コロナ補助金で急拡大! 都心超一等地ビルに移転したコンサル会社の「計算違い」
北浜グローバル経営というコンサル会社の倒産(→当サイトの関連記事)を解説した記事。
「補助金申請をはじめとする中小企業向けコンサルティングを手がけていた北浜グローバル経営株式会社(以下、北浜G)が、2024年5月24日に大阪地裁へ自己破産を申請し、同日破産手続き開始決定を受けた。コロナ禍が追い風となり、再建を目指す中小企業の補助金申請をサポートしながら急成長を遂げていたが、補助金をめぐる行政方針の変更に翻弄され、破産に追い込まれた。ただ、最大の蹉跌は、身の丈を超えた積極経営によって、サービスの質の低下を招いたことだった。」
金融機関との提携により業績を伸ばしていましたが...
「世の中が経済正常化に向けて動くなか、受託案件数は順調に伸びていたものの、時代は人手不足。北浜Gも徐々にスタッフ不足が深刻になり、金融機関経験者などの転職組を受け入れつつ、経験の浅い“初心者”も取り込んだ。
それでも足りない分は、懇意の中小企業診断士やフリーランスなど外部に委託し、何とか案件処理を進めざるを得なくなり、委託コストも増加。とにかく人員を確保して、積み上がった仕事を処理することが、最大の経営課題になっていた。
そこで、2022年7月に、阪神電車・大阪梅田駅と地下で直結する「大阪梅田ツインタワーズ・サウス」に本店を移転。その2ヵ月後には、東京支社を東京駅から徒歩1分の場所にある「TOKYOTORCH 常盤橋タワー」へ移転した。」
大阪の本店の家賃は月およそ3000万円とのこと。
資金面では、もともと、支出先行型の資金の流れだったそうです。
「補助金申請コンサルを始めたころの報酬体系は、完全成功報酬型。事業計画や資金計画の作成などをサポートし、無事に採択されたことを条件に「成功報酬」を受領する決まりだった。つまり、着手から採択までの間に要したコストが先行支出となり、成功報酬で回収する資金パターンで、受託案件が増えれば増えるほど、営業キャッシュフローのマイナスが大きくなる状態にあった。」
それでも、補助金が順調に採択されれば問題なかったのかもしれませんが、その採択率が急落したそうです。
「2023年秋には、歯車の回転が完全におかしくなった。9月に事業再構築補助金の第10回公募の採択結果が公表されたが、北浜Gが申請に関わった案件の採択率はわずか15.3%。見込んでいた成功報酬が得られない事態となった。
さらに、第11回公募からは、行政方針の変更により補助金審査が厳格化され、申請資料が増加したり複雑化したりする事態となった。また、代理申請へのチェックも厳しくなるなど、申請にかかる負担が大幅に増加。さらに、採択発表が大幅に延期されたうえ、全体の採択率も26.4%とかつてないほどの低水準となった。」
毎月2億円以上の赤字が継続し、取引債務や公租公課の支払いが困難となる状況になったそうです。
記事では「本店を一等地に移転した経営判断が最大の誤り」だとしています。
(ちなみに、新日本監査法人 大阪事務所は、大阪梅田ツインタワーズにあるようです。)
なぜ「経営のプロ」が倒産? コンサル倒産が過去最多の理由 野良コンサル、細分化、大手リストラの波…(AERA)
「友田氏によると、昨年最も規模の大きかったコンサルの倒産は、大阪を拠点にする北浜グローバル経営の破産で負債総額は20億円を超えたという。その原因は過剰に人を増やしすぎたことにあったと考えられる。」
「「この会社は、中小企業向けの補助金獲得支援のコンサルティングに強みを持っていたため、コロナ禍の補助金獲得ニーズを背景に急成長したのですが、その需要が剥落して事業が回らなくなったと想像されます。というのも、北浜グローバル経営の2020年の正社員数は10人だったのに、2023年には250人へと3年弱で25倍にまで急増していました。パートやアルバイトも加えると計350人です。急激にコンサル需要が衰えたら、人件費負担だけで資金ショートを起こすのは当然でしょう」(友田氏)」
「実は、コンサル歴30年のベテランである鈴木氏も倒産の影がチラついた時期があったと話す。
「一般に、コンサルは大きな初期投資が不要で簡単に始められるように見えますが、20年以上前に私が起業したときには2000万円ほどの初期投資がかかりました。創業したばかりなので、事務所を借りる際には6カ月分の敷金を要求され、さらにオフィス家具やパソコン、FAX、コピー機、インターネット回線契約などで予想以上にお金がかかったんです。加えて、始めてみると、なかなかお金が入ってこない。コンサル料はプロジェクトが完了しないと入ってこないからです。一方で、プロジェクトに対応するために付き合いのコンサルに声をかければ、人件費がどんどんかかる。そのため、私も銀行から5000万円を借り入れていた時期がありました」
鈴木氏によると、独立系コンサルタント会社でも幹部クラスの年収は2000万~3000万円に。中堅クラスでも1000万~1500万円というのが相場だという。
「コンサルを5人抱えたら、それだけで給与と福利厚生費込みで月に600万~700万円はかかる。その規模になると、事務所に応接室や会議室が必要になるため、月々の家賃は100万円を超えてくるでしょう。新たな技術や知識、スキル習得のために各種セミナーに出席して最新トレンドを学ぶための投資が必要になるほか、週3、4回は経営者などと会食をして情報収集する必要もある。その結果、キャッシュフロー面では毎月1000万円程度のお金が出ていく構造になるのです」」