ゼロ円で買収した会社が巨額減損の元凶に
東芝が米国での子会社買収で巨額損失の可能性があると正式発表したことを取り上げた記事。
「昨年末、子会社のウェスチングハウス社(WEC)が買収した米国の原子力建設会社のCB&I ストーン・アンド・ウェブスター社(S&W)が今回の震源地だ。
買収価格はゼロ。S&W社の資産を勘案し、WECが計上するのれんはこれまで約105億円としていた。が、改めて精査したところ、計上すべきのれんは数千億円規模にのぼり、第3四半期でWEC及び東芝がその一部または全部を減損する可能性が出てきたという。
WECは米国で2地区4基の原発建設のプロジェクトを遂行中。これらのプロジェクトでは原子炉メーカーのWECとS&W社でコンソーシアムを組んでいる。
しかし、2011年の福島第1原発事故などもあり、世界的に原発プロジェクトのコストは増加、スケジュールは遅延する傾向にある。WECの米国プロジェクトでは、コンソーシアム内でコスト負担などを巡って係争が発生。さらにプロジェクトが遅れる悪循環に陥った。
のれんは買収金額が時価評価した純資産を上回る額を計上する。S&W社の買収金額はゼロ。つまり、これまでS&W社の時価評価した純資産を100億円程度のマイナスと見ていた。が、精査したら数千億円規模のマイナスだったということになる。」
ただより高いものはないということでしょうか。
しかし、不思議なのは、この子会社の決算書では、建設工事のコストが膨れあがりそうだということについて、何も反映されていなかったのかということです(買収前に決算書ぐらいは見ているはず)。もちろん、買収時の時価評価と、継続企業として会計基準に従い計上している引当金などの負債の金額とは、必ずしも一致しませんが、それでも、数千億円の差が出てくるものなのでしょうか。
また、会計基準上、取得価格の配分の確定まで1年間の期間が与えられているとはいえ、経営管理上は、当然、子会社のやっている請負工事の採算性を常にチェックしているはずですから、今になって始めて問題が明らかになるというのは、おかしな話です。記者会見によれば、別の建設会社に調べさせ、その結果が、WH社経由で東芝に伝えられたのが12月中旬とのことです。配分確定のための数値の報告ということではそれでもいいのですが、子会社の管理としては、もっと早く把握できたはずなのでは。東芝の管理能力自体が疑われます(管理できないような会社を買ってしまった?)。
焦点:東芝の巨額損失危機、原発の経営リスクで再建に暗雲(ロイター)
「WHが手掛ける米国での原子炉4基の建設工事で、「プロジェクト完成の見積もりコストが当初想定を上回る可能性が出てきた」と東芝側は説明。同社の畠沢守・執行役常務は、「原発は多種多様な設備や部品、様々な役務が非常に大きなボリュームで存在し、建設の見積もりは膨大な作業を要する」などと説明しつつも、コスト管理の見積もりの甘さは隠しようもなかった。」
海外子会社に死角、WHの買収に統治効かず(日経)
「WHと買収したS&Wは、もともと米国で複数の共同事業を手がけていた。ただ納期や規制変更に伴うコストを誰が負担するのかなどの問題が絶えず、納期遅れなどで顧客の電力会社から訴えられるというトラブルも抱えていた。
WHは15年、工事を円滑に進めるため、S&Wを傘下に入れて開発案件を一元管理しようと決めた。東芝側も「リスクを上回るメリットがある」(綱川社長)と黙認したようだ。外部の企業のままであれば避けられた損失を、グループ内に抱えこむ結果となった。」
「海外に成長の活路を見いだそうとする日本企業がM&A先で想定外のリスクに直面したり損失計上を迫られたりする事例が増えている。15年春には住設機器大手のLIXILグループが買収した独グローエ傘下の中国子会社で不正会計が発覚。多額の損失が出て16年3月期決算は連結最終赤字となった。「子会社の買収案件まで日本の親会社が厳格に統制するのは難しい」(大手監査法人幹部)というのが実情だ。」
CB&Iの米国子会社買収に伴うのれん及び損失計上の可能性について(東芝)(再掲)
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27日の記者会見の動画(1時間強)が含まれています。どの報道も、この会見を主な材料として書いているようです。通常の決算発表などと違って、気の利いたパワポの資料などはありません。
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