



Jリーグ最終節、ジェフユナイテッド市原・千葉×FC東京@フクダ電子アリーナの試合に参戦してきた。早い段階でチケットが完売していることもあり、一般入場の12:30あたりを目指して蘇我へ。千葉サポはもちろん、東京サポの出足もかなり早く、フクアリグルメが飛ぶように売れているとの情報を聞き、とりあえず、蘇我駅の店舗で“JEF勝つカレー”を食して(相手を食って)、肌寒い風が吹く中、フクアリへと向かった。
まず、試合終了後の気持ちを吐露するとすれば、とても情けない、屈辱的なことであった。それは残留に瀕死的状況だった千葉に約10分の間に4失点をしたから、ではない。ACL出場圏を獲得するリーグ3位以内を目指すチームとしては、当初から東京の課題として突きつけられていた精神的未熟をあまりにも解かりやすい形で吐露してしまったからだ。油断、気の緩み、そして劣勢に立たされた時に必ずといっていいほど訪れる意気消沈ムード。技術的以上に東京というチームをこれほどまでに落胆させるのは、得点直後早い時間での失点を重ねることであり、雪崩のように崩れていく勝利へのモチベーションだったからだ。それが最終節の大事な部分、いや2-0でリードしさらに一気呵成にあったあの状態からは考えられない、そうさせてはならない形となってあらわれ、千葉の勝利をアシストしてしまった。
前半の内容、特に千葉のサッカーは残留を何としてでも掴み取りたいというチームとしては、それ権利を得るに値しないほどの内容だった。チーム編成がフィットしなかった、空回りしていた、だけでは語れないほどの気概のなさが露呈していた。東京もずば抜けて褒められた内容ではなく、前半の中盤までは両チームとも得点の臭いがしなかったが、鈴木達のサイドからの突破など千葉陣内への攻撃を重ねるうちにCKを獲得し、セットプレーからカボレが先制して前半を終了した。
後がない千葉だが、後半の入りも東京がペースを掴む。千葉はミシェウよりも低い位置にいることが多かったレイナウドから巻へのセンタリングくらいしか攻撃の糸口がなく、レイナウドがボールを持つとサッとディフェンスが2人対応してつぶすことが徹底されており、危ない場面はほとんど作らせていなかった。そうしたなかで、ゴール前に切れ込んだ長友の素晴らしいミドルで千葉を絶望の底へ落とす2点目を追加した。前半歯がゆかった攻撃もその勢いとともに質的向上がみられるようになり、引導を渡す3点目はもうあと僅かなところまで来ていた。後半から、羽生のポストを叩いたシュート、カボレのふかしたシュートなど、決定的な場面をことごとく外した東京。それでも千葉の劣勢は変わらなかった。巻の渾身のランニングが切なさを見せていたくらいだった。
それが、新居と谷澤の投入でガラリと変わった。個人的には今の千葉にとっては谷澤は攻撃の生命線として最も重要な選手だと思っていたので、この大一番にミラー監督がなぜ谷澤をスタメンから外したのかが解からなかった。そして気持ちという意味ではそれを全面に出し、周囲を鼓舞するのに相応しい選手が新居だ。
早速、新居が1点差に近づくゴールを決めると、俄然千葉に勢いが出始めた。ただ、それでも東京としてはしっかりと現状を把握し、ゲームプランを立てられていれば、それほど慌てることなく、少なくとも負けるといった結果はなかったはずだ。そこにはいつでも3点目が獲れる、この試合はもうもらったという驕りがあった。死に物狂いで勝ちを欲している相手に対して、絶対見せてはいけない時にそれを見せてしまった。そして予期していない出来事がピッチ上で重なるにつれてコントロールを失い、パニックとなってしまう。しっかりと守るか、さらに突き放す1点を獲りに行くのか中途半端なまま東京は前がかりとなり、戦前に千葉が欲していたカウンターを出しやすい形になると、谷澤の同点ゴールを生んでしまう。さらに、コントロールが利かないディフェンスが続き、今野が痛恨のPKを与えてしまう。今季の今野は歯車が狂ったまま、一年を終えてしまった感じだ。
