アルチンボルド展
2017年6月20日~9月24日
国立西洋美術館
最終章となる第7章「上下絵から静物画へ」。
アルチンボルドの上下絵2点が登場する。
クレモナ市立美術館所蔵の《庭師/野菜》およびストックホルム国立美術館所蔵の《コック/肉》である。
《庭師/野菜》
クレモナ市立美術館
↑本展での展示向き。
↑隣には図版パネル。
この作品は魅力的。
描かれた野菜自体の描写にまず惹かれる。
さらに、玉ねぎが庭師の頬に、キノコは庭師の分厚い唇に、大根?は庭師の鼻に、クルミやヘーゲルナッツは庭師の目に、野菜の葉は庭師の髪やあご髭に。
たらい=庭師のヘルメットには、文字らしきものがうっすらと見える。図録によると、画家のサインではないとのこと。じゃあ何か、そこまでは書かれていない。
本作品は、会期後半に、上下を逆にした展示が予定されているとのこと(✳︎)。
《コック/肉》
ストックホルム国立美術館
↑本展での展示向き。
↑隣には図版パネル。
印象は今一つかなあ。
なお、本作品も、会期後半に上下を逆にした展示が予定されているとのこと(✳︎✳︎)。
驚きの1枚
ジョヴァンニ・アンブロージョ・フィジーノ
《金属製の皿に載ったモモとブドウの葉》
1590-91年頃
個人蔵
フィジーノ(1552頃-1608)のこの作品は、「現在知られている限り、イタリアのみならずヨーロッパにおいても、最も古い静物画」とされている。
宮下規久朗氏のカラヴァッジョ画集で必ず取り上げられる作品であり、一度見たいなあ、と思っていたところ。
フィジーノも16世紀ミラノ画壇を代表する画家。この静物画はカラヴァッジョ作品に先行する貴重な作例。以後、ロンバルディア地方では、フェーデ・ガリツィア、ヌヴォローネ、バスケニスらによる静物画の伝統が形成される。本作品はその劈頭を飾るものである。
カラヴァッジョはそれを継承し、ローマで《果物籠》を描き、静物画が人物画と同様の力強さを持ちうることを証明した。
見たいなあ、とは思っていたが、カラヴァッジョ展のほうではなく、アルチンボルド展のほうで見ることができるなんて、全く想像していなかった。本展出品自体が驚きの1枚である。
さて、引用した宮下規久朗氏の説明文に触れられているフェーデ・ガリツィア(1574頃-1630頃)の作品も出品されている。
フェーデ・ガリーツィア
《果物と葉、マルメロ、陶器》
1620年頃
個人蔵
女性画家である。図録解説によると、晩年のアルチンボルドとミラノにおいて直接的な接点があった。当時20歳前後の女性画家の作品数点を皇帝ルドルフ2世に送ったのである。その中に静物画があったかどうかは不明だが、皇帝はお気に召され、作品をさらに所望されたという。
ヴィンチェンツォ・カンピ
《魚売り》
ブレラ美術館
5点物の連作のうちの1点。
カンピによる「自然物が詳細に描かれたこの種の主題の絵画は、同時代人であるアルチンボルドの寄せ絵による頭像とともに、ロンバルディア地方における静物画の誕生にとっての重要な基準点となった」。
魚介類の数々がメインなのだろうが、アルチンボルド《水》を観たあとでは惹かれない。
むしろ、画面左の豆のスープを食す粗野な夫婦、女の膝上でザリガニに指を挟まれて目から大粒の涙を流している子供、駆け寄る犬と猫。
そして、後景の、魚を釣ろうと水のなかに入って屈み込む5人の男女。一番右の黄色のスカートの女性の露わになっている健康的な太ももについ目がいくが、実は左のほうの男性の一人も逞しい尻を此方に突き出していて、何かはよく分からないが、画家が何かを狙って描いたことは間違いない。
こうしたロンバルディア地方の芸術環境があって、2016年の国立西洋美術館のカラヴァッジョ展に繋がっていく。
✳︎ 嘘です。単なる私の希望。
✳︎✳︎ 嘘です。単なる私の希望。
でも、私が知らないだけで、本当にそんな予定があったら嬉しいのだが。