会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

日本勢、重要契約開示遅れ 千代建株、米LNG合弁相手破綻で下落 専門家「リスク説明を」(日経より)

日本勢、重要契約開示遅れ 千代建株、米LNG合弁相手破綻で下落 専門家「リスク説明を」(記事冒頭のみ)

米国の巨大プロジェクト建設工事のJVに千代田化工建設とともに加わっていたザグリ・ホールディングスの破綻(→当サイトの関連記事)に関連して、日本企業の重要契約開示が不十分だという指摘があるという記事。

「千代田化工建設で液化天然ガス(LNG)プロジェクトを巡る混乱が続いている。5月に合弁相手が経営破綻し、追加費用のリスクが懸念される。2024年3月期決算の発表を延期し約1カ月が過ぎたが全容はみえず株価は軟調だ。日本では重要な契約に関して株主への情報開示が遅れているとの指摘もある。

懸念の対象は契約額が100億ドル弱(約1兆5000億円)の「米ゴールデンパスLNGプロジェクト」だ。」

「工事はEPC(設計・調達・建設)」という契約形態で大抵、契約額を上回った分は工事を担うプラント会社が負担する。」

問題になっているプロジェクトでは、2022年半ばに24億ドルの追加費用が見込まれていたそうです(ザクリ社の裁判所提出資料)。

巨額の追加費用(今はもっと増えているかもしれない)ですが、これを顧客が負担するのか、あるいはJVが負担するのか(JV負担があれば、千代田化工建設にも回ってくるでしょうし、ザクリ社は破綻してしまったので、その負担分まで追加して負担するかもしれない)、まだまだ不透明なようです。

「今後は、協議で決まる追加費用の負担割合が焦点になる。」

有報における重要契約の開示について、2人の弁護士がコメントしています。ひとりは、日本は重要な契約について有報での開示が遅れているといっています。米国企業では、EPCの契約を開示している例があるそうです。もうひとりも、「重要契約に起因するリスク分析やその対処にかかる説明が伴うなら、詳細開示を事前に行う姿勢は投資家からの評価にもつながるだろう」と、これも開示に積極的なコメントです。

もっとも、日本の建設工事でも、契約額を上回った原価は工事を担う業者側が負担するのが普通でしょう(特別な事情がある場合は別でしょうし、契約条件次第ではありますが)。それを全部開示していたら、重要契約だらけになってしまうかもしれません。もちろん、東芝が米国の原子力発電所などの巨大プロジェクトの失敗のせいで、破綻寸前にまで追い込まれた事例もあるので、開示に意味がある場合もあるでしょう。

この問題に関し千代田化工建設は何回かリリースを出しています。その最新のもの。

(開示事項の経過 3)「2024 年3月期決算発表延期のお知らせ」に関して(PDFファイル)

「引き続き、顧客、CB&I 社および CIC 社は、裁判所による Zachry 社の本プロジェクトからの離脱に関する裁定が正式に為された場合に備えて、本プロジェクトの継続のための短期的な遂行プランおよび完工までの長期的な遂行プランの双方について協議を継続しており、早期の合意を図るための準備を進めております。

これらの協議および準備を更に加速し進めるとともに、決算数値取り纏めを慎重に行い、決定後直ちに開示いたします。」

(CIC 社は、千代田化工建設のグループ会社、CB&I 社は、JVのパートナーです。)

裁判所が決めてくれないと、先に進めないのでしょう(工事は止まってしまわないよう工夫しているのかもしれませんが)。

決算は、裁判所も含めた当事者間の協議結果次第ということなり、まだまだ締めることができないのかもしれません。(監査人の意見不表明を覚悟すれば、できないこともない?)

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