会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

ドバイ裁判所が日産に400億円賠償命令-ゴーン被告友人企業発表(ブルームバーグより)

ドバイ裁判所が日産に400億円賠償命令-ゴーン被告友人企業発表

(10月15日の日付であり少し前の記事ですが)日産自動車が、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイの裁判所で、約403億円の損害賠償金支払を命じられたという記事。相手先は、中東の企業アル・ダハナとのことです(記事によればゴーン氏の友人らが所有する企業)。

「アラブ首長国連邦(UAE)のドバイ第一審裁判所は日産自動車に対して、13億ディルハム(約403億円)の損害賠償金を中東の企業アル・ダハナに支払うよう日産に命じた。アル・ダハナが14日発表した。」

「発表によると、アル・ダハナは契約違反で損害を受けたとして賠償を求めて2019年7月4日に日産と同社の子会社の中東日産などを提訴。同裁判所は9月29日に損害賠償の支払いを命じる当初判決を出した。また、ドバイ緊急問題裁判所は4日、2社の商品などに対する予防的差し押さえ命令を出したという。

アル・ダハナはゴーン被告の友人のサウジアラビアの富豪ハリド・ジュファリ氏と実業家のナセル・ワタル氏が出資する企業。日産は08年、アル・ダハナと中東の一部市場での販売促進のため合弁会社を設立すると発表。日産の広報担当の百瀬梓氏によると、同合弁契約は19年に終了した。」

日産のウェブサイトでは、10月26日になってようやく発表しています。有報虚偽記載で課徴金を支払い、裁判にもなっている企業としては、情報開示に消極的です。

アル・ダハナ社との裁判に関して(日産自動車)

過日、ドバイ第一審裁判所は、当社の中東地域における車両配給契約に関するアル・ダハナ社との紛争について、当社と中東日産に対し、12億UAEディルハムを超える賠償金をアル・ダハナ社に支払うよう判決を下しました。

当社は、契約上の義務を完全に履行していると認識しており、この判決を不服とし、控訴いたしました。」

日産の投資家は、12億UAEディルハムといわれて、すぐにあたまの中で円換算できるのでしょうか。また、財務への影響にまったくふれていないのも不適切です。控訴したとはいえ、2022年3月期第2四半期では、引当金計上か、最低限、偶発債務の注記が必要でしょう。どちらもされていなければ、まさに虚偽記載です。400億円が重要性なしとはいえないでしょう。ドバイの裁判所の判決だから、踏み倒してもかまわないという方針なら別ですが。

日産ゴーン事件関連記事。

Nissan ex-chair Ghosn set on restoring reputation(AP)
(AP記事の翻訳→ルノーのゴーン社長、名誉回復を目指して反撃に出る(アンテンヌフランス))

「ゴーン氏と同時に逮捕された日産自動車の元幹部、グレッグ・ケリー氏の裁判では、日産の関係者が検察に通報していたことが証言されています。

ゴーン氏とケリー氏に対する裁判の焦点は、日本で高額な役員報酬の開示が法的に義務付けられた2009年にゴーン氏が受けた減給分を退職後に補償するための緻密な計算にあります。

検察は、ゴーン氏がその報酬を報告しなかったことで法律違反を犯したと主張していますが、その報酬は支払われたこともなければ、正式に合意されたこともありませんでした。ケリー氏は、自分は無実であり、ゴーン氏を引き留めるために合法的な支払い方法を探そうとしていたと述べている。」

「2020年に出版されたフランスの書籍『Le temps de la verite』の英語版『Broken Alliances』が9月に発売されました。同じく日本で指名手配されている妻のキャロルと一緒に、自分たちの試練についての本を書いている。」

「2020年12月、国連の「恣意的抑留に関する作業部会」は、17ページに及ぶ報告書の中で、「カルロス・ゴーンの自由の剥奪」は、世界人権宣言と市民的及び政治的権利に関する国際規約のいくつかの条項に「反している」と発表しました。

同機関は日本政府に対し、”ゴーン氏の状況を遅滞なく改善し、関連する国際規範に適合させるために必要な措置をとること “を求めました。

「私が日本のためにできることのひとつは、日本で人質司法制度に反対しているすべての人たちと一緒に戦うことです」とゴーンは語った。」


(電子書籍版)

