(前編)決算期の地銀と中小企業を追い詰める「地獄の手入力作業」が時代遅れすぎて話題に(要無料登録)
(後編)“仕事をした気”にさせるエセDXに要注意!地銀に蔓延する「誰得のアナログ仕事」の衝撃実態とは?(同上)
金融機関における取引先企業の決算書(8割強が紙だそうです)に関する業務のやりかたが時代遅れだという記事。
「野村総合研究所(NRI)が、地域金融機関などで処理される取引先企業の決算書に関する業務を分析した。その内容は、「東京・ハワイ間」に及ぶ2000万枚の紙を、毎年消費しているという衝撃的なものだった。」
「調査結果によれば、顧客企業・事業者からの決算書の入手は紙ベースが86.4%で、このうち決算書の原本である「現物」が59.2%、「コピー」は27.2%だった。9の金融機関がいまだに「現物での入手が100%」と回答したという。つまり、コピーは認めない「現物しばり」であるということだ。」
金融機関で行われている実際の作業は...
「金融機関は紙の決算書を入手して、どのようなオペレーションをしているのか。
営業店は入手した紙の決算書を複合機でスキャンし、PDFデータに変換した上で、本部に送る。本部は、画像データのテキスト部分を認識し、文字データに変換するOCR(Optical Character Recognition)を使った登録作業を行うのが一般的だ。
このほか、手入力で対応する場合は、ほとんどが営業店の人員で対応する。
調査によれば、法人企業の場合、OCR登録が60%、営業店の手入力が38%、上場企業などから送られてきたデータをそのまま取り込むデジタル対応はわずか2%にすぎなかった。
個人事業主では、手入力が67%、OCR登録が33%だった。」
「法人企業の決算書をOCR登録する際のエラー率が20%を超える金融機関は99先中50、個人事業主では52先中30もあった。回答した金融機関の実に半数以上で、相当なエラーが発生しているのだ。」
改善策は...
「そもそも「人の単純作業」という工数を減らさなければ意味がない。全ては決算書そのものを初めから電子化すれば済む話なのである。
金融機関が現物の決算書にこだわるのは、決算書の真正性を重視しているためだ。しかし、現実には「複数の決算書」を偽造されてだまされたという粉飾は後を絶たない。」
「ここは「紙の現物決算書=真正」という古い発想を変え、粉飾を防ぐためにもデジタル化を急ぐべきだ。電子証明の技術は確立している。電子証明付きのデジタル決算書こそ、粉飾を防ぐ上でも有効なはずではないか。既に国税電子申告・納税システム(e-Tax)は企業にも普及している。決算書の電子化は政府の後押しもあれば、あと少しでできるはずだ。
目指すべきは「データの標準化」である。決算書や取引データが一気通貫で電子化すれば、将来的には中小企業の商材・サービスの採算可視化も容易になる。金融機関は中小企業の予兆も把握できるし、金融当局も実効性のあるモニタリングが可能になる。」
もう一歩進めて、上場会社のEDINETのように、デジタル決算書を会社から法務局に登録して、金融機関は法務局のデータベースからダウンロードするような仕組みを作れば、かなりの部分、解決できるでしょう。(個人事業者は無理かもしれませんが)
そうすれば、会社側は一度登録すれば、いちいち紙の決算書を金融機関ごとに提出する必要はなく、金融機関側も、好きな時間に閲覧、入手できます。金融機関ごとに別々の内容の決算書を渡されて、だまされてしまうということもなくなります。
法人であれば、決算書は一般に公開すればよいと思いますが、それが難しいのであれば、会社が金融機関などに決算書閲覧権限を与えて、権限を与えられた者だけがダウンロードできる仕組みにすればよいでしょう。
政府ができないのなら、全国の金融機関がいっしょになって決算書登録データベースをつくり、取引先企業にはそこに登録してもらうことにすればよいでしょう。
もっとも、企業側では、決算書の何百倍、何千倍(あるいはそれ以上)もの紙による作業が行われているわけで、最終的な決算書の部分だけ電子化することに、それほど意味はないのかもしれません。記事でいっている「データの標準化」は、企業によって環境が違いすぎて簡単なことではないでしょう。もちろん、企業ごとの状況に応じて、電子化が進んでいる場合も多いでしょう。