会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

ガバナンス欠如の背景に何が【経済コラム】(NHKより)

ガバナンス欠如の背景に何が【経済コラム】

ビッグモーター、ジャニーズ事務所、損害保険ジャパン、三栄建築設計という4つの会社のガバナンス欠如を論じた記事。

「日本でコーポレートガバナンス(企業統治)の強化成長戦略に欠かせない施策として位置づけられてから10年。日本の企業統治のどこに課題があるのか改めて考えます。」

ガバナンス強化がいわれているのは、もっぱら上場会社(損保ジャパンのような上場会社のグループ会社含む)であり、ビッグモーター、ジャニーズ事務所のような非上場会社は、むしろ、実態に合わせる形で、機関設計が自由化し、どんなガバナンス体制でもいいという方向です。その意味では、ちょっとずれている感じがしますが、非上場会社のガバナンスが不当なものでいいという理屈はないので、議論することは必要なのでしょう。

記事では、4つの会社のガバナンス体制を説明しています。非上場の2社については、新しい情報でしょう。

「これら4つの企業の組織上の形態、そしてガバナンスの体制は異なっています。

・三栄建築設計は、東証最上位のプライム市場に上場。取締役会と監査役会が設置されています。

・損害保険ジャパンは、上場していませんが、取締役会と監査役会が設置されています。

一方、親会社のSOMPOホールディングスが東証プライム市場に上場しています。親会社は、社外取締役を中心とした取締役会が執行部門を監督する指名委員会等設置会社です。

ビッグモーターとジャニーズ事務所は、株式を上場しておらず、創業者一族や一族が経営する会社がすべての株式を所有しています。

このうちビッグモーターは期末の負債合計額が200億円を超える会社法上の大会社となります。取締役会を置いて監査役1人を設置し、会計監査人を選任するという組織形態をとっていました。

・またジャニーズ事務所取締役会設置会社監査役が置かれていました。」

「ビッグモーターとジャニーズ事務所では、取締役会をまったく開催していませんでした。経営トップの不正や暴走、判断ミスをチェックすべき取締役会が機能していないということでは共通していたと思います。

また監査役の機能にも問題があり、例えばジャニーズ事務所の監査役は会計監査権限に限られ、業務監査権限はありませんでした。」

このうち、ビッグモーターの会計監査人について考えてみると、ビッグモーターの不正は、会計不正そのものではないにしても、不正な保険金請求を行い、それを売上に計上していたとすれば、会計数値にも影響があるでしょうし、今後の決算では、不正請求の返金額やその他の損害賠償額の見積りや会計処理、ゴーイングコンサーンの検討など、ややこしい問題に会計監査人は取り組まなければなりません。また、保険代理店業務に関連して同社には金融庁の検査も入っていますが、ついでに、管理体制の一環として会計監査が適切に行われていたかどうかも、調べられるかもしれません。非上場会社の会計監査は、上場会社と比べれば、監査人にとってリスクが低いように考えられていますが、あまりにひどい会社をクライアントにするのは、やめた方がよいのでしょう。

NHK記事の後半では、何人かの有識者に問題点や改善策を聞いています。

「ガバナンスの本質についての認識が不十分な企業がまだまだ多い」(京都大学川北教授)、社外取締役の役割が重要(牛島信弁護士)、内部通報制度が機能するよう仕組みを整えるべき(東京大学田中教授)などです。

社外取締役に関しては、ビッグモーターとジャニーズ事務所も、導入する(最近導入した)ようです。

「非上場のビッグモーターとジャニーズ事務所には長年、社外取締役はいませんでしたが、ジャニーズ事務所はことし7月に社外取締役3人の設置を決めたほか、ビッグモーターも社外取締役を設置する方針を示しています。」

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