東芝が、監査委員会に、内部監査部門の担当者の任命権を付与する方向だという記事(時事通信配信)。第三者委員会の提言を受け入れるのだそうです。
「現在の内部監査部門は社長直属の組織「経営監査部」で、社員ら約40人が所属している。東芝によると、同部は監査委と協議し、年間の監査方針・計画を策定。本体やグループ会社への監査を実施し、その結果を監査委に報告してきたという。
しかし、不正会計を調べてきた社外の第三者委員会(委員長・上田広一元東京高検検事長)が7月にまとめた調査報告書は、経営監査部について「経営のコンサルタント業務がほとんどで、会計処理が適切か否かといった観点の業務はほとんどなかった」と指摘した。
また、「担当者らが社長の意向に反すると考える事項については、必要な指摘ができなかった疑いがある」とし、経営トップの指揮命令系統から独立した「強力で大規模な内部監査部門」の新設を提言した。」
三様監査という言葉がたまに使われます。その中で外部監査は、会社から独立した監査人による会計を対象とした監査ということで、位置づけがはっきりしています。監査役・監査委員会監査も、少なくとも建前上は、会社の執行部から独立した立場で、監査を行うことになります。残りの内部監査については、監査の対象となっている部門などからの独立性は求められますが、会社のトップからの独立性までは、求められていないように思います。また、監査の内容も、いわゆるコンプライアンスだけでなく「コンサルタント業務」的なものを含む場合もあるでしょう。この記事でいっているような方向が唯一正しいとはいえないように思います。
いずれにしても、東芝の事件をきっかけに、内部監査を見直す動きが出てくるかもしれません。
こちらは、役員報酬の問題を取り上げた記事。
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東芝不正会計、旧経営陣が「報酬返上」しない理由
日本企業に共通するガバナンスの落とし穴(日経ビジネス)
クローバック条項について、ふれています。
「「クローバック条項があれば、話は違っていた」。役員報酬コンサルティングを手がけるペイ・ガバナンス日本(東京都千代田区)の阿部直彦マネージングパートナーは、こう指摘する。
クローバック条項とは、大規模な業績修正や不正発覚時に、経営陣に対して過去に支給した年次賞与を返還させたり、権利移転前の譲渡制限株式などの支給を強制的にキャンセルしたりするといった内容を指し、契約にあらかじめ盛り込んでおく。特にリーマンショックによる金融危機以降、莫大な報酬を得ていた経営者への批判が高まったこともあり、欧米で導入が進んだ経緯がある。米国では法制化も検討されている。
経営者が在任期間中の報酬や株価をかさ上げしようと不正な手段を使ったところで、将来、それが露見したら結局ペナルティーを支払わねばならない。一定の歯止め効果が期待できるというわけだ。今回もし東芝がクローバック条項を役員との委任契約に盛り込んでいれば、「自主的な報酬返上」などという曖昧な手段に頼らず、かつ過去に遡及して報酬返上を強制することができた。」
業績評価部分の割合が高いことが不正の動機付けになったという第三者委員会の指摘については・・・
「東芝の第三者委員会の調査報告書では、執行役報酬に言及し「業績評価部分の割合の高い業績評価制度の存在が、各カンパニーにおける『当期利益至上主義』に基づく予算又は『チャレンジ』達成の動機付けないしはプレッシャーにつながった可能性が高い」と結論付けている。
だが、阿部氏は「東芝の執行役報酬の業績連動比率はグローバルに見ると高いとはいえない。むしろ中長期のインセンティブが不足していたことが問題」と指摘する。
経営者に在任時だけでなく将来的な成長を志向するよう促すには、自社株をどれだけ保有させるかが、重要なポイントとなる。大量の株を持っている経営者なら、短期的に株価が上昇しても、中長期的に企業価値が下落するような施策は取りにくい。そのため日本でも多くの企業が、役員報酬に中長期インセンティブとして株式報酬を組み込むようになっている。「東芝では株式報酬を採用していなかったため経営陣の持株数は少なく、今回の問題への牽制にはならなかった」(阿部氏)。」
当サイトの関連記事(自社株保有が少ないことについて)
その2(米SECのクローバック・ルール見直しについて)
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