金融庁が金融機関の貸倒引当金について検討するという記事。
「金融庁は4日、金融機関による融資が焦げ付くリスクの見積もり方を見直す議論を始めた。現在は画一的な条件で区分が決まり、貸し倒れに備えた引当金を積んでいる。ただ企業の置かれた環境や金融機関の経営への関与の度合いでリスクは異なる。実態に応じて引当金を積むしくみを整え、実質的に将来の貸し倒れへの備えを強める。」
「引き当て基準などを盛り込んだ金融検査マニュアルを2018年度末に廃止するのに伴い、当局と金融機関の新しい「目線」をつくるとの位置づけだ。」
「金融機関や公認会計士などで構成する研究会を立ち上げ、4日に初会合を開いた。冒頭、金融担当の越智隆雄内閣府副大臣は「より的確な将来見通しに基づく引き当てを可能にする枠組みを含めて議論いただきたい」と述べた。」
「会合では「客観性を持たせないと、経営が悪い金融機関の粉飾決算の材料になりかねない」との意見も出た。」
画一的な債権区分で機械的に処理するのではなく、「実態を重視し、メリハリをつけた処理ができる仕組みづくりを目指す」のだそうです。
金融機関が資産査定を行うのは、融資などに関する合理的な意思決定を行うためでしょう。これまでは、金融庁の検査マニュアルがあって、どの金融機関も同じような方法で査定していたので、それを会計上の引当金見積りにも流用していただけなのでしょうから、マニュアルがなくなって、各金融機関が自らの合理的な意思決定のために自由に査定するようになる以上、元データは共通だとしても、会計独自の考え方による引当金見積り方法を開発しないといけないのでしょう。
日経記事が例に挙げているような、金融機関が経営再建に全面的に関与している先はリスクが低いという考え方を、会計上の見積りにまで影響させると、バブル崩壊後の、銀行が支援している不動産、ゼネコン、小売業などは、引き当て不要という実務に逆戻りしてしまわないのでしょうか。
そもそも、どういう方法で計上するのが「実態に応じて引当金を積む」ことになるのかという根本のところから検討してほしいものです。研究会のメンバーとスケジュール(マニュアル廃止までに?)からすると、たぶん無理とは思いますが。
融資に関する検査・監督実務についての研究会(第1回)議事次第(金融庁)
研究会のメンバーを見ると、ASBJの委員長と公認会計士協会常務理事のほか、会計士かどうかはわかりませんが、PwCの人が入っています。そのほかは、金融機関の人、コンサル、法律学者、会計学者(1人だけ)などです。
会計士協会も、日本の現行実務と海外基準とを比較した資料を最近公表していますが、こういう金融庁の動きを意識したものなのでしょう。
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