
楽しみ!!2025年の国立西洋美術館の企画展。
3つの企画展が予定されている。
西洋絵画、どこから見るか? ー ルネサンスから印象派まで
サンディエゴ美術館 vs 国立西洋美術館
2025年3月11日〜6月8日
スウェーデン国立美術館 素描コレクション展
ー ルネサンスからバロックまで
2025年7月1日〜9月28日
オルセー美術館所蔵
印象派 ー 室内をめぐる物語
2025年10月25日〜2026年2月15日
春は、「西洋絵画、どこから見るか? 」展
米国・サンディエゴ美術館からの49点、国立西洋美術館からの39点、計88点の出品。
さらに、ゴヤやアングルなどのサンディエゴ美術館所蔵作品5点が、常設展示室に並ぶ予定だという。
最初に見た本展チラシでは、スペインのボデゴン(静物画)、フアン・サンチェス・コターン《マルメロ、キャベツ、メロンとキュウリのある静物》と、国立西洋美術館所蔵のマリー=ガブリエル・カペ《自画像》の2点のみが掲載されていた。
コターン作品には期待!
であるが、全体としては寂しめなんだろうなあ。
と思っていたが、直近の本展公式サイトを見てびっくり!
ジョット、ジョルジョーネ、スルバラン、マリー=ギユミーヌ・ブノワ、さらには
カルロ・クリヴェッリ
《聖母子》1468年頃

2020年のロンドン・ナショナル・ギャラリー展、2021-22年のメトロポリタン美術館展に続き、クリヴェッリの素晴らしい作品を見ることができるとは。
現在、手持ちのクリヴェッリ画集で、本作品の図版にうっとり見惚れている状況。
突然のクリヴェッリ来日シリーズの到来、今後も継続してほしいもの。
久々の海外所蔵品による西洋古典絵画(オールドマスター)の展覧会。大いに楽しみにしている。
なお、本展は京都に巡回するが、同じコンセプトなのだろうか。
夏は、「スウェーデン国立美術館 素描コレクション展」
デューラーもルーベンスもレンブラントも。
偉大な芸術家はまた卓越した素描家でもある
本展公式サイトには、出品作6点の素描の画像が掲載されている。
デューラーの素描《三編みの若い女性の肖像》に期待!
レンブラントの素描の画像は掲載されているが、ルーベンスのそれは掲載されていないなあ。
公式サイトに掲載されていないが、ポントルモの素描《女性の肖像のための習作》も出品されるようだ。
私的に来日期待の素描。
ドメニコ・ギルランダイオ
《老人の頭部》1490年頃

ルーヴル美術館所蔵のドメニコ・ギルランダイオ《老人と孫》1490年頃に描かれる老人と同じモデル。
宣伝素材には向かないだろうから期待し続けているのだが、スウェーデン国立美術館の素描部門の至宝であろうから難しいだろうなあ。
秋から冬は、「印象派 ー 室内をめぐる物語」展
室内をめぐる、印象派のもうひとつの魅力
オルセー美術館のコレクション、約10年ぶりの大規模来日
国立西洋美術館で2年連続となる、パリの美術館所蔵作品による大規模な印象派展。
本展のメインビジュアル、初来日であるという大型サイズの作品。

エドガー・ドガ
《家族の肖像(ベレッリ家)》
1858-69年、201.0×249.5cm
本展について、私的には、このドガの作品で満足、プラスアルファで素敵な作品が出品されるなら儲けもの、という感じ。
さて、2025年は、これら以外にも、どんな西洋美術を見ることができるのだろうか。
芸術新潮2025年1月号『これだけは見ておきたい 2025年美術展ベスト25』を初入手。
また、例年どおり、『日経おとなのOFF 2025年絶対見逃せない美術展(日経トレンディ2025年1月号増刊)』も入手予定。
「手持ちのクリヴェッリ画集で、本作品の図版にうっとり見惚れている状況」と書かれていますが、私の知る範囲でこの作品のカラー図版はZampettiのカタログレゾネ1986、R. Lightbownの研究書2004、イザベラ・スチュワート・ガードナー美術館特別展Ornament & Illusion展図録2015の3冊しかなくて、Anna BoveroのRizzoliカタログ1975や日本語で書かれた本3冊(吉澤京子トレヴィㇽ画集1995、石井曉子 マルケに埋もれた祭壇画の詩人 講談社2008、同氏 カルロ・クリヴェッリの祭壇画2013)にはカラー図版は出ていません。
