自分たちのサッカースタイルを貫けなかったという点においては、納得どころか不満な箇所も多くある。だが、苦しみながらも勝点3を奪える勝負根性が備わってきているという成長力は、今後さらに厳しい試合が続く中で、有益なものだといっていい。
試合では梶山がアクシデントで交代、長谷川がカード2枚で退場処分と負の部分もみえた。最初の石川の得点を生み出した流れのなかでの梶山のルーカスへの“タメ”を作ってのパスなど、梶山の存在は大きい。また、長谷川も先発、途中出場ともに状況を変えられるピースとして効果的だっただけに、次節の試合で出場出来ないとなると、難しい場面も少なくないだろう。
そのようななかで、現在サブやベンチ外の選手たちがどのようにチームの活性力となるか、そこが次の焦点となるだろう。
内容は今季最悪ともいえるが、そこからどのように修正してくるか。しっかりと反省点や課題を突き詰めて、次へ向けて切磋琢磨してもらいたい。
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<J1 第3節>
2012/03/24 ホームズスタジアム神戸
神戸 0(0-1、0-1)2 FC東京
【得点】
(東):石川(32分)、渡邉(90+6分)
【退場】
(東):長谷川(86分)
観衆:11,839人
天候:晴、中風
気温:12.4度
≪MEMBER≫
GK 20 権田修一
DF 02 徳永悠平
DF 03 森重真人
DF 05 加賀健一
DF 06 太田宏介
MF 04 高橋秀人
MF 08 長谷川アーリアジャスール
MF 18 石川直宏 → DF 33 椋原健太(77分)
MF 10 梶山陽平 → MF 39 谷澤達也(46+分)
MF 22 羽生直剛 → FW 11 渡邉千真(71分)
FW 49 ルーカス
GK 01 塩田仁史
MF 07 米本拓司
MF 27 田邉草民
FW 13 平山相太
監督 ランコ・ポポヴィッチ
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石川と渡邉のゴールシーン。
終了直前、大久保のエリア内での微妙なプレイから渡邉のゴール、試合終了まで。
微妙だけど、PKになるかは(その判断の正誤を除いて)レフェリー次第のプレイだったと思う。東京寄りに見ればファウルには当たらないし、神戸寄りに見ればファウルにとってもいいという。フジゼロックススーパーカップで森重にファウルを与えた主審だったら、ファウルをとっていたかもしれない。

