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*** june typhoon tokyo ***

Lalah Hathaway@BLUENOTE TOKYO


 振り袖姿でも魅せた、一足早いスムーズ&メロウなクリスマス。

 3年連続グラミー・ウィナーとなったレイラ・ハサウェイのブルーノート東京公演。昨年は12月23日から3日間とまさにクリスマス・ナイトとなった公演だったが、2016年は2週間ほど早めの12月上旬に開催となった。メンバーはキーボードがリネット・ウィリアムズ(ドレッドヘア、鼻ピアス、ダークな色のリップの大柄な黒人女性)、ステージ右端のドラムがチャールズ・ストリーター(ハット帽姿もイケてる、トリー・ケリー、ジェニファー・ロペス、チャカ・カーン、ジャクソンズ、ステファニー・ミルズなどのツアードラマー)となったほかは、ジェイソン・モラレス、デニス・クラークの背丈のある男性ヴォーカル二人に、ギターのイザイア・シャーキー(ディアンジェロ&ザ・ヴァンガードのギタリスト)、ベースのエリック・スミス(サマソニでリアーナのバンドに参加)というお馴染みの面々。誰もがタレントの持ち主で、イザイア・シャーキーの長尺ギター・ソロの独壇場も会場を大いに沸かせたが、個人的には強烈な漆黒のファットなグルーヴを生み出しながらも決して耳障りにならないエリック・スミスのベースにも存分に唸らされていた。

 まず、観客を驚かせたのが登場時。メンバーにやや遅れてステージにやってくる姿は、なんと振り袖姿。藤色(黒めの紺?)を下地に薄い白桃色などを内側にあしらった大きな花が描かれたヴィヴィッドな着物姿に早速感嘆の声が漏れる。これが実にキュートな艶姿で、レイラ本人もかなりお気に入りの様子。普段はドレスに裸足で歌う彼女だが、この日は草履で登場。ただし、ステージではその草履を脱ぎ、足袋のまま歌っていた。

 次なるサプライズは終盤の「サムシング」(スナーキー・パピー feat.レイラ・ハサウェイ名義でグラミーのベストR&Bパフォーマンス受賞)でトランペッターのTOKUが登場。単にバックでホーンを鳴らすだけでなく、ステージインやおら挨拶もそこそこにレイラとのスキャットの掛け合いに。低音から高音までを駆使しながら麗しいスキャットを鳥のさえずりのごとく発するレイラに、渋くも優しいスキャットで応えるTOKU。レイラが“この着物姿どう? 綺麗でしょう”と言わんばかりにしゃなりと背帯を見せつければ、TOKUがソバを食べるジェスチャーをしながらスキャットで応えたりと、愉しげな“会話”が展開する微笑ましいステージに、多くの観客が心をほっこりとさせた。

 序盤で繰り出された「リトル・ゲットー・ボーイ」やアンコールラストで披露した「ディス・クリスマス」など、父ダニーの名曲を歌うことも充分なサプライズに当たるとは思うが、もはやそれが大事でなくなっていると見えてしまうところが彼女の自立や矜持でもあり、また父(との楽曲)に自然体で接するという形でのリスペクトなのだろう。以前はかたくなに歌わなかった父の曲も、気持ちが変化し歌う(歌える)ようになってからは、いっそう歌うことへの余裕や懐の深さが増したといえる。

 昨年のセットリストを見返したところ、ほとんど大きな変化はなし。一つ挙げられるとすれば、ファレル・ウィリアムスと共演した「サレンダー」がトピックとなるか。タラジ・P・ヘンソンやジャネル・モネイが出演する2017年1月全米公開映画『ヒドゥン・フィギュアーズ(Hidden Figures)』のファレル・ウィリアムス監修のサントラにレイラ・ハサウェイ&ファレル・ウィリアムス名義で収録された曲で、ファレルとのコラボレーションということで今回の公演では披露する可能性は低いだろうとあまり期待はしていなかったのだが、ファンのニーズを捉えてか、セットリストに組み込んでくれたようだ。

 それでも、父ダニーの楽曲をはじめ、アニタ・ベイカーの「エンジェル」、アース・ウインド&ファイア「ラヴズ・ホリデイ」、低音のコール&レスポンスでコミュニケーションしたルーサー・ヴァンドロス「フォーエヴァー・フォー・オールウェイズ・フォー・ラヴ」など、ほとんどがカヴァー曲での構成。とはいえ、イザイア・シャーキーのギター・ソロほか、バンド・メンバーのソロ・パートなどを含めながら、カヴァーという意識を感じさせない多彩なアレンジワークで時をゆっくりと、そして濃密でスムース&メロウな空間を創り上げていく(ボッサやクラブ寄り風のビート/リズムのイントロを導入したアレンジの「サマータイム」などは、一聴してそれと判らず)。
 そして何よりも代え難いのは、レイラのヴォーカルワークだ。安定感はもちろんのこと、他の黒人ヴォーカリストには出せないローヴォイスをしとやかな表情で弾き出していく。派手なシャウトは一切なし。フロアを日向のようなやわらかな空気で包みながら、ひらひらと蝶が舞うがごとくの気品を漂わせる。それでいてチラリとファンキーなノリも垣間見せたりして、そのバランス具合の絶妙なことといったらない。