私が把握していない本かもしれないので、何をご覧になってうっとりされているのかを教えてください。
なお、このサンディエゴの聖母子は、2020年のLNGの受胎告知、2022年のMet展の聖母子とも傾向が違う署名入りの初期の傑作であり、この2作以上に期待しているところです。上記のZampettiやAnna Boveroはヴェローナにあるごく初期の作品である「受難の聖母」と同時期の1460年頃としていますが、これらより新しいOrnament & Illusion展図録では諸々の理由からこれより少し後の1468年頃としていて、今回の展覧会の特別サイトでもその制作年を採用しています。クリヴェッリの署名を比較研究した論文(早稲田大学美術史研究15冊1978カルロ・クリヴェッリの署名―最晩年の作品の制作年推定 篠塚二三男)では、署名の形式から「1472~3年頃」としていて、諸説あるようなので、このへんもこれから確認していこうと思っています。
コメントありがとうございます。
ご照会の件、手持ちの画集は記載いただいている2015年の特別展図録です。
クリヴェッリの初期作品ですね。署名も気になっていたところでしたので、ご紹介いただいた篠塚二三男氏の論文を入手すべく手配中です。いつもありがとうございます。
https://art.nikkei.com/campaign/1954/
私は高階先生の「ルネサンスの光と闇」でオルヴィエートのフレスコ画とサヴォナローラの関係を読んで、ボッティチェリと反対の立場ということに興味を持ち、是非一度見たいと思って1990年頃にオルヴィエートに行ったのですが、残念ながら修復中で見られず、それ以来再訪する機会がありません。その後シニョレッリのカタログレゾネを始めいくつかの画集・研究書や日本語での論文コピーを集めてきましたが、まとまって読む機会もなく数十年が経過してしまいました。今回はよい機会なので、この際ルカ・シニョレッリという画家のことを一から勉強するつもりで手持ち資料全体を確認しました。
その中に今回出品される聖母戴冠を取り扱った日本語論文があり、それは九州芸術学会(九大に事務局)発行の「デアルテ」32号2016掲載の
森結「ルカ・シニョレッリの装飾的傾向に関する一試論―アルチェヴィア、サン・フランチェスコ教会の為の《フィリッピーニ祭壇画》を中心に―」
です。ネットでは公開されていませんが、著者がこの論文の少し前に発表した関連内容の要旨が2件あり、ネットで読めます(2番目は「若手の3」に記載)。
https://www2.lit.kyushu-u.ac.jp/~aesthe/gakkai/hokoku/h27.html
https://www.geidai.ac.jp/labs/aesthetics/bigaku64/abstracts.html
デアルテ論文では、ミラノのブレラにある聖母子と4聖人の絵(フィリッピーニ祭壇画)とサンディエゴの聖母戴冠が本来一具であったことはほとんどの研究者に認められているとして、海外の研究者が示した復元図が掲載されていますが、写真では聖母戴冠の横幅と祭壇画中央パネルの横幅が同じサイズで示されていて、ルカ・シニョレッリのカタログレゾネや下記Zeriのカタログに出ている聖母戴冠127 × 223、中央パネル227 × 185cm(ともに縦×横)と合いません。この問題は実物を見るまでの宿題です。
Zeriの作品カタログではこの2作品は下記URL(jpをitに置き換えてください)。
https://catalogo.fondazionezeri.unibo.jp/scheda/opera/19752/Signorelli%20Luca%2C%20Incoronazione%20di%20Maria%20Vergine%20e%20angeli
https://catalogo.fondazionezeri.unibo.jp/scheda/opera/19745/Signorelli%20Luca%2C%20Madonna%20con%20Bambino%20in%20trono%20tra%20san%20Giacomo%20Maggiore%2C%20san%20Simone%2C%20san%20Francesco%20d%27Assisi%20e%20san%20Bonaventura
