※各本ネタバレ含みます!ご注意を!
家族終了 酒井順子
酒井順子さん、2019年だから比較的新しい本。
なるほど、昔から当然だった「家を継ぐ」ことがあたりまえでなくなり、無理矢理「家族」とならなくてもいい世の中になりつつある。
かくいう私も、同居して「嫁」になってないし、そもそも「嫁」として最低限のことしかやってないし、長男なのに家を継ぐ話もない。
結婚の形も変わりつつある。まわりに同棲していて結婚はしない人若い人、けっこういるからね。
酒井さんも、結婚はしてないけど同居人はいるそうだ。「なんで結婚しないの」という問いもなるほど、という形で書いてある。
私も正直、結婚に対して絶対にすべきとは思っていないので、
もし娘たちがパートナーと暮らして結婚しないといっても、それでいいんじゃない、と言ってしまうかも。
テノヒラ幕府株式会社 安藤祐介
安藤祐介さん、お得意のお仕事小説。
この方のブラック企業の書き方が、他の小説と同じなので、社会人経験のある安藤さんが、多分本当に経験したことなんだろうな。
寝食を共にして夜昼となく働くことがいいか悪いかは別として、ほとんど縁のないスマホゲームを作る過程がわかったのは面白かった。ゲームを終了させるのはそんなに大変なことだったのか。
こういうベンチャー企業は、うまくやらないと大手に使われて終わってしまいがちだが、大企業からやってきた小野里さんの働きでうまく収まった。もう少し小野里さんとの確執を掘り下げたら面白かったかも。読んで元気なるサワヤカ小説。
私以外みんな不潔 能町みね子
この人がどいういう人か知らず、タイトルで借りた本。
大人になって性転換したという、この人自身の自叙伝らしい。
この話は人と違う生きづらさを自覚している5歳児の目から書いたものである。感性が豊すぎて、幼稚園という共同生活になじめない。私自身は無邪気で何も考えていない保育園時代を送っていたが、こうやって生きづらさや違和感を抱えて過ごしていた子がいたのかもしれない。彼(彼女)たちにとって私たちはがさつな、「幼稚な」子どもであったことだろう。ただ、こういう子どもがいたら大人も扱いに困るだろうな💦
この話は彼(彼女)にとって苦行だった幼稚園時代で終わるが、きっと小学校以降も生きづらさは変わらなかったんじゃないかな。
ウズタマ 額賀澪
表紙からして、ほんわかとした青春小説を想像していたのだが、はなから不穏な雰囲気のただようミステリーの展開。
主人公、松宮周作の、亡くなった父親の過去を知ることで、見えてくる事件と人物と真相・・・。先が気になってどんどん読み進められた。
母親が亡くなった事件は、皆瀬が犯人ではないことはわかってきたが、母親の異常なまでの嫉妬心が、父と皆瀬の関係が、もしや今はやりのそっち方面だったから・・・?と内心冷や冷やしたが(個人の考えです)そうではなく、純粋に皆瀬が罪をかぶってくれただとわかり、ほっとした(なんでやねん)確かに、最後まで母親が悪役になってしまったのはかわいそうな気がしたが、ハッピーエンドの形で終わってくれてよかった。
額賀澪さん、これまで青春小説しか読んでこなかったけど、こういう話も書けるんですね。
この本を盗む者は 深緑野分
本屋大賞受賞作で、書評で取り上げられていたから予約して、だいぶたって忘れてた頃にやってきた本。
思い切りファンタジーな本で、正直ファンタジーが苦手な私にはちょっと読みにくいところもあったけど、本を盗むと呪いのかかる「ブックカース」の世界の描写が細かくリアルで、入り込めれば、なかなか面白い世界だった。これ、アニメ化したら受けるんじゃないかしら。登場人物たちも、キャラが立ちそうだし。
深緑野分さんはお初。この方、他の作品は全くテイストが違うらしい。そっちも読んでみたい。