会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

特別調査委員会の調査報告書受領に関するお知らせ(大豊工業)

特別調査委員会の調査報告書受領に関するお知らせ(9月26日)(PDFファイル)

(やや古くなりましたが)東証1部上場、大豊工業の特別調査委員会の調査報告書受領に関するプレスリリース。

北米子会社であるタイホウ コーポレーション オブ アメリカ(TCA)の不正疑惑を調べていましたが...


「TCA では、財務会計上の材料費の払出記録が取られておらず、損益計算書上の材料費原価は、購入した材料費に材料の期首と期末の在庫差額を加減して計算している。材料費の払出記録がないことから、期末在庫は実地棚卸によってのみ把握されることになるため、TCA における実地棚卸は、財務会計上の適正な材料費を把握するための要の手続となっている。しかし、当委員会の調査の結果、TCA において、決算期末の実地棚卸の結果に基づく棚卸資産額と財務情報上の棚卸資産額に大きな乖離が生じていることが判明した。

すなわち、TCA の経理マネージャーであり、TCA の経理処理全般を担当している A 氏は、TCA の決算数値を取りまとめる際に、損益の実績値と収支計画に基づく計画値との間に生じた差異のうち、合理的な理由を見い出せなかった部分につき、TCA の棚卸の結果が正しくないと決めつけ、棚卸の結果を調整して財務情報上の棚卸資産額とすること(以下「本件調整行為」という。)によって、合理的な理由の見つからない差異を解消していた。その結果、実地棚卸の結果に基づく棚卸資産額と財務情報上の棚卸資産額との間に大きな乖離が生じた。」

A氏の説明によると、こうした調整は、専ら計画値と実績値の説明ができない差異を回避することが目的で、利益捻出などその他の目的はなかったとのことで、調査委員会の調査でも、それを認めているようです。

現地の監査人には、調整後の棚卸資料を渡していたそうです。一応、棚卸の生データも渡していましたが、監査では使わなかったのでしょうか。

「TCA は、大豊工業の会計監査人のグローバルネットワークのメンバーファームの米国法人(以下「米国監査人」という。)との間で会計監査の契約をしており、決算期末に当該米国監査人による任意監査を受けていた。この契約はあくまで任意であり、金融機関からの要請により締結したものである。

A 氏は、決算期末の実地棚卸が行われた後に、棚卸の結果を記載した Input Sheet を米国監査人の担当者に渡していた。この Input Sheet は、A 氏による調整が行われる前のものであった。通常、Input Sheet を確定するには実地棚卸の後に 2、3 日を要するが、A 氏としては、棚卸直後の生データを提供する目的で、確定前の Input Sheet を仮の状態で担当者に渡していた。

その後、本件調整行為を行った A 氏は、棚卸から数週間後の年明けに米国監査人による期末監査を受けるに当たり、自身による本件調整行為が監査により発覚することを防ぐため、米国監査人に対し、在庫数量の調整を行った Input Sheet、Inventory Book 及び調整後のタグを渡していた。」

(すべてがA氏の責任といった感じになっています。ちょっと気の毒...)

過年度の有価証券報告書等の訂正報告書の提出及び過年度決算短信等の訂正並びに過年度の特別損失の計上に関するお知らせ(9月30日)(PDFファイル)

問題の子会社の棚卸資産だけでなく、大きな派生的な影響が出ています。(棚卸資産の影響額は数億円)

「 連結子会社における固定資産の減損損失 (連結)

当社の海外連結子会社であるタイホウ コーポレーションオブアメリカにおいて、2018 年3月期以降の売上原価及び棚卸資産の金額見直し等、必要と認められる訂正を行ったことに伴い、同社の固定資産について減損の兆候が認められたことから、回収不能見込額について2018 年3月期の連結決算において減損損失1,430 百万円、2019 年3月期の連結決算において減損損失472 百万円を特別損失として計上致しました。」

「関係会社株式評価損、債務保証損失引当金繰入額、貸倒引当金繰入額(個別)

上述の背景による同社の財政状態悪化に伴い、2018 年3月期の個別決算において、同社株式に関する関係会社株式評価損922 百万円、同社への債務保証に関する債務保証損失引当金繰入額1,930 百万円を特別損失として計上致しました。 また、2019 年3月期の個別決算において、同社株式に関する関係会社株式評価損610 百万円、同社への貸付金に関する貸倒引当金繰入額989 百万円、同社への債務保証に関する債務保証損失引当金繰入額85 百万円を特別損失として計上致しました。

なお、 個別決算で計上される特別損失は連結決算では消去されるため、 連結業績に与える影響はありません。」

全体への影響は...(2018年3月期の例)



個別決算の方が、より大きな影響額(2019年3月期、純資産ベースで約45億円)が生じています。

よくあるパターンですが、内部統制報告書も訂正しています。

内部統制報告書の訂正報告書の提出に関するお知らせ(9月30日)(PDFファイル)
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