カラー写真は
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:The_Coronation_of_the_Virgin,_by_Luca_Signorelli,_Cortona,_1508,_oil_and_tempera_on_panel_-_San_Diego_Museum_of_Art_-_DSC06643.JPG
https://pinacotecabrera.org/collezioni/collezione-on-line/madonna-in-trono-con-il-bambino-e-i-santi-giacomo-maggiore-simone-francesco-dassisi-e-bonaventura-pala-di-arcevia/
デアルテ論文には、オルヴィエートのフレスコ画以降のルカ・シニョレッリは装飾過多の時代遅れの画家であるとする従来の通説に対し、ラファエロのコロンナの祭壇画(現メトロポリタン美術館)の影響を受け、さらにそれを超える細部装飾を試みていることなどから、決して時代の潮流に取り残されているわけではないということが述べられています。また、聖母戴冠については、金彩を用いた表現方法が特筆すべきとしていて、「聖母の頭上に捧げられた冠は装飾が盛り上げられ、その上から箔を置く技法が用いられている。また、父なる神の外衣にも金彩が施され、そこに蔓草に絡むプットの文様があしらわれている。これらは祭壇画中央パネルとも共通する技法である」とのこと。聖母戴冠の金彩装飾については拡大鏡持参でしっかり観察しようと思います。
今回ルカ・シニョレッリの資料を見直したことで、親子ほど年の離れたミケランジェロから借金をして返済しなかったという事件やもっと若いラファエロの影響を受けたこと、その他ルカ・シニョレッリに関する実像がいろいろと見えてきました。もしご興味があればこれらについても書きますが、今回は長くなるのでここまでにしておきます。
次に、クリヴェッリ出品作の動画のご紹介です。かなり詳しく解説されているようなので、実物を見る時までに翻訳機能を使いながらしっかり見ておこうと思っています。
https://www.youtube.com/watch?v=I6z7LlOrlO0
最後に西洋美術館新収蔵作品の件。
昨年9/20の貴ブログ「ルイ=レオポルド・ボワイーのトロンプ・ルイユ―国立西洋美術館の2024年度新収蔵作品」でコメント投稿した2作品(ビアージョ・ダントニオ・トゥッチの聖母子と幼児洗礼者聖ヨハネ、フェーデ・ガリツィアのホロフェルネスの首を持つユディト)ですが、西洋美術館の画像検索を見ると、フェーデ・ガリツィアの方は画像なしで項目(下記URL。Gをクリックすると一番目に掲載。来歴に2024.7.31とあり)が出ていますが、ビアージョ・ダントニオ・トゥッチの方はまだ項目もありません。もう少し待たないとどんな絵かは分りませんね。
https://collection.nmwa.go.jp/artizeweb/search_7_detail.php
コメントありがとうございます。
シニョレッリが出品されるのですね。それも結構な大型作品。
シニョレッリについては、高階先生の『ルネッサンスの光と闇』で名を知りました。《パンの饗宴》は見ることができませんが、オルヴィエートの大聖堂は、シニョレッリ目当てで訪問しました。とはいえ、今では壁画の印象はなく、真夏の暑さとランチの失敗だけが記憶に残っています。その2点のほかは特段興味を持つことなく過ごしてきましたが、今回、URLをご紹介いただいた森氏の文章を読んで、楽しみになってきました。
フェーデ・ガリツィアの作品紹介ページ、ありますね。一方、ビアージョ・ダントニオ・トゥッチはない。ということは、次期の常設展には、フェーデ・ガリツィアが公開されるということでしょうか。企画展とあわせて楽しみです。