※ トップにも記載してありますが、記事にはライヴの内容に触れる箇所がありますので(要するに“ネタバレ”)、自己責任のもとで閲覧してください。
(“知らない方がいいのかもね~”(by「スパイス」)と思う人は、別のページへ)
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トライアングルの可能性。
Perfumeのアルバム『JPN』を引っ提げてのツアー“キリンチューハイ 氷結 Presents Perfume 3rd Tour「JPN」”のさいたまスーパーアリーナ公演を観賞。2デイズのうちの初日。開演時刻の40分以上前に到着するも、さいたま新都心駅周辺は既に人、人、人。かなり寒さで凍えるなか、足元の露出が多めのPerfumeコスチュームで臨む人もチラホラと見かけた。グッズなどのブースにもかなりの行列。いまだ衰えを知らないその人気ぶりを入場前に体感しながら、会場へと向かった。
Perfumeのライヴは2008年の日本武道館公演“エスキモー pino presents Perfume NIPPON BUDOKAN ONE-MAN LIVE BUDOUKaaaaaaaaaaN!!!!!”(その時の記事はこちら)以来の観賞となる。あれからどのような進化を遂げているか、興味を持って開演を待つことになった。今回はステージからは一番遠い400レヴェルの席だったが、ほぼステージ正面という全体を俯瞰するには絶好のポジション。ステージの左右上方に加え、天井からも吊るされたスクリーンによって、通常より客席を広げたというアリーナ全方位に対応する環境を整えていた。
定刻からやや15分弱遅れて場内が暗転、「The Opening」のゆったりとした空間を生む静かなサウンドをバックに3人がそれぞれ距離を置いて階段を降りてくる。それぞれの顔にライトが当たり表情が窺えると、それまで息を呑んで一挙手一投足に目を凝らしていた観客から歓声が沸き、「レーザービーム」のイントロが流れるとそのヴォルテージもさらに上昇した。場内にはタイトルよろしくレーザービームが飛び交い、視覚からも興奮を高めていく。
Perfumeの醍醐味とは何か。一つはサウンドの革新性。一つは独創的なダンス・パフォーマンス。また、アイドル的な要素もあり、さらにはファンとの親和性も挙げられるだろう。そして、ライヴではそれらが融合・化学変化を起こしたエンタテインメントとなる。このエンタテインメント性の高さが、ファンを惹き付ける、人気の高さに繋がっているのだと思う。この日も日本人アーティストとしては久しくなかった通常のエンドステージとは異なる座席配置により座席数を拡大、その座席もほとんど埋まるという状態だ。中田ヤスタカという気鋭のクリエイターとガッチリとタッグを組んだPerfumeは、予想以上の高度で安定飛行を続けている。
アルバム『JPN』収録曲を中心に組んだ今回のツアー、個人的な大きな注目度は2つ。前回観賞した日本武道館公演で感じた3人の距離感の近さを、国内でも大規模な会場でどのように調整してステージを大きく使えるか。もう一つはライヴのトータルとしての完成度だ。
一つめの「ステージを大きく使えるか」というのは、前回の武道館公演で一糸乱れぬダンスを披露しているのに、3人の間隔が近くてややステージ中央に集まり過ぎて、こじんまりとした印象を受けたからだ。この日は本ステージから中央に一本花道が敷かれ、さらにその花道の先頭が「T」字路のようになり左右に花道が延びて、左、中央、右それぞれに一人ずつが立ってパフォーマンス出来る形に。実際にその花道ステージで行なわれた楽曲は多く、アリーナ前列以上にアリーナ中央席の方が得をしたのではないかと思えるくらいだった。しっかりとスタンド、アリーナともに距離を縮める構成は、ファンには嬉しいと同時に、そのステージのスケール体感を大きなものにしたのではないか。花道で3人それぞれが離れている時には一人にフォーカスし、3人が集まっての隊形の時には3人ならではで繰り出されるダンス・パフォーマンスがフォーカスされるという風に。たとえば、メンバーそれぞれの名前をコールする定番曲「ジェニーはご機嫌ななめ」では、のっちが左サイドを向き、あ~ちゃんがセンター、かしゆかが右サイドを向き、アリーナの温度差がないように盛り上げる。一方、「ねぇ」では3人が中央に集まり、3人の驚異的なステップを披露。カメラのアングルも高速でシンクロする3人のステップをアップで捉えると、会場のあちらこちらで歓声が上がっていた。このような大規模なアリーナでも温度差をほとんど感じさせずに巻き込むパフォーマンス力は、見事という他ない。