レイナウドが冷静にPKを決め千葉が逆転すると、レイナウドはユニフォームを脱いではしゃぎ、イエロー。この時でさえ、東京がここからまたさらに勝ち越すということは容易ではないと思われたが、同点には出来る状態ではあった。後半18分の大竹に続き、逆転された直後に近藤を投入するも千葉の勢いは加速するばかり。その後の平山の投入も含め、交替が効果的とならずに、谷澤に中央突破を許して4点目を献上してしまった。僅か10分間で4失点。これはACLや優勝争いをしていこうというチームとしてはあってはならないことだ。逆に言えば、劣勢時に立て直せず、パニックに陥ってしまう現状があるうちは、その時の展開に大きく左右される不安定な実力から脱し切れていないチーム、ということになるだろう。常に上位や優勝を争ってきたチーム、今季で言えば優勝した鹿島などは、劣勢でもパニックに陥らない、芯を持っている。最終節に3位以内の望みがある位置にいた東京だが、ACL出場を決定したチームとは、そこに目に見えない大きな壁が立ちはだかっていると思う。東京はまだまだ発展途上のチームということだ。
ただ、この経験を活かし、今年はまだ天皇杯も残っている。劇的なチーム内変化がない限り、天皇杯の頂点へ立つことはかなり難しいとは思うが、少しでも今日の試合を教訓にして、精神的に向上した姿を見せてもらえればと思う。
この試合を総括するとなると、良くも悪くも千葉から移籍した羽生がキーポイントとなってしまった。東京は羽生を交替させてから失点を重ねる結果となった。ゴール前での決定的なチャンスが何度もあったが、そこで決められなかった、引導を渡せなかったこともあるだろう。この詰めの甘さが大きな痛手となることを、東京は肝に銘じていかなければならない。常時優勝を狙えるような質の高いチームとなるために。
そして、素晴らしいことは、ミラー監督の采配が的中したということではなく、千葉サポーターの、最後まで諦めず、どんな結果が待ち受けていようと最後の笛が鳴るまでは90分間を共に戦い抜くんだという強い気持ちが、千葉の選手やグラウンドの空気を一変させたということである。特に、1点失った前半を終えたハーフタイムでの“Win By All”の大声援はこの試合への活力をもたらした。通常なら東京の羽生コールに対してブーイングで迎えるのだろうが、この日は“Win By All”を貫いた。東京が2点目を決めたとき、千葉の選手にも一瞬“終焉”の文字が浮かんだことは想像に難くない。ジェフ・サポーターも唖然としただろう。同じような気持ちを持った人も多かったはずだ。だが、初心に立ち戻り、絶望から脱却するのに時間をかけなかった。そして、最後まで共に走り抜く戦い抜くことをピッチ上の選手たちに教えたジェフ・サポーターによって感化された選手たちが、ドラマティックという言葉では陳腐過ぎるほどの奇跡的な勝利を掴んだのだ。そう、この会場で最も“戦う覚悟は出来ていた”のは、フクアリを黄色に染め上げたジェフ・サポーターだったのだ。それがさらにヴェルディの敗戦と磐田の敗戦を呼び込み、一気に残留確定の奇跡を生んだのだから、気持ちというものがいかに大切かということだ。
東京は結果として清水にも抜かれ6位でシーズンを終えた。勝負事であるから望んでいない結果はある。ただ、最後の最後で(しかも僅か10分間で)納得出来ない試合へと激変してしまった内容でシーズンを終えてしまうのは、非常に屈辱的だし、情けなかった。この何ともいえない虚脱感を拭い去るためにも、天皇杯では強い気概を見せて欲しいものだ。
◇◇◇
千葉 4(0-1、4-1)2 FC東京
【得点】
(千): 新居(後半29分)、谷澤(後半32分)、レイナウド(後半35分)、谷澤(後半40分)
(東): カボレ(前半39分)、長友(後半8分)
≪スターティングイレヴン≫
GK 01 塩田仁史
DF 25 徳永悠平
DF 03 佐原秀樹
DF 02 茂庭照幸
DF 05 長友佑都
MF 07 浅利悟 (→後半41分、平山)
MF 06 今野泰幸
MF 22 羽生直剛 (→後半18分、大竹)
MF 40 鈴木達也 (→後半36分、近藤)
FW 09 カボレ
FW 24 赤嶺真吾
≪サブ≫
GK 31 荻晃太
DF 08 藤山竜仁
MF 17 金沢浄
MF 20 川口信男
MF 30 大竹洋平
FW 13 平山相太
FW 32 近藤祐介