会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

オリンパス株:東証が上場維持決定「特設注意市場銘柄」に(毎日より)

オリンパス株:東証が上場維持決定「特設注意市場銘柄」に

東京証券取引所が、オリンパス株の上場維持を決めたという記事。「特設注意市場銘柄」への指定がなされます。

「東証は、上場維持に関連して「純資産の訂正は最大で1235億円に上るが、売上高や営業利益にはおおむね影響していなかった」と指摘。「虚偽記載の内容は投資家の投資判断をゆがめるものではなかった」と説明した。また、「隠蔽(いんぺい)行為が一部の関与者のみによってなされた」ことなども総合的に勘案し、上場維持が適当と判断したという。」

上場契約違約金の徴求及び特設注意市場銘柄の指定等について-オリンパス(株)-(東証)

東証のプレスリリースでは以下のように書いています。

「・・・一連の行為は、会社組織としての関与が認められるものの、その発端となった損失の発生やその後の隠蔽行為は、一部の関与者のみによってなされたものでした。また、これらは同社本来の主たる事業部門とは直接的に関係せずに、その事業の経営状況には影響が及ばない形で進められたものであり、不適切な会計処理は、売上高や営業利益には概ね影響していませんでした。

本件虚偽記載の内容については、財務諸表への影響は長期間に及んでいたものの、同社の事業規模を踏まえれば、その利益水準や業績トレンドを継続的に大きく見誤らせるものであったとまではいえず、同社の本業における経営成績を拠り所とした市場の評価を著しく歪めたものであったとまでは認められませんでした。・・・」

売上高や営業利益に影響していないから市場の評価を著しくゆがめていないというのは本当でしょうか。

1株当たり利益の計算に使われるのは、営業利益ではなく金融商品の運用成績を含む当期純利益です。また、オリンパスの場合は、1千億円を超える損失を隠していたわけですから、その分だけ純資産は損なわれ、重要な投資指標のひとつである1株当たり純資産は大きくゆがめられていました。

オリンパスを上場廃止にはしないという結論が先にあって、それにつじつまを合わせるような理屈をつけただけでしょう。

上場維持という結論は妥当だと思うのですが、その結論に導くために、粉飾の悪質性を過小評価するのは間違っています。

オリンパス上場維持で東証が負う責任(日経)

「上場維持・廃止の制度も再検討の余地がある。

 上場企業の虚偽記載が発覚すると、思惑が先行して株価は乱高下するのが常だ。投機的な売買が誘発されるのは、上場維持・廃止が東証の裁量で大きく左右されるからだ。米英の証券取引所が虚偽記載を理由に上場を廃止する例はほとんどない。上場廃止となるのは企業が破綻したり、株価が一定水準以下に長期低迷したりといった場合に限られる。」

ついでに、有報等の提出期限を1ヶ月超過すると、(東日本大震災のような大災害が発生した場合は別として)自動的に上場廃止になるというルールも見直すべきでしょう。今回のオリンパスのケースでも、期限に間に合わせるために相当無理があったと推測されます。もし、飛ばしの詳細な資料が担当者のパソコンの中から復元できなければ、過年度決算の修正は不可能であり、監査も意見不表明になっていたわけですから、本当にぎりぎりだったはずです。

「米英の証券取引所が虚偽記載を理由に上場を廃止する例はほとんどない」というのが本当にそうなのかは知りませんが、以前NECがデータがそろわず米国基準の財務諸表を提出できなかったときに、米ナスダック市場からすぐには上場廃止にならなかったという例があります。

オリンパス:上場維持 株主への影響配慮 東証審査基準、あいまいさに批判(毎日)

「結論ありき」の疑念 オリンパス上場維持、市場の不信高まる恐れ(産経)

東証の出来レース(FACTA)
名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最近の「不正経理」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事