二つめの「ライヴトータルとしての完成度」について。前回のライヴ・レポートで「ステージにはバンドもいないし、そもそもヴォコーダーやハーモナイザーを駆使したヴォーカル・ワークとピッチシフトを多様したサウンドであるから、ライヴ・バンド・スタイル的な“生”の音は、当たり前だがほとんど存在しない。だが、究極のリップシンク・エンターテインメントとしての“生”感には圧倒されるものがある」と書いたのだが、その考えは変わらない。Perfumeのライヴは“リップシンク・エンタテインメント”として、ダンス、映像、サウンドなどさまざまな要素がどのように演出されるのかが非常に大切なものとなってくる。その1つが欠けてもバランスが崩れてしまうのだ。
その意味では、多少気になったのが映像と音との僅かなズレを感じたこと。これは自分の座席位置、スタンド最後方という条件だからかもしれないが、当然最も遠いメインステージでパフォーマンスしている時は、天井から吊るされたモニターに目が行くことが多い。そのモニターで彼女らの歌う表情がアップとなると、聴こえてくる音と口の動きがほんの僅かにズレているように感じた時があったのだ。もちろん、これは重箱の隅をつつくようなことだとは思っているが、リップシンクと理解しているとはいえ、このあたりが完璧だったら……と思えたのも事実だ。
また、これは一長一短だろうが、MCが少々冗長過ぎることだ。開演から5曲(そのうち1曲はイントロダクションだから、事実上4曲)を終えてMCへと流れたのだが、そのMCが終わった時は19時。つまり、30分くらいはトークしていたということになる。この時は花道を歩きながらファンへ声をかけたり、ファンのコスチュームなどについて話したりする、ファンを大切にする彼女ららしい交流の時間で、それを楽しみにしているファンも多いだろう。その気持ちはよく解かる。次のMCでもシリアスなことについてもコメントしたが、ややまとまりがないメッセージとなってしまった。決められたセリフをいうのではなく、その場での素直な気持ちを自分の言葉で発する……というのはとても素晴らしいことだし、ファンにもダイレクトに伝わるメッセージになると思う。だが、ライヴのトータルとしての完成度を高めるには、もう少々MCをコンパクトにしてスムースな構成をしてもらえたら、とは思う。
というのも、彼女らのライヴがさらに高いレヴェルへと上昇する可能性を大いに持っていると思うからこそなのだ。それを感じたのは、このライヴでの一番のポイントと思われる、中盤に据えられた当ライヴのために用意された中田ヤスタカのインスト・ナンバーだ(ここでは勝手に「Theme of JPN」と名づけさせてもらった)。
中田ヤスタカの硬質なビート・サウンドに乗せて、ステージ後方のスクリーンが呼応していく。それまで多角形でデザインされていた背景が、次第にいつくかの三角形を作り出し、一つの大きな三角形の輪郭を浮かび上がらせる。その三角形の中では、小さな三角形がストロボ的に映し出されるなかで縦横無尽に飛び交い、さらには、バーチャファイターのようにメンバーがバトルを繰り広げていくCG映像が展開される。3人の顔それぞれがアップになり、硬質なサウンドの合間に“今、私たちにできること”のセリフが挟み込まれていく。レーザー光線も飛び、スリリングな音、映像、メッセージが一体となってオーディエンスへ迫ってくる。非常に息を呑む、シリアスな空間に包まれながら、バトルを繰り返し何かを伝えようとしている彼女たち。歌を歌っている訳ではないが、“今、私たちにできること”の言葉が強烈に観客に突き刺さってきた。
おそらく、この三角形はPerfume3人なのだろう。3人の集合体のシンボルマークが三角形なのだ。この三角形は造形は美しいが、バランスを崩すと脆い。一度パワーバランスを崩すと、壊れてしまうかもしれない象徴でもある。だが、安定感のあるスクエア、四角形以上にその美しさと先取性に長けた形でもある。不遇の時代を重ね、辛い経験もしてきてスターダムにのし上がった彼女らだが、さらに高みを目指してさまざまな挑戦をして行く。そしてどんな困難も突き破ってみせるという一種の決意表明にも見えたのだ。奇しくも、その後のMCで、震災後に歌っていいか迷ったこともあったが、私たちに出来るのは歌を歌って少しでも多くの人たちを元気づけることだと語っていた彼女たち。その思いが中田ヤスタカのサウンド・サポートを得て結実した瞬間ではなかったか。
