会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

1年後、決算短信からBSとPLが消える?(東洋経済より)

1年後、決算短信からBSとPLが消える?
中身より速さを優先、ディスクローズ後退か


4月に公表された金融審議会の「ディスクロージャーワーキング・グループ」の報告書に、決算短信から財務3表が消えかねない提言が含まれているという記事。

「「投資家が必要とする情報を効果的かつ効率的に提供するため」の検討課題に、株主総会日程の適切な設定などとともに挙げられていたのが、開示情報の重複排除だ。成長戦略2015に盛り込まれていたのは、開示時期が近接している四半期短信と四半期報告書の統合の検討だったが、この件は先送りされ、代わって遡上に上がったのが、決算短信の大幅簡素化なのである。」

「金融庁のHPにアップされている議事録や参考資料を見る限り、財界と証券界の見解は真っ向から対立している様に見える。最終的に四半期開示の廃止に持ちこみたい財界と、それを阻止したい証券界。その思惑がすれ違っている。今回は、証券界が短信の大幅簡素化という形で議論をすり替えたことによって、財界に一矢報いた感がある。」

「現在、決算短信のうち、上場会社に”開示義務”があるのは、実はサマリー情報のみだ。サマリー情報とは、1ページ目と、発行済株式数などが書かれた2ページ目のこと。それ以降の目次付きの部分は、実は任意開示だが、取引所の”要請”に従って、全上場会社が開示している。」

「だが、2017年3月期の決算短信から、つまり1年後からは、サマリー情報は開示義務がなくなり、経営成績・財政状態・今後の見通しの概況、財務3表とともに、”要請”対象になる。

そのうえ、財務3表については、「投資者の投資判断を誤らせるおそれがない場合」には、要請対象からもはずれる。」

記事では、このような改正が行われても、大半の上場会社は従来通りではないかという見方を紹介していますが、他方で、開示に消極的な会社も多いと心配しています。

決算短信が誕生したころ(1960年代後半)は、過去2期分の業績と今期の業績予想数値を記載しただけのシンプルなものだったそうです。そういう40年前の状況にまで逆行しかねないと批判しています。

記事でもふれているように、決算短信は取引所のルールなので、今後の取引所の規則変更案に注目する必要があります。

個人的な意見は、以下のとおりです。

・決算短信の簡素化は進めるべき。有報のミニチュア版みたいなものはやりすぎ。

・上場会社については、会社法計算書類と金商法の(連結)財務諸表は、一体化すべき。監査も同じ。以前のように、計算書類が単体決算だけであれば、金商法と開示時期がずれるのにも意味があるが、今は連結計算書類が含まれるので、有報と一緒でよい。

・一体化した上で、今の有報提出時期よりも少し早く提出・開示すべき(3月決算であれば遅くとも6月上旬)(有報の法定期限は今のまま)。定時株主総会より前の提出・開示となるので、株主との対話にも役立つ。株主送付用は要約版可とすればよい。

・四半期報告制度は任意(半期は必須)とすべき。中間財務諸表の作成は四半期財務諸表のルールと同じにすべき。中間監査基準は廃止して、四半期レビュー基準に合わせるべき(基準の名称は考えないといけませんが)。

当サイトの関連記事(ディスクロージャーワーキング・グループ報告について)

その2(決算短信見直しについて)

その3(監査時間・期間の問題について)
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