日本公認会計士協会は、「平成29年度 品質管理委員会年次報告書」を、2018年6月26日にウェブサイト上で公表しました。
協会が監査事務所に対して行っている品質管理レビューに関する報告書です。全部で100ページほどのものです。
全体のレビュー結果は...(15ページ)(画像クリックで拡大)
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「否定的結論」の事務所が1つあります。
指摘状況は以下のとおり(22ページ~)。監査事務所全体に関する事項と、個々の監査業務に関する事項です。問題がある事務所とそうでない事務所を分けて示したいのか、全体の結論が「限定事項付き結論又は否定的結論」の場合と「限定事項のない結論」の場合に区分されています。
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成績が悪い事務所は、指摘が格段に多いようです(だから悪い結論になっているわけですが)。
大きな問題がない事務所の場合は、1件の監査(監査業務)当たり、2件強の指摘があるようです。
指摘の内容としては、監査事務所に関しては、「職業倫理及び独立性」、「品質管理のシステムの監視」等が多く、監査業務に関しては、「監査証拠」、「不正を含む重要な虚偽表示リスクの識別、評価及び対応」、「会計上の見積りの監査」等が多いそうです。
指摘(監査業務)の具体例は...
「監査対象会社が最終入庫から1 年超の在庫を評価減する方針を採用している場合に、評価減額の根拠資料として、表計算ソフト等で作成された長期滞留在庫の評価減資料を監査対象会社から入手しているが、その情報の正確性(計算式が正確か等)及び網羅性(1 年超のものが全てリストアップされているか等)を検討していない。」
「債務超過の会社を将来の超過収益力に基づく企業価値で買収し、多額ののれんを計上するなど過去の不正事例(資金還流取引等)に類似した状況において、被買収企業の企業価値評価の前提となる事業計画の合理性について十分検討していない。」
「繰延税金資産の回収可能性の検討において、翌期以降の事業計画に基づく課税所得見積額が当期実績と比較して大幅に上回っているにもかかわらず、事業計画の内容を批判的に検討していない。」
協会では、今後「品質管理レビュー事例解説集」という資料を公表して、指摘の内容を解説するそうです。
この報告書とは別に、一般向けに「品質管理レビューの概要(平成29年度)」という資料も公表しています。
「品質管理レビューの概要(平成29年度)」の公表について