7 こんな世の中だから合気道
年の暮れに来て、新聞、テレビを見る意欲は完全消滅・・
見ると、精神状態も体調も確実に悪くなるからね。
せめて、昔読んだ本を再読してみたり、
俳句の本など引っ張り出して、言葉の合気道を思う。
「湯豆腐や いのちのはての うすあかり」(久保田万太郎)
・・う~む、わかるわかる(この年になると)。
これは、「入り身、転換、呼吸投げ」だ。
かみ締めるほど、投げられるこの快感!
「湯豆腐や」このあたりでは、何が起きているのかわからない。
「いのちの」・・ここにきて、すでに合気されて・・
「はての」で、完全に入り身されて・・
「うすあかり」と読んだ、直後に、自分が投げられていることに気付く!
先生のおっしゃる「気剣体一致」がそこに見えてくる!
特別な剣(言葉)を使ってるわけじゃない。
言葉は「自然体、簡潔、明瞭」である。
誰の言葉か忘れたけれど、こんな一節を思い出した。
「むやみに烈しい言葉を用いると、言葉が相手の心の内部へ入り込む前に爆発してしまう。言葉は相手の心の内部へ静かに入って、入ってから爆発を遂げた方がよいのである」。
言葉は慎ましいものにかぎると、この碩学は言う。
そう、慎ましい言葉運びには訓練が要るよね。
激しい言葉は簡単だけど。
「一挙動ですっと入る」
「力を入れない、捻らない、溜めない・・」
先生の言葉を思う。
そう、今年がひどかったのは、
あまりにひどい言葉が飛び交ったからだ、と気付く。
「想定外」「ただちに人体に影響はない」・・
ネットを介して振り回される匿名の刃物、汚物のような言葉・・
思いだすだけで体調が悪くなりそうなのは僕だけじゃないでしょう。
道を歩いていて暴漢に襲われる確率はさほどないが、
メディアを介した言葉の暴力や恣意的に流される言葉で、
一般市民がどれほど心身を損ねてきたことか。
言葉は正の力も大きいが、負の力は輪をかけて激しい(言葉の呪力なんですね)。
ひどい言葉の根底に、
人の上に立つ者たちの知的劣化(マスコミ含めて)が
病的に亢進してしているのを、多くの国民が感じていることでしょう。
それゆえの「人災」が人心を混乱させていることを。
最近僕は、
メディアを通して「ひどい言葉」に遭遇したら、
(街を歩いていて胸倉つかまれるのと同じだよね)
反発したり腹を立てたりすると思うツボだから、
「接点を意識からはずして」
・・・と自分に言い聞かせているしだい。
言葉の手解きですね。
口直しに一句。
「寒星や 神の算盤 ただひそか」 (中村草田男)
ほら・・「天地投げ」でしょう。
こんな世の中だから・・
来年も、
楽心館合気道で熟年力を磨くぞ!