会計士の肖像「変革の時代だからこそ、監査人としての気概、泥臭さみたいなものは、改めて重要だと思う」
公認会計士の浜田康氏(元証券取引等監視委員会委員)への長めのインタビュー記事です。
「本号の巻頭インタビューは、公認会計士の浜田 康 氏です。...
その後、当時の中央会計事務所に就職。経験を重ねていくうちに、監査業務に大きなやりがいを感じるようになります。会計士業界は経済活動の高まりに伴い、多様化・国際化し、中央会計事務所も幾度の合併や名称変更を経て「中央青山監査法人」に。しかしカネボウ粉飾決算事件が発覚し、同監査法人は廃業。その後、あずさ監査法人に移籍した同氏は本部理事に就任し、退職まで監査の前線に立ち続けました。
退職後は長銀、三洋電機、東芝の粉飾決算問題を徹底検証した書籍『粉飾決算』などの執筆活動に尽力。その後、証券取引等監視委員会委員、そして現在は、日本公認会計士協会の自主規制モニター会議委員を務めるなど精力的に活動を続けています。」
最後の方から、何カ所か引用させてもらうと...
「長く監査畑にいて、様々な会社を見てきましたが、絶対的に言えるのは、潰れない健全な会社が経済を支えているということ。そして、会社同士のビジネス、取り巻くステークホルダーとの関係において、そこに信頼関係があるからこそ、経済は好循環するのです。それが不変の真実なのに、粉飾はどうにも跡を絶ちません。一時の安寧を与える粉飾は、麻薬のようなもの。会社の正常な倫理観を麻痺させ、やがては再起不能になるまで蝕んでいきます。株主だけでなく、従業員や取引先、零細な下請けや外注先にとって、避けられたはずの不幸が起きるのです。」
「昨今は、制度改革の波やコロナ禍の影響を受けて、監査の環境も変わってきました。会計士も難しい職業になっているかもしれません。大手の監査法人においては、場合によっては、PCに入っているプログラムを実行しているだけで一日が終わるという話も聞きます。もちろんIT化によるメリットはあるけれど、詰まるところ、粉飾決算は誰がやるんですか?という話。AIが指示するわけじゃないでしょう。経営者なり、財務部門の責任者なりが、「経営が危ないから決算を偽らざるを得ない」と発案するわけです。どんなにIT化が進もうと、粉飾を思いつくのも実行するのも人間なんです。
やはり対面で話し、この人が言っていることは本当かな、信用できるかなと慮りながら、深く掘り下げていくのが監査の本質。そうした監査人としての気概、泥臭さみたいなものは、今のような時代だからこそ、改めて重要だと思いますね。」