「米国企業が環境や多様性に配慮する姿勢を相次いで後退させている」のは問題だという日経社説。
「急速に広がっているのは、金融機関や資産運用会社が脱炭素の国際的な取り組みから離脱する動きだ。直近では資産運用会社のブラックロックが、投資先に温暖化ガスの排出削減を促す組織から脱退することが明らかになった。
多様性の分野では、米メタが性別や人種などに配慮するDEI(多様性、公平性、包摂性)関連のいくつかの施策を廃止する。テック企業のほかにも、大手小売りのウォルマートや飲食のマクドナルドなど、業種を超えて同様の動きが広がっている。」
日本企業に対しては...
「米国に影響されやすい日本企業は、環境問題などへの取り組みが鈍ることがあってはならない。重要な経営課題としてきた以上、手のひらを返すように引っ込めてしまっては、従業員や消費者、そして株主の信頼までもが揺らぎかねない。経営の軸をしっかり保ってほしい。
特に国際的にみて立ち遅れている女性活用について、日本企業はむしろ加速させるべきだ。」
もちろん、トランプが日本の新聞がいっていることを気にするはずもありません。
米政権、反DEIで官僚機構再編 トランプ氏「実力主義の国」訴え(ロイター)
「トランプ米大統領の命令を受けて政権は官僚機構を再編し、DEI(多様性、公平性、包摂性)に基づいたプログラムを廃止し、約160人の国家安全保障会議(NSC)のメンバーを異動させた。トランプ氏は性別やLGBTQ+(性的少数者)、DEIなどに基づいた連邦政府の雇用に対する反対姿勢を公言している。
トランプ氏はスイス・ダボスでの世界経済フォーラムの年次総会(ダボス会議)で上映された動画メッセージで、DEIプログラムを廃止する命令は米国を再び「実力主義の国」にすると訴え、「政府と民間企業を通じてこれらは絶対に意味のない政策だ」と主張した。」
日本の大手監査法人グループの経営方針は、所属するグローバル組織の影響が大きいと推測されます。グローバル組織の中心は米国でしょう。その米国の政府や企業が考え方を変えるとなると、日本にもそれなりの影響があるのでしょう。手のひらを返すようなことはしないとは思いますが...(急に「実力主義」を言い出したりするかも)。
こちらも最近の日経社説です。
「トランプ米新大統領が気候変動対策の国際枠組み「パリ協定」からの離脱を決め、大統領令へ署名した。再生可能エネルギーへの政府支援を大幅に縮小する一方、自国内の化石燃料を「掘って、掘って、掘りまくる」と宣言した。」
「米国は途上国の脱炭素化の一大支援国だが、トランプ氏は資金拠出を拒む構えだ。世界の平均気温上昇を産業革命前から1.5度以内に抑えるというパリ協定の目標達成は、すでに待ったなしの状況にある。停滞は取り返しのつかない結果を招きかねない。
背を向けるのは国際協調だけではない。「高いエネルギー価格が国を弱体化させてきた」とエネルギー緊急事態を宣言した。バイデン前政権が進めた気候変動対策への補助金や風力発電の許認可、電気自動車の普及支援を撤回し、代わりに石油・天然ガスの大幅増産と輸出拡大を指示した。
再生エネ支援の凍結範囲は不透明だが、水素・アンモニアなど脱炭素燃料の調達先と当て込んでいた日本企業は計画見直しを迫られる恐れがある。半面、比較的低炭素な液化天然ガスの輸出が増えれば、世界のエネルギー安定供給にはプラスとなろう。」
会計士・監査法人業界的には、サステナ開示への影響が注目されます。
純粋な財務開示であれば、企業の実態を正確に開示するという点において、政治問題となる要素は少ない(かつては時価会計が不況をもたらすみたいな論調も一部にありましたが)といえますが、サステナ開示は、実態開示というだけでなく、開示させることによって、企業を一定の方向に誘導しようという意図が濃厚です。政治的な論争のターゲットになるおそれは大いにあります。