眠れない長い夜に寄り添う時のEspecia。
令和の時代が幕開けようとも、もどかしく、やるせなく、寝付けない夜はやってくる。そんな倦怠が覆うような夜をやり過ごすため、Especiaの楽曲を聴いてみる……という選択肢を加えてみるのはいかがでしょう。解散から2年が過ぎようとも色褪せることのないEspeciaの楽曲。そのなかから〈smooth groove only for lovers〉と題し、アダルトなムードを帯びたラヴ・ソングを中心に10曲をピックアップ。もし、微かな微睡みや気怠さと幾ばくかの興奮が混ざり合う夜を過ごしているのなら、きっと心地よい空間へと移ろうささやかなアクセントになってくれるはず。The night is still young...…夜は長いと感じた時には、耳を傾けてみてください。
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【Affair】
Especia第2章時代の全編英語詞によるミディアム・チューン。落ち着きを装いながらもやや急いた感情を吐露した“I wanna go, I wanna go”のコーラスが、フックのセンチメンタリズムの高鳴りと巧くリンクしている。
【BayBlues】
1stアルバム『GUSTO』に収録。発表当初は、ロストラヴを歌うには情緒が足らない彼女らが大人のムードを醸し出して歌うというギャップも“ウケ”の一つだったが、楽曲自体はベタな泣きのサックスを絡めたムーディなフュージョン系ポップス。
【センシュアルゲーム】
2ndヴァースの“背伸びして纏った 甘い香り”よろしく背伸び感を感じる初期のジャズ・ポップス調のナンバー。サックスソロによる煌びやかなアレンジが、アーバンな夜のラヴアフェアをより演出する。EP『AMARGA -Noche-』に収録。
【X・O】
“X・O”とは“Extla Old”のことだったか。貯蔵年数の長いブランデーの等級名を冠し、文字通り酒と愛する人に“酔う”心境を吐露。中盤に妖艶なサックスとともにダンスパートも配しながら、女々しく縋る女を描く。時代感とメンバーのキャラクターを全く無視した展開が、かえって耳目を集めさせる好例に。
【雨のパーラー S&L Remix】
雨というテーマは夜やムーディなコンセプトによく似合うが、このミディアムもその一つ。オリジナルもいいが、ここではスタイリッシュなジャズ・アレンジが奏功したシュテイン&ロンガーによるリミックスを。セピア色に褪せていく思い出をやり過ごそうとする憂いの心情がゆっくりと染みるように伝わってくる。ヴィデオではアウトロで冨永悠香のフェイクも。
【L'elisir d'amore】
タイトルは『愛の妙薬』の名で知られるガエターノ・ドニゼッティ作曲の喜劇的オペラと同じだが、こちらは恋に酔いたい若き淑女の満たされない夜を歌う。ポエトリーリーディング風の中盤を組み込んだのは、前述のオペラ風構成をなぞらえたか。メランコリックに展開するアダルトなラヴアフェア。
【Nothing】
「Affair」同様に第2章時代に発表。アーバンメロウなホーンが時折挿入されるが、波音が激しく立たないトラックのなかで夜を際立たせるには、ホーンの音色は効果絶大。色香を増した冨永悠香のヴォーカルとの相性も良く、比較的平穏な展開ながらも、余韻を残すスルメ的な楽曲ともいえる。夜の喧騒から離れたシチュエーションに合いそう。
【Boogie Aroma Reverse Turbo Edit】
さまざまなリミックス曲を有するEspeciaだが、本曲はメジャー初シングル「Aviator / Boogie Aroma」4形態同時購入者対象の先着限定特典となったリミックスCDに収録されたPellyColoによるリミックス。エフェクト使いでヴォーカルを野太くしてしまっているが、過不足ない爽快さとリズミカルなトラックによってそれをしっかりとカヴァー。粋な夜遊びや夜明け間近に、よいムードを演出しそう。
※ 追記
「UKOがデモで歌ったヴァージョンをスクリュードしたもので、ペリコロmixではない可能性大」とのこと(cozy tさん)
※ Sorry. There is nothing in the video.
【West Philly】
Rillsoulによる“黒”系のミッド。フィリーと冠しているが、作風はどちらかといえばブルース調に寄せているソウル・ジャズといったところで、ウェットな仕上がり。リアルとフェイクの狭間で揺れる恋心をテーマにしている。後半の“It's faking love”のシャウトが情動を揺るがす。EP『Primera』に収録。
【Rittenhouse Square】
“Rittenhouse Square”(リッテンハウス・スクエア)とは米・フィラデルフィアにあるパブリックパーク(公園一帯)の名で、「West Philly」と同じくフィラデルフィアやデトロイトに影響を受けるRillsoulが制作。「West Philly」よりもソウル濃度は高く、スタイリスティックスやスピナーズ、デルフォニックスあたりのソウル・クラシックスのマナーに触れながらマイナー調で描いている。2ndアルバム『CARTA』収録の、Especiaソウル・トラックの最高峰。
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