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「上場有価証券の評価損に関するQ&A」のQ2に関する監査人の対応

日本公認会計士協会 / インフォメーション / 国税庁が公表した「上場有価証券の評価損に関するQ&A」のQ2「監査法人のチェックを受けて継続的に使用される形式的な判断基準」に関する監査人の対応について

日本公認会計士協会は、「国税庁が公表した「上場有価証券の評価損に関するQ&A」のQ2「監査法人のチェックを受けて継続的に使用される形式的な判断基準」に関する監査人の対応について」という文書を業務本部長名で2009年4月20日に公表しました。

結論部分は以下のとおりです。

「・・・「監査法人によるチェック」は、監査人が、財務諸表監査の過程における繰延税金資産の計上金額や回収可能性、法人税等の計上金額等の検討において必要と認められる手続を実施する中で、異常な加算・減算項目等の有無を確認するといったものを想定しており、新たに追加的な手続(例えば、加算項目及び減算項目の精査)を実施することや、財務諸表監査の枠外で新たな業務(例えば、税務上の計算過程に係る保証業務や合意された手続による業務)として手続を実施し、その結果について報告書を発行するというようなことを想定しているものではありません。」

税務調査対策のためメモでも書いてほしいと会計士がクライアントから依頼されるケースもあるかもしれませんが、それもダメだということでしょう。

当サイトの関連記事(国税庁のQ&Aについて)

そもそも有価証券の評価損の金額(そしてそれが税務上損金になるかどうか)と、税効果会計が関係あるようにQAで書いてあるのが、つじつまがあわないもとになっています。

監査人は有価証券の評価損の金額をチェックする際には、金融商品会計基準やその実務指針に照らして判断しており、税効果会計は関係ありません。

税金に関する監査では、税効果会計の前に、まず当期の税金の金額を確かめる必要があります。それは税法に基づき加算・減算を行って正しく計算されていればいいわけですから、この段階でも繰延税金資産の回収可能性がどうのこうのという話は出てきません。

税金計算の後の最終段階で初めて税効果会計をどのように適用するかという問題になるわけですが、あくまで「個々の会計処理→税金計算→会計処理と税務計算の差異に対する税効果会計の適用」という流れであり、税効果会計の検討結果で、評価減のような個々の会計処理が決まったり、納めるべき税金の金額が左右されたりすることはありません。

国税庁のQ&Aは非常に高度なことが書いてあるのか、それとも、税効果会計への理解が足りないまま書いているのか、よくわかりません。
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