「新型コロナウイルス感染症に関連する監査上の留意事項(その7)」の公表について(日本公認会計士協会)
2021-03-03
日本公認会計士協会は、「新型コロナウイルス感染症に関連する監査上の留意事項(その7)」を、2021年3月2日に公表しました。
第451回企業会計基準委員会議事概要「会計上の見積りを行う上での新型コロナウイルス感染症の影響の考え方(2021年2月10日更新)」(昨年4月の議事概要の考え方を引き継いでいる)の公表を受けたものです。
会計士協会では、昨年4月の議事概要に対応して、「新型コロナウイルス感染症に関連する監査上の留意事項(その2)」を公表しています。
今回の「その7」では、「その2」の内容を簡単に説明したうえで、以下のように、新しい議事概要への注意喚起などを行っています。
1.451 回議事概要において周知された会計上の見積りを行う上での考え方
「(1) 「財務諸表作成時に入手可能な情報に基づいて、その合理的な金額を算出する」上では、新型コロナウイルス感染症の影響のように不確実性が高い事象についても、一定の仮定を置き最善の見積りを行う必要があるものと考えられる。
(2) 一定の仮定を置くにあたっては、外部の情報源に基づく客観性のある情報を用いることができる場合には、これを可能な限り用いることが望ましい。ただし、新型コロナウイルス感染症の影響については、会計上の見積りの参考となる前例がなく、今後の広がり方や収束時期等について統一的な見解がないため、外部の情報源に基づく客観性のある情報が入手できないことが多いと考えられる。この場合、新型コロナウイルス感染症の影響については、今後の広がり方や収束時期等も含め、企業自ら一定の仮定を置くことになる。
(3) 企業が置いた一定の仮定が明らかに不合理である場合を除き、最善の見積りを行った結果として見積もられた金額については、事後的な結果との間に乖離が生じたとしても、「誤謬」にはあたらないものと考えられる。
(4) 最善の見積りを行う上での新型コロナウイルス感染症の影響に関する一定の仮定は、企業間で異なることになることも想定され、同一条件下の見積りについて、見積もられる金額が異なることもあると考えられる。このような状況における会計上の見積りについては、どのような仮定を置いて会計上の見積りを行ったかについて、財務諸表の利用者が理解できるような情報を具体的に開示する必要があると考えられ、重要性がある場合は、追加情報としての開示が求められるものと考えられる。」
「(4)について、2021年3月31日以後終了する連結会計年度及び事業年度の年度末に係る連結財務諸表及び個別財務諸表から適用が開始される企業会計基準第31号「会計上の見積りの開示に関する会計基準」との関係については、451回議事概要によって確認されたい。」
2.経営者及び監査役等との適時かつ適切なコミュニケーションの実施
「会員各位には、新型コロナウイルスの感染拡大が企業業績等に与える影響を的確に認識し、監査リスクを適切に評価するとともに、見積りに関する会計処理について、被監査企業の経営者及び監査役等と通例よりも注意を払って適時かつ適切にコミュニケーションを実施することが求められることに留意されたい。」
「経営者の過度に楽観的な会計上の見積りを許容することは適切ではないが、他方、監査人が、企業の収益力やキャッシュ・フローの獲得能力について、実態と乖離した過度に悲観的な予測を行い、経営者の行った会計上の見積りを重要な虚偽表示と判断することも適切でないことに改めて留意されたい。」
(「その2」もそうなのですが、「過度に楽観的な会計上の見積り」と「実態と乖離した過度に悲観的な予測」が、同じバランスで並んでいるのは、違和感があります。職業的懐疑心を重視するならば、前者に主に注意を向けるべきでしょう。見積りに関する金融庁や会計士協会による監査法人・会計士に対する処分は、ほぼすべてが、前者でしょう。会社から報酬をもらっている監査人が「実態と乖離した過度に悲観的な予測」を行うインセンティブはほとんどないはずです。)
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