コメント一覧

kaikeinews
日産は、会計基準は日本基準なので、本来なら、特別損失に計上すべきでしょうが、それでは目立ってしまうので、販管費にしたのでしょうか。
kaikeinews
四半期報告書の注記を見ると、販管費に計上しているようですね。
「(車両配給契約をめぐる紛争に関連する損害賠償訴訟)

2019年7月4日、アル・ダハナは当社、当社の連結子会社である中東日産会社及び持分法適用関連会社である日産ガルフに対し、車両配給契約をめぐる紛争に関連する損害賠償訴訟をドバイ第一審裁判所に提起した。2021年9月29日には一審の判決で、当社及び中東日産会社に対し1,159,777,806.50ディルハム及びその利息の支払いを命じる決定があった。

当社は契約上の義務を完全に履行していると認識しており、この判決を不服として控訴しているが、当判決を鑑み、判決額及びその利息の合計額である38,758百万円を「販売費及び一般管理費」に計上している。」

ドバイの裁判所の判決だからといって、さすがに無視はできなかったのでしょう。また、前年と比べれば業績がよくなったので、早めに処理してしまおうということなのかもしれません。
ポラ
日産の第2四半期と中間決算の発表がありましたが、この400億円の引当等はされていなかったようです。
訴訟の提起時に引き当てたかもしれませんが、何事もなかったような日産の姿勢には疑問が残ります。
きんちゃん
判決は来年3月。
無罪っぽいですね。
有罪ならこんなに時間取らないでしょう。
4月が人事異動だから3月に判決なんでしょうね。
ポラ
私も適時開示情報を見ましたが、開示はなかったようです。
2019年に提訴されていますので、訴訟の提起時に適時開示されている可能性がありますが、2019年度の有価証券報告書を見る限りは訴訟リスクに対する引当等の記述は見当たりませんでした。
会計のプロでもないので私の感覚でしかありませんが、本年度の営業利益予想が1500億円であることを考えれば、適時開示の上で臨時報告書を出すぐらいのインパクトが有る情報だと思います。
91億円の支払ってもいない報酬で検察を巻き込んで経営者を追放したのに、400億円の情報を適切に開示しないのであれば、ゴーン追放も株主利益の確保と言うより、クーデターと捉えられても仕方がないでしょう。
kaikeinews
東証適時開示ではなにも開示されていないようですね。(もし見落としているのなら教えてください。)
開示しないのはどういう理屈なのか。

すでに有報のどこかすみっこに訴訟について書いてあって、1審で負けても、大きな変化ではないという判断で開示しないのでしょうか。その場合でも、負けてしまった以上、当然新たに開示すべきでしょう。

重要性なしなどの理由でいままで全く開示していないとすれば、今回は開示すべきでしょう。今度提出する四半期報告書で何もふれていなければ、明らかに虚偽記載です。
ポラ
400億円とは、日産の営業利益予想に対して相当にインパクトが有る金額ですね。
その割には余り大きく報道されないのが不思議です。
控訴するので確定判決ではなくとも、判決が出たのは事実ですが、適時開示の必要はないのでしょうか?
11月の第2四半期決算で引当をするのか注目です。
ケリー氏の裁判も結審し、未払いの確定した役員報酬は存在しないし、共謀した事実は無く、共謀したとの主張も関係者の証言だけで、メールなどの証拠は一切なく無罪だと訴えたようです。
報道をウオッチしてきただけの知識ですが、ケリー氏については無罪だと思っています。
来年3月3日の判決で無罪が出て、ドバイの控訴審で負けると、日産は相当に厳しい状況に追い込まれると思います。
きんちゃん
日産は特別背任の被害者としてサウジの人に損害賠償請求はしてないのですよね。
ゴーンさんのサウジへの支出が違法なら払いすぎた金の返金を要求するのは当然だと思うますが、してないみだいですね。
特別背任があったような対応ではないですね。
92億の確定報酬もゴーンさんに支払っていないですし、事件が本当にあったのか疑問ですね。
日産がゴーンさんに支払わない事が確定してない証拠になってるのではないでしょうか。
400億に関しては一審で負けたら勝ち目無さそうですね。
日産やばいですね。
名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最近の「企業会計」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事