銀幕に包まれて眠りたい

最新の劇場公開映画のレビューが中心です。

ドルビーシネマで「イン・ザ・ハイツ」

2021-08-04 12:52:59 | 洋画
人気ブロードウェイミュージカルの映画化で評判も「イン・ザ・ハイツ」をドルビーシネマの最前列リクライニングチェアで鑑賞。
通常撮影の作品でドルビーアトモス仕様であるならドルビーシネマが最高の鑑賞観客。音楽とダンスが見どころのミュージカルならではの劇場選択です。

しかしハリウッド作品で評判も良いのに全米の興行は不発。ミュージカルの人気が高い日本でもパッとしない滑り出し。
実際、歌も踊りも最高でスケールも大きい。ヒスパニック系がキャストの大半を占めていますが、メインテーマ曲からしてラップ。ヒップホップ、JAZZ、R&Bなど多彩なジャンルの音楽が使われていて楽しく観れる。特にレスリー・グレイスの歌声はこの世のものとは思えない美しさにうっとりと音楽も良いのに。
しかしそれ以上のものが無い。感動が無かったのだ。
例えばアパートの壁の上で踊る無重力ダンスシーンはもっと高揚感があっても良いのに、例えば「ラ・ラ・ランド」の宙を舞うダンスの魅力に遥かに及ばない。

なんでだろう?

ヒスパニック系の移民が集まるワシントン・ハイツの人々を言わば一つの家族のような存在、そして登場する人たちは人を思いやる良い人ばかりで心温まるのだが。。。

思い浮かんだのは、ここに登場する人たちは逃げてばかりいる。ミュージカル映画定番の夢を追うストーリーではないのだ。同じヒスパニック系でも「ウエストサイド物語」は現実の厳しさに直面しながらも諦めずに夢を追っていた。
でも「イン・ザ・ハイツ」は現実の厳しさから逃げてきたか逃げようとしている人たちばかりなのだ。
会社で上司から怒られた、じゃあ「辞めまーす」な人には同情できないのと同じ理屈。
よくできたミュージカル映画なのは間違い無いけど楽しく無い。2度観る事はないと思う。

1作目のワイルドスピードがリバイバル上映

2021-07-18 20:12:50 | 洋画
シリーズ1作目の「ワイルド・スピード」が4Dでリバイバル公開され、リーズナブルな料金設定と言うこともあり観てきました。
このシリーズは1本も観てなくて今回が初鑑賞。もう20年も前なんですね。
4Dは物語に集中出来ないので嫌いですが、今回も揺れに慣れて映画の世界に入れたのは中盤以降。揺れない座席を設置して見る人が選べるようにしてくれないかな?
さておき、僕自身、車やバイクが大好きで当時の日本車やバイクが次々と出てきては「あ〜この頃のは魅力的だったな」とクーペやスポーツカーが日本のメーカーから消えようとしている現状を見ると寂しくなってしまいました。
映画の中身より自動車を通して日本経済の衰退さを痛感してしまいました。新作の予告編を観る限り日本車は出て無いし。
映画は時代を反映してますが、このシリーズを続けて観ると興味深いものがあると思います。

「ミナリ」一生懸命に生きる事の幸せ

2021-07-18 08:46:57 | 洋画
移民を描いた映画と言えばトム・クルーズの「遥かなる大地へ」を真っ先に思い浮かべますがこちらは開拓時代を描いた歴史大作。対する「ミナリ」はセリフから察するに1980年の光州事件で韓国から逃げてきた人たちなので現代に通じるものがありますね。
またこの手のテーマのお決まりの困難を盛り込んだストーリーではあるけどあまり深刻に扱わない。むしろちょっと良くなる不思議な幸福感があってそれが新鮮。
ブラッド・ピット制作のせいか、シネスコの横長スクリーン一杯に広がる美しい光景は「リバーランズスルーイット」を思い出しました。
役者もみな素晴らしかったけど、おばあちゃん役のユン・ヨジョンの存在感は凄かった。

17歳の瞳に映る世界 感想

2021-07-18 07:37:25 | 洋画
「17歳の瞳に映る世界」
望まざる妊娠をした17歳の女性が、ペンシルベニアからニューヨークへ、親の許可無しに中絶が出来る州での出来事を綴った作品。
外から見るとアメリカは先進的で女性差別など過去のものと思ってしまうが、ペンシルベニアでもニューヨークでも女性に対する軽視、差別が軽くそして延々と行われて行く。それが男性のみではなく、男性社会に洗脳された女性からも受けてしまうのは「プロミシング・ヤングウーマン」でも描かれていたが、間を置かずして、再度映画で見せられるとはショック。
「17歳の瞳に映る世界」は一つ一つのセリフ、描写がドキュメンタリーでさえ及ばないのでは?と思える繊細さ。演出・脚本には劇的な味付けはほとんど無いのもあって、生々しく心に訴えてくる。
映画はmee too運動を受けて作られた物とも捉えることが出来るが、絶対的身体能力でどうしても男性に劣ってしまう女性への差別を根絶する事は容易ではないと感じた。

従姉妹を演じたタリア・ライダーは大スターになりそう。


宗教色が強い「プロミシング・ヤングウーマン」

2021-07-17 14:02:35 | 洋画
本作の根本的なテーマはFOXニュースやワインシュタインなど、近年のアメリカを騒がせたセクハラ問題にあるのは明らか。
それをスリリングなエンターテイメントにした事で、実話より強烈なショック描写が可能となり、例えばFOXニュースのセクハラを描いた「スキャンダル」より、よりテーマが鮮明になった。

主人公の友人を想う描写が弱いのがこの映画の欠点であるかもしれないが、主人公の行動、そしてラストに至るショッキングな展開は宗教的で、自らの死をもって友の魂を救う行動。そしてベッドの上で十字となって死ぬ姿は、イエス・キリストの磔の姿そのものである事が如実に表している。
日本は未だにセクハラをセクハラと感じてない行動やメディアが横行しており、キリスト教的な自己犠牲表現のこの映画を、日本人は果たして理解出来るのだろうか?


2021.7.17 TOHOシネマズ日比谷