会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

賠償ゼロ計上「資産超過」東電決算、監査法人「適正」意見の背景(朝日より)

賠償ゼロ計上「資産超過」東電決算、監査法人「適正」意見の背景(注:全文は読めません。)

東京電力2011年3月期決算の監査意見を取り上げた解説記事。

市民団体が「監査人は意見の表明を差し控えるべきだった」と主張し、日本公認会計士協会に見解を求める書面を送ったそうです。

「東電の今年3月期決算について、同社の会計監査人である新日本有限責任監査法人の対応が注目されていたが、同監査法人は5月24日、無限定適正意見を表明した監査報告書を東電に渡した。その監査報告書には「追記情報」として、東電の決算の「財務諸表に関する注記事項」「継続企業の前提に関する注記」とほぼ同じ内容が記載されている。

これについて、株主オンブズマンのメンバーの一人、松山治幸・公認会計士は5月28日、「誤った判断だ」と新日本の対応を批判する書面を日本公認会計士協会に送った。

 発生した事故による賠償額は合理的に見積もり、必要と判断される額を損失として計上するのが原則です。しかし、本件では合理的に見積もることが出来ないため計上されておりません。これは重要な未確定事項に該当します。重要な未確定事項が存在する場合には、監査意見の表明は不可能になります。意見不表明、意見差控に該当します。」

「松山氏は取材に対し、・・・・「実際の東電の財務内容はだれにも分からない状況なのだから、監査法人も『分からん』と言えばいいのに、『適正』と言うとは、思い切ったことをやるものだなと思う」と話している。」

記事の中でも引用されていますが、監査基準の報告基準では以下のように規定しています。

「監査人は、将来の帰結が予測し得ない事象又は状況について、財務諸表に与える当該事象又は状況の影響が複合的かつ多岐にわたる場合には、重要な監査手続を実施できなかった場合に準じて意見の表明ができるか否かを慎重に判断しなければならない。」

東電決算で、引当金の計上要件に当てはまらなかったから賠償金の引き当てを行わなかったというのは、形式的には会計基準に合致し、決算は適正だったといえるのかもしれませんが、財務諸表の利用者に企業の財政状態について誤解を与えないという意味で適正だったかどうかは、よくわかりません。

会計士協会の見解を知りたいところですが、個別案件に協会が意見を述べることはないと思われますので、多分何も出てこないでしょう。
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