東芝メディ買収に暗雲、富士フイルムは憤慨
キヤノンによる東芝メディカルシステムズ買収のスキームについて、公取委がキヤノンと東芝に対して「注意」を行った件を取り上げた記事。スキームの詳しい説明がなされています。
「キヤノンは、東芝の医療器機子会社・東芝メディカルシステムズ(TMSC)の買収を3月に発表。買収スキームは、SPC(特別目的会社)や種類株・新株予約権を用いた複雑なものだった。
その買収スキームに対し公取は、独占禁止法が定める「事前届出制度の趣旨を逸脱し、独禁法第10条2項の規定に違反する行為につながるおそれがある」と、キヤノンに文書で注意をした。
これを受けて、キヤノンは公式コメントを即日公表。「(公取の注意を)真摯に受け止め、今後とも法令を遵守し、透明性の高い経営に取り組む」と簡潔に述べた。」
漠然と、キヤノンは特別目的会社を通じて、資金を東芝に流していたと推測していましたが、そうではないようです。この記事によると、東芝メディカルシステムズがその普通株を議決権のある種類株と、議決権のない種類株と、新株予約権100個に変えた上で、親会社である東芝が、議決権のある種類株を9万8600円で特別目的会社(元あずさ監査法人の公認会計士などが代表取締役)に譲渡し、残りの議決権のない種類株と新株予約権を6655億円でキヤノンに譲渡しています。つまり、キヤノンは議決権のない種類株と新株予約権の代金6655億円を東芝に直接支払っていたということになります。
競争法の審査がすべて終わったときに、キヤノンは新株予約権を行使し、議決権のある株式を取得することになっています。その時点で東芝メディカルシステムズを支配することになるわけですが、それまでは、議決権のない株式と新株予約権しか持っていないので、支配しておらず、競争法にも違反していないというスキームです。
このスキーム全体を見れば、東芝の3月に計上した売却益に関しては、買戻条件などがついていない限り、認められるように思われます。一方、キヤノンの方は、3月末では東芝メディカルシステムズを実質的に支配していたのではないかという疑念が浮かびます。そうすると、会計的には、キヤノンは3月末時点で東芝メディカルを子会社として連結に含めるべきではないかということになるでしょうし、独禁法上は違反ではないかということになるでしょう。
公取委が違反としなかった理由については...
「公取がグレーだと指摘したのは、要するに最終的にはキヤノンが買収するつもりなのに、途中にSPCを挟んで申請義務を一時的に回避した点だ。
一方で今回、クロだとしなかったのはなぜか。
「それは、キヤノンとTMSCの明確な結合関係(すなわち親子関係)が認定できなかったこと、今回は初のケースであり、明確なルールがなかったことの2点を、公正取引委員会の品川武・企業結合課長は挙げている。
今後同様のスキームが出たらクロだと明言したのは、「すでにキヤノンと同様のことがしたい、という問い合わせが企業からあるからだ」とも述べた。」
今回の件は、東芝が不透明な会計操作をやっていたことに始まるわけですが、その結果として生じた状況を解消するために、ふたたび不透明な取引を行うというのは、経済界が全く反省していないことの表れではないかという印象を持ちました。
最近の「企業会計」カテゴリーもっと見る
最近の記事
カテゴリー
バックナンバー
2000年
人気記事