東芝粉飾事件に関する同社第三者委員会報告書(要約版)が、7月20日、同社ウェブサイト上で公表されました。
報告書および会社のプレスリリースによると、不正の影響額は、税引前利益への影響額でいうと、2014年12月までの累計(純額)で、1,518億円(利益過大)となります。2014年3月期末でみると、1,822億円です。
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(第三者委員会報告書(要約版)より)
工事関係の事案については、工事ごとに詳しく検討しています。
これを見ると、現場ではきちんと工事の状況を把握していたようですが、カンパニー社長(実名も書かれています)やトップの意向を忖度し、損失計上に踏み切れなかったという感じです。カンパニー社長やトップ層も、報告を受けているようなので、実態を知っていたようです。CFOや財務部長も報告を受けていました。
1件(海外子会社のG案件)は、2013年度第3四半期決算で、監査法人が約1億ドルの指摘を行っていますが、重要性の範囲内の未修正差異として、済ませてしまったようです。報告書では、会社側が、監査法人に受け入れられる水準まで不正金額を抑えたとみています。本決算では解消されています。
監査人はこの案件の不正を受けて、他の工事案件のリスク評価と監査手続は見直したのでしょうか。それとも、単発の不正とみて、見逃してしまったのでしょうか。
工事関係の売上を持つ会社やその監査人の人は、これらをケーススタディの材料にして、工事関係の損失計上に関する相場観を養うのがよいかもしれません。
PC事業の部品売上は、いわゆる有償支給の取引です。報告書によると、外注先への部品支給時に、調達価格の5倍もの利益(製造原価のマイナス)をいったん計上(支給価格に含める)し、その後、外注先からの完成品納品時に、その利益を消去(製造原価のマイナスを消去)して、完成品在庫金額とする処理を行っています(子会社を通しているので実際はやや複雑)。したがって、支給時から完成品納品時までの間、未実現の利益(買い戻し条件付き販売による利益)が計上されることになります。
報告書では、この会計処理方法自体ではなく、利益水増しのため、部品の押し込み販売が行われたことを問題としています。経営トップの関与も認定しています。
これは、PC事業の月別売上・営業利益の推移のグラフです。青が売上、赤が利益です。決算月の利益が膨らみ、翌月には大きな赤字になっているのがわかりませす。これは、いくらなんでも、おかしいと気付かないといけないのでは。
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(同上)(報告書では末尾の別紙3)
報告書(要約版)本文でもふれていますが、利益が売上高を超えている月もあります。
半導体在庫評価では、評価損の計上遅れ約80億円(2013年度に廃棄損として損失計上)があったほか、標準原価と実際原価の差異の配賦や、標準原価の改訂で、おかしなことをやっていたようです(まだよく理解できていません)。
そのほか、映像事業やPC事業では、キャリーオーバー(宝くじではありません)と称する損益調整を長年やってきたそうです。いろいろな粉飾パターンがあって、委員会も調べきれていないもようです。
原因論のまとめとして、会計監査人監査についてもふれています(報告書69ページ)。全体としては、監査人に同情的な書き方です。ただし、監査の妥当性を検討することは、目的としていないと断っています。
第三者委員会のメンバーは4人で、うち1名は元公認会計士協会副会長です。デロイトトーマツが80人近く、補助者として加わっています。
会社プレスリリースでは、第三者委員会調査分以外に、自主調査分として44億円利益過大(2014年度3Q現在)があったことを公表しています。
また、過年度決算修正に際して、固定資産の減損処理や繰延税金資産の評価見直しを検討すると述べています。関連する資産の金額も以下のように示されています(2014年12月末)。
固定資産減損関係
パソコン 110億円、ディスクリートシステムLSI等 1,310億円
税効果
長期繰延税金資産 1,500億円