また、アルバム『JPN』はこれまでのアルバムと比べてポップな印象が強かったが、それをライヴでしっかりと覆してくれたのも嬉しかった。無論、ポップなことが安易とか逃げとかそういうことではない。テクノポップを中心としたサウンドを構築する中田ヤスタカだが、アプローチはむしろブレイクビーツやらサウンドエフェクトやらに重心を置かずに、あくまでもメロディ・ラインやアレンジを主軸にしている。さらに、ラヴリーな“恋モノ”の詞世界が多いゆえ、キャッチーなポップという印象が強かったのだ。ポップというのは、実はポピュラーなものだけに一番難しい。そのポップを中田ヤスタカなりのアプローチで描き切ることが出来るかというのが、Perfumeサウンドの最大のポイントであり面白さであるのだ。
そのポップな楽曲をライヴではJPNツアー用のアレンジで、しっかりとライヴとしての世界観を創り上げていた。もちろん、それはこれらを理解した表現者がいなければ伝わらない。意識してかどうかは聞いてみなければ解からないが、Perfumeの3人はしっかりとこのような意図を咀嚼してステージに立っているのではないか。そう思えてならないのだ。
“キラキラの夢のなかで~”のリリック通りに多数のレーザービームが飛び、観客を笑顔で輝かせた「GLITTER」、過去曲のフレーズを挟み込みながらのメドレー、「ねぇ」での高速ステップ、貫禄の域にさえある「ポリリズム」、斬新なチャレンジに挑みシングル・タイトル曲のお株を奪うほどの質の高い楽曲となった「ねぇ」のカップリング「FAKE IT」、コール&レスポンスで観客の心を解放し楽しみや喜びを与える「チョコレイト・ディスコ」……Perfumeの楽曲やパフォーマンスはどれもが異色性を持ちながらも、どれもがPerfumeらしいと思えるところが見事。そういう素晴らしいパフォーマンスを感じるからこそ、トータルの完成度を求めてしまうのだ。
だが、これらのことは自分のような偏屈な人間が考えることなのかもしれない。いつでもファン・サーヴィスの時間を忘れずに作ってくれる3人だからいいんだ……そう思っている多くのファンにとっては、これらのことは偏屈の戯言に過ぎないのだから。それは、さいたまスーパーアリーナをほぼ満員にし、多くの観客を熱狂させた事実が物語っている。
終演後、スクリーンに5月の日本武道館4デイズと初の沖縄野外公演が発表された。この時世、日本武道館を4日間埋められるのは、限られたアーティストしかいない。そこまで上り詰めたのは、本当に凄いことだ。とはいえ、偏屈な自分は、やはり、トータルの完成度がさらに高まったところを観てみたい。叶うならば、プラチナチケット必至だが、その姿を日本武道館で焼き付けたい、そんな想いが今、頭を過ぎっている。
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<SET LIST>
01 The Opening(*)
02 レーザービーム(*)
03 VOICE(*)
04 エレクトロ・ワールド
05 ワンルーム・ディスコ
(MC 1)
06 Have a Stroll(*)
07 時の針(*)
08 微かなカオリ(*)
09 スパイス(*)
10 Theme of JPN~今、私たちにできること~ Music by 中田ヤスタカ(capsule)
11 GLITTER(*)
12 Medley
シークレットシークレット(Intro)
不自然なガール(*)
Take me Take me
love the world
I still love U
575(*)
Baby cruising Love
シークレットシークレット(Outro)
13 ポリリズム
(MC 2)
14 P.T.A.のコーナー
夏色のナンシー(Original by 早見優)
survival dAnce ~no no cry more~(Original by TRF)
ultra soul(Original by B'z)
15 FAKE IT
16 ねぇ(*)
17 ジェニーはご機嫌ななめ
18 チョコレイト・ディスコ
19 MY COLOR(*)
≪ENCORE≫
20 Dream Fighter
21 Puppy love
22 心のスポーツ(*)
※(*)Song from Album『JPN』
<Perfume>
KASHIYUKA(かしゆか):樫野有香
NOCCHI(のっち):大本彩乃
A-CHAN(あ~ちゃん):西脇綾香
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Perfume - FAKE IT
今回のライヴでの個人的なベスト・パフォーマンスのうちの一つ的な。
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<一言感想集>
・「エレクトロ・ワールド」はもっとドスドス低音が来ると思ったら案外だった。(座席位置のせいか?)
