三井住友信託銀行の元社員がインサイダー取引を複数回した疑いがあるという記事。本人の申出により発覚し、銀行が発表しています。
「今回の疑惑は、元社員が10月30日に会社に申し出たことで発覚した。会社側が取引履歴などを確認し、同月31日にインサイダー取引の可能性が高いと判断した。業務上知り得た情報をもとに自身の利益のために他社の株式を売買した。
元社員は管理職で、1日付で懲戒解雇になった。元社員の説明によると、他の社員の取引への関与はなく、組織的な行為はなかったという。社員の所属部署や取引の内容に関する具体的な言及は避けた。」
社長のコメント。
「大山一也社長は同日夕の記者会見で陳謝したうえで「高い倫理性と自己規律を要求される信託銀行の社員が信頼を損なうような法令違反を犯したことは、当社の社会的存在意義が問われかねない事態だ」と話した。」
学者のコメント。
「金融分野に詳しい帝京大学の宿輪純一教授は「組織内で上意下達を忌避する動きが強まっており、社内教育が行き届かない懸念が大きくなっている。増加傾向にあるM&A(合併・買収)などに対して職員のよこしまな気持ちが働きやすくなる面がある」と指摘する。」
三井住友信託銀行株式会社の元社員によるインサイダー取引について(2024年11月1日)(三井住友トラストグループ)(PDFファイル)
「昨日、三井住友信託銀行株式会社(取締役社長:大山 一也)の元社員が、インサイダー取引を行っていたと疑われる事態が判明しました。
本事態を厳粛に受け止め、今後の関係当局による捜査および調査に全面的に協力するとともに、高度な客観性を確保した調査委員会を設置し、事実関係の確認や原因分析ほか徹底した調査を実施したうえで、これを踏まえた再発防止策の策定を行ってまいります。」
こちらは金融庁職員によるインサイダー取引事件の続報。
TOB企業一覧で株取引か 金融庁出向の裁判官―インサイダー疑惑・監視委(時事)
「関係者によると、裁判官は金融庁企画市場局企業開示課に所属し、TOBを予定する企業の書類審査を担当していた。4月の出向直後からTOB情報などを基に本人名義で株の売買を繰り返し、少なくとも数十万円の利益を得ていた疑いが持たれている。
取引した銘柄には、裁判官が審査を担当した企業もあれば、担当外のものもあった。同課の担当者間では、月ごとにTOBを予定する企業名などが記載された一覧表が共有され、自身が担当しない企業の情報も知ることができたという。」
担当外の会社の情報も簡単に入手できるというのは、ちょっと情報管理が緩いような感じがします。
ネットで揶揄されているように、金融庁も、運営が「著しく不当なものと認められる」として、業務停止にしないといけないのでは。
[社説]インサイダー疑惑の解明急げ(10月24日)(日経)
「日本ではM&A(合併・買収)が経営戦略として重みを増し、TOBも定着してきた。M&A関連のインサイダー取引を防ぐ重要性はいっそう高まっている。特に企業価値向上の旗振り役でもある金融庁・東証には、情報管理の厳しい規律が求められる。
金融庁や東証は不正防止の体制が十分か、改めて見直す必要があろう。企業や投資家、証券会社などもインサイダー取引が犯罪であることを再度、肝に銘じたい。
新NISA(少額投資非課税制度)が始動し、ようやく「貯蓄から投資へ」が進みつつあるタイミングである。市場に対する投資家や国民の信頼が崩れて、せっかくの流れが止まってしまうことは避けなければならない。」
インサイダー取引の取り締まりも大切なのでしょうが、いまでも、けっこう細かい取引までカバーし摘発できているようです。それより、「貯蓄から投資へ」のスローガンを利用するかのような、数十億円、数百億円規模の投資詐欺スキームが野放しになっているのを摘発する方に力を入れてもらいたいものです。