社会正義の欠如【特集】日本公認会計士協会という「虚妄組織」(記事の一部のみ)
ZAITENという雑誌で、会計士協会を取り上げて、いろいろとけちをつけています。会計士を扱った小特集の記事の一つです。
最初は、政治家の裏金問題を受けた政治資金監査への対応がダメだと言っています。
「裏金批判が巻き起こっていた23年末から24年を通しては、本来であれば、公認会計士が「政治腐敗の一掃」という大義を堂々と掲げ、政治資金監査の対象拡大と厳格化を国に要求し得る千載一遇の好機だった。ところが国会で特別委員会が設置され、政治資金規正法の強化が議論されていた24年4月12日のタイミングで、公認会計士の自主規制機関である「日本公認会計士協会」が茂木哲也会長の名で出した声明は、あらゆる意味で腰の引けたものだった。」
会計士協会の声明はこちらから→当サイトの関連記事。政治資金監査を拡充しても意味はないみたいなことを言っています。それでは、何か代わりの案があるのかといえば、何かあいまいなことをいっているだけです。声明では「しっかりとこの政治改革の議論に協力していく所存」と述べていましたが、法律改正(→当サイトの関連記事)を受けて、具体的に動きがあったのでしょうか。
個人的意見としては、政治資金監査を、通常の監査(監査基準に準拠したもの)と同等なものにするというのは、一部の大政党は別として、有効でも効率的でもないと思います。法改正で、政治資金を監視する「第三者機関」が設けられるようですが、そこが検査チームをつくって、各団体を定期的に検査し、問題があれば、第三者機関に報告し、第三者機関が検討、必要があれば問題点を公表し処分を行うと仕組みがよいのではないでしょうか。本当に政治資金の使途として適当なのかどうかといった、なかなか簡単に白黒つけられないような事項も、その第三者機関で超党派的に検討すればよいでしょう。ひとりひとりの監査人なり検査官なりは、個人としては、何らかの政治的信条を持っているでしょうから、完全に中立的な判断というのは難しいでしょう。チームや第三者機関として検討すれば、中立性・独立性はある程度確保できます。(会計監査において、1人の責任者と数人の補助者で結論を出すのよりは、よいとおもいます。)
会計士協会は、第三者機関に人を出したり、検査マニュアル作成を支援するなどして、支援すればよいのでは。
(ZAITEN記事でふれているジャーナリストの磯山氏の記事→「自民党裏金問題は「監査」の問題ではない? 会計士協会がわざわざ「会長声明」を出して責任逃れ」。その後に出た磯山氏の記事→「国民をバカにしている! 自民党が政治資金規正法改正で「外部監査強化」ではなく「第三者機関」にした許しがたい理由とは」)
2番目に取り上げているのは、会長選挙です。かつては、全会員による選挙で選出していて、官界からも一目おかれる大物会計士たちが就任してきたが、藤沼会長(太田昭和(現・新日本)出身)の時代に、役員選挙で当選した役員による「推薦委員会」方式に変わったそうです。こうした変更のきっかけは、記事によれば、トーマツを退職し、個人として立候補し、当選した中地会長時代に混乱があったことだそうです。そこで、今のような、完全に大手監査法人の事実上の持ち回りになったわけですが、各法人から送り込まれてくるのは、各法人でトップとして経営に携わった経験もない人物ばかりとなり、力を発揮できないまま任期を終える「レームダック化」がささやかれているのだそうです。引用されている業界関係者のコメントによれば、実質的に大手監査法人が選んでいる会長の人選からは、協会の会長などやったところで法人には一銭の得にもならないという本音が透けて見える(たしかに外部からもそのように見える)のだそうです。
(大手監査法人トップ経験者を協会会長に推したい筋の見方でしょうか。)
3番目は、自主規制機関としての協会のあり方や監査法人の姿勢にふれています。協会は金融庁(公認会計士・監査審査会)の決定の後追いで処分しているとか、クライアントの顔色ばかりうかがう監査法人が増えたとか、中小以下の法人は上場ゴールを目指す企業のサポートを請け負っているとか、といった話です。具体的な情報は特にありません。
最後に、今年の協会役員選挙にふれていますが、現時点では、選挙は事実上終わっています(たしか全選挙区無投票)。
あとは、推薦委員会で誰が選ばれるのかという段階です(もう決まっていると思いますが)。
特集の2つめの記事は、具体的な監査法人名を挙げて、不祥事を報じています。裁判沙汰になっているそうです。
「Mooreみらい監査法人に不正隠蔽疑惑」という記事です。
Mooreみらい監査法人(理事長が会計士協会常務理事)にかつて所属していた公認会計士(記事ではA氏)が、2023年に同監査法人を提訴したそうです。
この会計士は、期間1年の契約で、年間の勤務日数を決め、いくつかの会社(記事では実名を挙げています)の監査チームに属し監査を行っていました。しかし、3度目の契約期間の途中で、日数をいきなり減らされ、それに対して抗議したところ、翌月から業務の依頼を打ち切られてしまいます。
監査法人側はこれを業務委託契約の打ち切りとしているのに対し、A氏は雇用契約の一方的解消である解雇であり、労働契約法違反だとして、未払い賃金支払いを求めて裁判を起こしたという事案です。
問題の契約が、業務委託契約なのか、それとも、雇用であるのに、業務委託を仮装した「偽装請負」なのかが論点になっているそうです。もし偽装請負であれば、(裁判の論点ではなさそうですが)消費税や源泉所得税にも影響し、税理士法人をグループ会社に持つ監査法人として、どうなのか、という話になります。
記事では、A氏が時給単位で働いていた事実からすると、労働者性があり、監査法人の理屈には無理があると見ています。監査法人側は、監査基準に従って、補助者に対する指示、指導、監督を行っているだけで、雇用契約ではないと主張しているそうです。
いわゆる監査のパートは、他の法人でも同じような問題がありそうですが、労働契約と業務委託と、どちらの契約が多いのでしょうか。雇われる側の所得税からすると、労働契約で給与所得とした方が、有利だと思われるのですが...
また、この裁判の派生論点として、監査調書の改ざんの問題があるそうです。
A氏が担当していた会社の監査で、海外法人への投資の減損を検討する手続が必要となりましたが、資料の入手が遅れて、その部分の調書の作成が大幅に遅れてしまいました。ところが、A氏は、その監査チームの責任者から、調書作成の日付を実際より6か月も早い日付に改ざんするよう命じられ、しかたなくそれに応じます。ただし、A氏は、実際の作成日がわかるように写真を残しておいたそうです。
記事全体として、A氏の証言に基づく部分が多いので、すべて正しい内容かどうかはわかりませんが、日付改ざんの問題などは、もし本当なら重要な事項です。
ZAITENから監査法人にも取材したところ、監査手続懈怠の事実はない、個別の内容は守秘義務により回答しかねると答えがあったそうです。
特集の3本目の記事は「新あの人の自宅」ということで、会計士協会会長の自宅が紹介されています。フジテレビの相談役の邸宅の10分の1ぐらいの大きさかもしれませんが、東京23区の戸建て住宅(ローンも完済)というのはうらやましい。