IFRSをめぐる最近の動向を取り上げた解説記事。
前半で、新収益認識基準など米国FASBとIASBの動向、後半で、J-IFRSなど日本における動きについて書いています。
伝えられるJ-IFRSの案において、IFRSからの修正が、のれん非償却など2項目に限定され、「実務上の困難さ」を理由とする修正が行われない点に注目しているようです。
「そもそも、金融庁がこのJ-IFRSなるIFRSもどきの日本基準を作成しようとした経緯の一つとして、2016年に見直しがあるIFRS財団モニタリングボードのメンバー国要件である「強制または任意の適用を通じたIFRSの顕著な使用」をクリアすることを狙った点がある。ところが、削除/修正がこれだけであれば、普通に考えると「IFRSの顕著な利用」という目的が達成できるとは到底思えない。
実際、ASBJの中でも「J-IFRSがIFRSとして認められないのであれば最初からピュアIFRSを使った方が良い」という意見や、「どうせ捨石(国際的な情報発信のために使うだけ)になるのであれば、そのようにはっきりして欲しい」といった過激な発言も聞かれた。」
「しかも、この数少ない削除/修正の対象となっているのれんの償却は、IFRS任意適用を目指す企業にとっては純利益のかさ上げというモチベーションになっている側面もある。また、成長戦略を目指している政府も「欧米流の大胆な再編可能に」「のれん償却見直し」などの情報発信を新聞紙上で行っている。」
「いずれにせよ、近いうちに「修正版IFRS」の公開草案が登場するであろう。IFRSを採用する予定であるが「J-IFRSの動向を見てから」と考えている企業は、「これならピュアIFRSを最初から使うか」、あるいは、「当面、日本基準で行くか」と思わざるを得ないよう内容になることが想定される。
IASBの鶯地隆継理事は、当然の事ながら「修正版IFRSは日本基準である」と明言している。「実務上の困難さ」を全く解消してない修正版IFRSを使うメリットは、一部企業を除いてほとんどないと言わざるを得ない。」
「一方で、視点を変えて今回の件を見ると、IFRS使用に際して、大きな「実務上の困難さ」は存在しないということを国際的に明言したとみなせる。IFRSのエンドースメントに関する作業部会やASBJのメンバーは、日本を代表する企業経理の中枢にいる実務者、市場関係者、学識経験者、著名な監査法人に属する公認会計士の面々が務めている。彼らが裏打ちをしたわけである。」
今後については、政治的な動きによる急展開の可能性を指摘しています。
「一つの見方として、今回のASBJの活動は「IFRS強制適用」に向けた地ならしを行ったと言っても良いのかもしれない。企業サイド、市場関係者、監査法人ともに、IFRSを採用する際の「実務上の困難さ」の影響は少ないことを認めたわけである。これまで強制適用に「実務上の困難さが大きい」と声高に反論していたグループに対する説得材料ができ、金融庁が強制適用に舵を切ってもおかしくない環境が整ったと言える。」
「そもそも、現在の日本におけるIFRS騒動の起点になったのは、民主党政権下の「自見(前金融担当大臣)発言」である。であれば、今回も政治主導による「半強制的な任意適用拡大」あるいはシンプルに「強制適用」という方向へ舵を切ってもおかしくないであろう。IFRS財団における座席の確保もさることながら、現政権が標榜するグローバル化の推進による成長戦略の一翼を日本市場のグローバル化に担わせるという流れとも平仄(ひょうそく)が合う。」
「J-IFRS=強制適用への捨て石」ということになるのでしょうか。しかし、それほど深い意味はなくて、企業会計審議会の一部委員の思いつきから始まったプロジェクトの引っ込みがつかなくなったので、収束方法を探っているだけという印象も受けます。
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