・「みんなはライヴを観に来たんじゃない、ライヴをしに来たんだッ」とかっこよく煽るつもりが、大事なところで噛んでしまうのっち。かしゆかダメ出し。
・Perfumeがさいたまスーパーアリーナで、一方ちゃあぽん(あ~ちゃんの妹)が品川ステラボールで9nineのライヴと……西脇家は凄いことに(ちなみにあ~ちゃんのお母さんは「今日だけしかないから」ということでちゃあぽんのライヴへ行ったとのこと)。
・MC1でコスプレのファンをさまざま弄るが、かしゆかとのっちのコスプレをした2人組の女子に対して「あ~ちゃんは?」と言って絶句するあ~ちゃん。その変顔(?)がスクリーンにドアップ。
・その女子2人組。上はバッチリコスプレなのに、下がジャージ。「下はどうした?」と言われると、なんと脱ぎだしてしっかり下もコスプレしていた。のっちがすかさず「生着替えだー」。
・Perfumeバスタオルを掲げているファンへ向かって「それ売り上げが悪かったヤツ」。
・今回の掛け声は右スタンドが「さ」、左スタンドが「い」、それ以外が「た」、みんな一緒が「ま」。でも、その後にコールする「さいたま!」も「みんな!」も「ま」と同じで会場みんな一緒に叫ぶ意味だったりする。
・まさか早見優が聴けるとは。
・“内内外…”“上上下…”“グルグルグルグル…”……ダンスの呼び掛けが面白い。
・アンコールではアリーナ後方入り口から登場。そのまま機材席後方、後方スタンド席間近の朝礼台のようなJPNと書かれた台へ上がって「Dream Fighter」を歌う。最も至近距離に。
・そのJPNと書かれた台はよく反射していたため、スカートの中が映っちゃうゃうんじゃないかとハラハラドキドキしたオジサンは多いと思う。(ちゃんと、見えてもいいようなものはいてるってば…笑)
・電車内で「オレ明日ペンライト5本持ってく」「じゃ、オレ6本持ってくわ」と自分たちのライヴの話をする若者に遭遇したと感激するあ~ちゃん。「だから、その若者がここにおるんよ!」と興奮気味だったが、「だけど、私たちのライヴ、ペンライト禁止なんだよね…」とオチをつけ場内爆笑。
・そのJPN台から中央の花道ステージへ帰るまで3人で競争して戻ることに(花道ステージ中央には「JPNフラッグ」が立っていた)。「勝った人はキリン「氷結」1年分!」と勝手に決めたら、キリン側から「OK」が。
・じゃんけんで走路を決め、あ~ちゃんが右側通路を、かしゆかとのっちが左側通路を走って中央まで競争することに。ヘルマン・ネッケの「クシコス・ポスト」(運動会の曲)が流れるなか、あ~ちゃんが圧勝。「マジで走ったでしょ」と言われ、「マジでやった方がカッコイイんすよ」とキメる。
・萌えポイントナンバー1は、「心のスポーツ」での“運動不足~なの”の時にほっぺたを膨らませたかしゆかの表情じゃないかな、たぶん。(笑)
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ちょっと、言いたいことがこんがらがってまとまってない酷い文章になってしまったので、時間があれば、もう一回書き直すかも。