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「中小企業の会計に関する基本要領(案)」の公表について(中小企業庁)

「中小企業の会計に関する基本要領(案)」の公表について

中小企業関係者等が主体となって設置された「中小企業の会計に関する検討会」(中小企業庁と金融庁が事務局)によって、「中小企業の会計に関する基本要領(案)」が取りまとめられ、2011年11月8日付で公表されました。12月7日までコメントを募集しています。

この基本要領案は、「中小企業の実態に即した新たな中小企業の会計処理のあり方を示すものを取りまとめる」という目的に沿って、本年2月から検討されてきたものです。

総論、各論、様式集から構成されており、30ページ弱のボリュームです。

各論では、以下の項目を取り上げています。

1.収益、費用の基本的な会計処理
2.資産、負債の基本的な会計処理
3.金銭債権及び金銭債務
4.貸倒損失、貸倒引当金
5.有価証券
6.棚卸資産
7.経過勘定
8.固定資産
9.繰延資産
10.リース取引
11.引当金
12.外貨建取引等
13.純資産
14.注記

全体として、現行の中小企業会計指針の内容を水で薄めたような印象を受けました。構成も似ています。

(項目ごとの感想)

総論について

・金融商品取引法の規制の適用対象会社と会社法上の会計監査人設置会社を除く幅広い株式会社を想定しています。会計参与設置会社については、中小企業会計指針を適用すべきかどうか、あいまいな書き方です。

・IFRSとの関係についてわざわざふれていて「本要領は、安定的に継続利用可能なものとする観点から、国際会計基準の影響を受けないものとする」とされています。日本の中小企業会計は「ガラパゴス」路線でいくと宣言したことになります。実務的なルールとしては、なくても差し支えない規定だと思われます。

・「記帳の重要性」という規定があるのも独特です。

各論について

・「取得価額」と「取得原価」を使い分けているのは独特です。「取得原価」は取得価額を基礎として、適切に費用配分した後の金額のことだそうです。(私が知らないだけでよく知られている区別なのでしょうか。)

・会社が保有する(他の会社が発行した)「社債」が金銭債権の項目で説明されています。普通は「有価証券」でしょう。(ちなみに、IFRSの金融商品会計では債券とローンの区別はしないようです。)

・償却原価法による処理についてふれている箇所があるのですが、「償却原価法」という言葉はさけています。また、「リース取引」の項目では、「ファイナンス・リース」や「オペレーティング・リース」という言葉もさけているようです。会計ルールなのですから、このくらいの用語が登場してもよいと思うのですが・・・。

・売買目的を除き、有価証券は原則として取得原価で計上となっています。

・有形固定資産と無形固定資産は「相当の償却」を行うことになっています。さすがに、規則的に償却しなくてもいいとは書けなかったのでしょう。

・「相当の償却を行う」というのはよいのですが、土地や建仮は、償却できないのでは・・・。

・引当金の項目で退職給付引当金を説明している箇所で、一時金制度の説明はあるのですが、確定給付年金の処理の説明が省略されています。中小企業だから該当がないだろうという割り切りなのでしょうか。

・外貨建金銭債権債務は、取得時レートで期末の換算を行ってもよいことになっています。

・税効果会計の説明はありません。中小企業には不要という判断なのでしょうか。たしかに、税務ベースで会計処理していれば、差異がないので、税効果もいらないということになります。

中小企業の会計に関する検討会(中小企業庁)

当サイトの関連記事(相当の償却について)

「IFRSの影響を受けない」、中小企業向け会計指針が公開(ITpro)
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