 最も大きいのは、カヴァーであれオリジナルであれ、一瞬にしてレイラの歌にしてしまっているところか。それも、単に我流でカヴァーするのではなく、オリジナルや歌い継いできた先達たちに尊敬の念を払いながら、自身の歌として魂を宿しているところが素晴らしい。敏腕なるバックバンドが色を足すことで、さらなる深化がもたらされるところもステージの濃度を高めている。

 激しく身体を揺らし叫ぶことはなく、薪を燃やした炎が揺らぐかのごとくゆるやかに流れるステージ。だが、その炎の熱度は見た目以上に高く、情熱的だ。オーディエンスの心に魂(ソウル)の炎を灯していくかのよう……そう感じられるひとときを今年も再びクリスマスの月に体感した。その喜びを、いま一度噛み締めたいと思う。


◇◇◇

 レイラ・ハサウェイ関連の公演記事は次のとおり。
2012/01/07 LALAH HATHAWAY@BLUENOTE TOKYO
2013/01/25 Robert Glasper Experiment@Billboard Live TOKYO
2015/12/25 Lalah Hathaway@BLUENOTE TOKYO

◇◇◇
 
<SET LIST>
01 Let Go
02 Little Ghetto Boy(Original by Donny Hathaway)
03 Summertime(Original by George Gershwin, Also known as singing such as Billy Holiday)
04 Angel(Original by Anita Baker)
05 Love's Holiday(Original by Earth, Wind & Fire)
06 My Heart Is Yearning For Your Love(Original by The Gap Band)
07 When Your Life Was Low(Original by Joe Sample & Lalah Hathaway)
08 Forever, For Always, For Love(Original by Luther Vandross)
09 Surrender(Original by Pharrell Williams feat. Lalah Hathaway)  
10 It's Something!(Original by Brenda Russell)(Special guest with TOKU)
≪ENCORE≫
11 The Christmas Song -Merry Christmas to You-(Chestnuts Roasting On An Open Fire)(with Isaiah Sharkey's guitar)
12 This Christmas(Original by Donny Hathaway)

<MEMBER>
Lalah Hathaway(vo)

Jason Morales(vo)
Dennis Clark(vo)
Lynette Williams(key)
Isaiah Sharkey(g)
Eric Smith(b)
Charles Streeter(ds)

Special Guest:TOKU(tp,vo)

So beautiful!“Cho Kawaiiiiiii”!!!!!!!


◇◇◇


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コメント一覧

野球狂。
それだけ“E”(いい!)ってことで!
http://blog.goo.ne.jp/jt_tokyo
レイラはもう風格というか、一人のアーティストとしてしっかり立っていると思うのですが、そういえば、最近妹のケニヤはどうしてるんでしょうかねー。来日公演あったのですが、行けなくて、それ以来音沙汰なしっぽいので…。

自分もよく「てにをは」間違えたりしてるので、誤字脱字あったらご指摘ください!
Hide Groove
Eが1つ多かった…😰
レイラの1st.今でもよく聴いています。
1stを購入したすぐ後にソウルトレインにレイラが出演したのを観て、父親の七光りだけでは終わらないだろうと感じたのを思い出しました。

スペルまた間違えてました。Eが1つ多かった…😰
野球狂。さんは長文でも誤字がないから、恥ずかしい😓
野球狂。
レイラ良かったデス!
http://blog.goo.ne.jp/jt_tokyo
Hide Grooveさん、コメントありがとうございます。

レイラはやっぱりあの低音ヴォイスがたまらないですね。そこからスキャットやフェイクでヴォーカルの魅力を感じさせてくれます。

> ファーストアルバムしか持ってません
1枚目から注目していたってことですよね? さすがです(笑)
> 近い将来レイラはソウルトレインアワードの司会を務めるような存在になるんじゃないか
ああー、そう言われるとそんな気もしてきました。雰囲気も合いそうですし!


Hide Groove
髪三センチ伸びました
野球狂。さん、こんばんは!
いいなぁ~、レイラハザウェイ行きたかったんだよ😁
実はファーストアルバムしか持ってません。当時のUKSoundにハスキーなボーカルが絡んだ、『HEEAVEN KNOWS』今でもヘビーローテーションですよ🎵

野球狂。さん、近い将来レイラはソウルトレインアワードの司会を務めるような存在になるんじゃないかと、思うのです。

あのザラついた感のあるボーカルは魔力です。
低音の響きは、実際に生で聴いたら凄いだろうな。
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