PwC、中国で甘い見積もり露呈 恒大の粉飾見逃しに厳罰(記事冒頭のみ)
PwCが、中国恒大集団の巨額粉飾を見逃し、当局から厳しい処分を受け(→当サイトの関連記事)、苦境に陥っているという記事。
「大手国際会計事務所プライスウォーターハウスクーパース(PwC)が中国で苦境に陥った。不動産大手、中国恒大集団による粉飾決算を「隠蔽、容認」したとして当局から厳しい処分を受けた。中国で過去最大の会計スキャンダルは、高度成長が覆い隠してきた監査のゆがみを映す。」
記事によれば、PwCが29日に発表した2024年6月期の決算では、アジア大洋州地域の純利益が前の期と比べて13%減ったそうです(主因は中国)。PwC のグローバルのウェブサイトに掲載されているTransparency report 2024の財務数値のページを見ると、利益の記載はありませんが、たしかに、収益は5.6%減となっています(固定為替レートベース)。
PwCには、4億4100万元の罰金・追徴金と、6か月の業務停止処分が命じられたとのことです。
PwCが見逃した恒大の粉飾は...
「恒大の中核事業会社は売上高を複数年にわたって水増ししていた。PwCは23年に辞任するまで監査を担い、粉飾額が合計5640億元というケタ違いの不正な決算を認め続けてきた。」
記事見出しでは「甘い見積り」とあり、見積りの監査で不備があったようにも読めます(本文でも「見積り」が重要だといっている)が、恒大の粉飾の中身は収益認識であり、難しい見積りで監査ミスがあったわけではありません(見積りにも不備があったかもしれないが少なくとも虚偽記載の主要因ではない)。
PwCの監査不備は...
「証監会は「不正の兆候を見て見ぬふりをした」とPwCを糾弾した。PwCは恒大側が「不譲去(行かせない)」とマークした物件を監査から除外。PwCが視察した開発案件の88%では記録と実態が一致せず、同社は更地さえ「引き渡し可能物件」と認めていた。」
クライアントの言いなりで監査範囲を決めていた、監査した案件も手続が不十分だったということでしょうか。
中国ではクライアントからの「要求」が強いのだそうです。
「財務情報の信頼確保を担う監査人は「市場の番人」と呼ばれ、時には顧客企業に厳しい意見を突きつける役割がある。香港の会計士は「顧客と距離を保ちつつ信頼を勝ち取るのが王道だが、中国企業は『要求』が特に強い」と語る。
PwCが重要顧客である恒大に意見した形跡はない。シンガポール国立大学のマイケル・シェン准教授は、中国には会計事務所が乱立し「世界的に見ても顧客争奪戦が激しい」と話す。「営業では政府関係者らに食い込めるかが重要で、監査の独立性が損なわれるケースがある」という。」
ここで唐突に、おなじみの八田教授がコメントしています。
「会計問題は経済が右肩上がりの時代が終わってから表面化するものだ」。日本の会計制度改革をリードしてきた青山学院大学の八田進二名誉教授はこう指摘する。」
「八田氏は「中国が会計監査の信頼向上に取り組まなければ、外資の投資を呼び込むうえで障壁になっている『中国リスク』に会計問題が加わりかねない」と指摘する。」
間違ったコメントとは思いませんが、中国の会計や会計監査に詳しい人の見方も知りたいところです。
米国や日本は会計スキャンダルの後、防止策を講じてきたのに対し、中国は違うのではないかとのことです。
「一方で中国当局は恒大やPwCを見せしめ的に処分して問題を幕引きし、不動産不況による社会の動揺も鎮めようとしているように見える。」
見せしめは中国だけではなく、アーサー・アンダーセンや中央青山の例を見れば、米国や日本でもある話です。
当サイトの関連記事(中国恒大集団の粉飾決算について)