金融安定化フォーラム 世界的な市場混乱に中間報告

金融安定化フォーラム　世界的な市場混乱に中間報告

日米欧など主要国金融当局の集まりである金融安定化フォーラム（ＦＳＦ）が、世界的な金融市場混乱の要因と対策に関する中間報告を行ったという記事。

金融庁のホームページにこの報告の原文と日本語訳（概要）が掲載されています。

金融安定化フォーラムによるＧ７への中間報告書の公表について

この中で会計や開示に関係する部分をピックアップしてみました。

「（短期的対応）

・ 当面の喫緊の課題は、金融機関の信頼性を回復することであり、これは十分な市場流動性と信用仲介を再構築するための必要条件である。市場参加者及び政策当局は以下を含む短期的な信頼構築のための行動について優先的に対応すべき。

（１） 現実的な資産価格の算定が、資産市場の流動性や市場ベースの信用仲介を回復するために決定的に重要。

（２） 金融機関等は、価格評価と損失予想額が適切かつ比較可能なものとなるよう、リスク・エクスポージャーやその計測方法について明確な情報開示を行うべき。」

これの箇条書き部分の原文は以下のとおりです（強調は当方でつけました）。ちなみに、「金融機関等」という箇所は、「金融機関と監査人」になっています。金融庁によると、監査人（金融機関を監査している会計士や監査法人のことを指しているのかどうかはわかりませんが）は「等」扱いのようです。

• Realistic asset pricing is critical to restore asset market liquidity and market-based credit intermediation. Firms need to recognise the realistic market value of their assets and the uncertainties that exist around those values. The sooner this happens, the sooner buyers will return and the overhang in markets will clear.

• Financial institutions and auditors have worked together to improve valuation approaches and risk disclosures for structured products in end-year financial accounts. But further work is needed in the near-term to provide confidence to markets that valuation practices and related loss estimates are adequate and allow for more meaningful comparisons. Firms should provide clear disclosure of their risk exposures and the methodology used in determining these exposures. Securities regulators and supervisors are taking steps to encourage appropriate disclosure, and should develop and enhance existing arrangements to share information with each other and with central banks on key firms.

「（４） 市場の透明性

・ 金融機関は、証券化商品やオフバランス機関に関連するものも含め、リスク・エクスポージャーや価格評価についての開示情報を改善する必要がある。

・ 特に市場の流動性が低下した局面における、価格評価手法やそのインプットとして用いるデータは更なる改善が必要。業界団体、基準設定機関、監査人がこれに取り組むべき。

・ バーゼルＩＩの第三の柱に位置づけられている情報開示義務は、銀行の透明性やリスク管理慣行を強化するために効果的な手段。バーゼル委員会は第三の柱による情報開示の適切な実施を促すとともに、更なる強化が必要かどうか検討すべき。」

全体として、金融商品の評価やその開示に焦点が当たっています。適切な評価額（時価）がわからないために、取引がストップしてしまい、資金が循環しなくなることを心配しているようです。日本で、会計学者が「時価会計不況」といった本を書いているのとは、全く逆の考え方です。

そのほか金融機関がスポンサーとなっているオフバランスシート取引に使われる事業体（特別目的会社）の開示にも、ふれています。連結範囲の問題に飛び火することが予想されます。